慈圭病院(岡山市):診療業務の可視化と業務効率化をオーダリングシステムで実現

全職員一丸となったプロジェクトでシステム導入を成功に導く

岡山県下で最大級の総合精神科専門病院である、財団法人慈圭会 慈圭病院は、2005年末にオーダー導入調査会を設置して院内のIT化への取り組みを開始。2009年11月に病院全体でオーダリングシステムを本稼動させた。全職員が一丸となって推進した導入プロジェクトによりシステム導入を成功裏におさめ、診療業務の可視化と業務負担の大幅な削減を実現。診療の質と患者サービスの向上に寄与している。
 


 

 「精神科医療に関しては、県下のトップクラスにあると自負しています。ただ、IT化の時流に乗り遅れているのはいかがなものかという思いがありました。総合病院の精神科から来た研修医に、『精神科病院はいつまでたっても手書き伝票なのですね』と、あたかも精神科医療が時代から取り残されているような偏見を持たれることもありました。そうしたイメージを払拭しないと、現場スタッフのモチベーションにも影響します。もちろん、手書きよるオーダーのミスをなくすこと、指示・実施業務の効率化・合理化というのが大きな目的です。しかし同時に、IT化を総合病院と同じレベルにするというのも動機の1つでした」。慈圭病院がオーダリングシステム導入の検討を開始した背景を、病棟医長の佐藤創一郎氏はこう述べる。

●総合病院レベルのIT化を目指してプロジェクトを推進
 

病棟医長の佐藤創一郎氏

 2000年以降、多くの病院でIT化が進む中で、精神科病院は独自性の強さから業務のシステム化が難しく、総合病院に比べてIT化が遅れているという現状がある。特に現在の多くの電子カルテシステムが、精神科の診療記録のあり方になじみにくいのが普及の遅れの背景にあるという。

 「アセスメントツールがそろっているという点では、電子カルテシステムが業務効率を高めるという面はあります。しかし精神科では、記載内容が自由記述によるところが非常に多く、システム化するメリットを享受しきれないのです」と佐藤氏は、オーダリングのシステム化を進めたもののカルテの電子化を見送った理由を説明する。
 
 

 同院が、オーダリングシステム導入の検討を開始したのは2005年末。医師2人、事務部門2人によるオーダー導入調査会を設置し、収集したベンダー各社の情報から4社のオーダリングシステムに絞ってデモ・プレゼンテーションを受けた。導入済みの病院に見学に出かけるなど熱心に活動を続け、約1年半かけて機種選定の検討を重ねた。そして2007年5月に、インターシステムズのCachéをデータベースに採用する京セラ丸善システムインテグレーションの精神科向けオーダリング・電子カルテシステム「MEDIC EHR/P」を選定した。同システムの導入を決定した理由の1つを、医事課長の永井秀樹氏は次のように語る。


 「システム選定にあたり、医事会計システム、薬局システム、検査システムなど、既存システムを運用する部門スタッフの業務継続を考慮し、これらと問題なく接続できることを最低条件に検討しました。京セラ丸善システムインテグレーションを選定したのは、以前から医事会計システムの付加機能として患者管理システム、預かり金管理システム、未収金管理システムなどの導入・構築で付き合いがあったことと、MEDIC EHR/Pの新バージョンの開発において、当院のニーズを取り込みながら共同して機能進化させていけるのではないかという手応えがあったからです」。

 同院では、導入作業に際して現場の混乱をなくすために、病棟や外来といった部門ごとの段階的な稼動と機能ごとの順次稼動を計画していた。そうした段階的導入を可能にする導入手法や運用指導カリキュラムをベンダーが持っているかどうかも、選定基準の1つだったという。「単科病院ですが600床の規模があり、業務が大きく変化するシステムであるため、段階的に稼動させながら現場での課題と解決手段を次の稼動にフィードバックしていくことが重要と考えていました。そうした導入計画を持ち、現場スタッフのスキルに応じた運用指導のカリキュラムを組んでプロジェクトを進めてくれるかどうかも、ベンダー決定の要因でした」(佐藤氏)。

●業務プロセスの見直しと現場の運用ニーズに沿ったシステム化
 

医事課長の永井秀樹氏

 オーダー業務のシステム化にあたっては、プロジェクトの主要メンバーで導入範囲の決定をすると同時に、各部門で立ち上げたワーキンググループで従来の伝票による指示のプロセスを棚卸しすることから作業を開始した。それまで慈圭病院では、膨大な指示伝票を利用していた。それぞれの指示記入の仕方や訂正方法など詳細にルールが決められ、運用も徹底されていた。

 それらの指示伝票の内容とプロセスを1つひとつ洗い出し、その伝票がシステムのオーダー機能にどう乗り変わるのかつぶさに検証した。その過程で、伝票起票の方法や実施後の伝票処理の仕方などが病棟の特性などで違いがあったが、それらを病院全体として標準的な業務プロセスに統一し、現状の運用に近い形でシステム化していったという。

 システム化したオーダー種は、処方/注射/処置/作業療法/デイケアなど、診療報酬の請求業務にかかわるほぼすべてのオーダー種。MEDIC EHR/Pが実装しているオーダー種の中で、精神科病院特有の隔離・拘束の行動制限オーダーは稼動させなかった。その理由を佐藤氏は、「そもそも隔離や身体拘束といった処置は法令に従うことはもちろん、患者さんの状態を熟考して細心の注意が必要です。手間暇をかけて慎重に指示・実施すべきことをシステムで標準化・簡素化すべきではないし、行動制限そのものが安易に実施してはならない処置であると考えているからです」と説明する。

 各種オーダー機能の運用で、稼動後に診療現場の要求でプロセスを変更したのが外来の処方オーダーだ。外来診察では、いったん処方指示をした後に患者が別の症状を訴えたりすることがよくあるため、処方した薬の変更・追加が発生する。その際に処方取消・再処方の操作が煩雑になる上、リアルタイムに処方情報が送信されると薬局の現場で混乱も生じかねない。そこで同院では、こうした訂正を考慮して処方確定・情報送信まで時間に2分間のバッファを設けている。これにより、処方に変更が生じたときや入力ミスなどがあった際の確認、取消・再処方作業の効率化が可能になったという。

●部門・オーダー種による段階的稼動でスムーズな移行

 実際のオーダリングシステム構築・導入作業は2008年12月に始まり、翌年5月から先行部門を稼動させ、11月に全部門での稼動にこぎ着けた。プロジェクトに関わった人数は全職員の1割にあたる約40人で、「職員一丸となって病院の一大事業」(永井氏)として取り組んだ。病院の中では、全職員の半数を占める看護部に、業務変更の影響が最も大きくなる。その移行負担を軽減するために奔走したのが、看護副部長の秋山千広氏だった。

慈圭病院の導入システム適用範囲

 

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