誠和会牟田病院(福岡市):IT化推進で業務効率と医療の質向上を目指す

医療部門と介護福祉部門の両部門をカバーする医療情報システム構築

看護師はノートパソコンを載せたワゴンと一緒に病棟内を移動する

 (1)に関しては、ワイズマンの電子カルテシステムERと周辺モジュールは、医療と介護の両方に対応しており、一般急性期、ケアミックスや療養型病院の業務をシームレスにカバーできることが特徴だという。また、医療システムと介護システムとの連携も可能で、福祉法人の施設利用者の情報共有が可能であることも評価された。

 (2)は、視察先の病院の1つで、電子カルテシステムを有効活用しているケースがあった。その内容は高く評価できるものだったが、一方では帳票関係のカスタマイズなど病院側の手間が大きく、システム運用のための専任担当者が必要になるのではないか、と義本氏は懸念した。「新たに専任スタッフを常駐させる必要が生じることに、抵抗を感じました。私自身も診療業務に携わっています。本来の業務に支障を来すことなく運用できることも、ワイズマンのシステムの魅力でした」(義本氏)という。

 誠和会牟田病院が導入したシステムは、電子カルテシステムERを中心に、病棟看護支援システムER、リハビリ管理システム、臨床検査システムER、医療事務管理システムの各部門システム。さらに医療事務管理システムと連動し、医療保険病床と介護療養病床の管理を一元的に行うメディカル介護システム、訪問看護に関わる事務作業を支援する訪問看護ステーション管理システムも導入した。あわせてPACSの導入によって、医用画像の電子化とフィルムレスを実現している。
 

 電子カルテシステムのオーダリング機能は、介護保険に対応している。介護療養病床に入院している患者や短期入所の患者へのオーダー情報は、特定診療費に自動変換されるので、介護給付費の請求が可能。月の途中で病床変更があっても、医療保険と介護保険を意識せずにオーダリングができる。また、介護老人保健施設や介護老人福祉施設に医師が往診していることに対応するため、施設にも端末を配置した。入所者に対しての定期処方のオーダーをはじめ、施設で入力された経過記録やバイタル情報なども電子カルテから参照できる。

●IT化により業務効率と質の向上、経費削減も実現
 

電子カルテ用とは別に、CTやMRなど医用画像用のモニターを導入した

 以前の紙カルテで運用していた時は、処方や部門への指示をカルテ記載内容から看護師が各種伝票に転記しており、診療・看護業務以外の作業に多くの時間が費やされるのに加えて、手書き文字が判読できずに確認作業に手間取る、起票でミスをする、などのトラブルがあったという。義本氏は、そうした業務負担がなくなり、スタッフの業務効率が大きく改善したことが導入効果として指摘する。

 「本稼働前のスタッフに対する運用教育期間には、業務変更に伴う不平もありました。しかし、操作に慣れて業務が円滑に回るようになった現在は、ムダな作業がなくなり作業が非常に楽になった、という声が圧倒的です。運用後半年を経た時点で何人かの職員に『紙カルテに戻すか』と質問したところ、全員が『No』と言うほど。業務面での効果を実感しています」(義本氏)。

 コメディカルも含めた、スタッフの診療情報の共有化による効果も大きい。以前のように紙カルテやレントゲン写真を持ち寄ってのミーティングは、集合する手間がかかるうえに、スケジュールが合わないなどの不都合が多かった。しかし今では、それぞれの端末で同じ情報をリアルタイムで見ながら、電話などで症状の検討ができるようになった。「それぞれの診療スタッフが、情報を多角的に見て判断できるようになったことは、診療の質向上にも寄与しています」と、義本氏は診療情報の可視化・共有化が各部門の診療のレベルを高めることにつながっていくと期待している。

 義本氏は、診療に携わるスタッフの仕事に対するモチベーションの向上をもたらしたことにも注目している。開院以来、「高度な医学的専門性を重視した医療とホームドクターとしての親しみやすで、きめ細かい医療や看護、介護サービスを地域住民へ提供する病院」という目標を掲げてきたが、施設の老朽化や高齢者の慢性的疾患患者の増加などさまざまな要因で、職員の中になんとも言えない沈滞したムードが浸透しつつあったという。それが、「一気にIT化を進めたことで、病院の施設や提供する医療に対してスタッフが先進性を感じるようになり、自然と職員のモチベーションが高まりました」と義本氏は言う。

 一方、病院のIT化は経費削減にも寄与している。以前は紙カルテをはじめ多くの伝票類を使用していたため、用紙・印刷コストだけで年間300万円を超えていた。電子カルテ化、オーダリングの電子化により、伝票や帳票がほとんど不要になり、経費が大幅に削減された。同様に医用画像のフィルムレスにより、年間約600万円かかっていたフィルム代もなくなった。さらに、同病院では医療事務を業務委託しているが、以前は膨大な伝票のデータをレセコンに手入力しており、その作業量が業務委託費を押し上げていた。IT化によってそれらの作業量が大きく削減されたことにより、委託経費を従来の50〜60%まで抑制できた。

 そうした経費削減に加え、わずかながらも収益改善に結びついている面もあるという。「以前は検査や処置をすべて起票して実施していましたが、医師によって内容にばらつきがあり、加算できる処置が事務処理されていないケースもありました。それがセット化されたオーダーによって、必要となる検査や処置が標準化されるとともに、きちんと加算処理されるようになりました」(義本氏)。

 短期間で一気に診療現場のIT化を実現した誠和会牟田病院は、現在新病棟の建築計画を進めている。そこでは無線LANを導入してモバイル端末を駆使した回診、投薬チェック、病室でのバイタルデータの投入など、さまざまなシステム拡張を目指している。義本氏は、「より運用効率の高い医療システム環境を構築するとともに、将来的には社会福祉法人が運営する施設など誠和会グループ全体でのシステム連携も図っていきたい」と今後の展望を語る。

(増田 克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)
 
 


■病院概要
名称:医療法人 誠和会 牟田病院
所在地:福岡市早良区干隈3-9-1
開業:1987年 院長:牟田和男氏
診療科目:内科、小児科、胃腸科、循環器科、神経内科、泌尿器科、外科、整形外科、リウマチ科、リハビリテーション科 病床数:一般病棟60床、療養病棟60床、回復期リハビリテーション病棟43床
Webサイト:http://www.seiwakai-muta-hp.or.jp/
導入システム:ワイズマン「電子カルテシステムER」「病棟看護支援システムER」「リハビリ管理システム」「臨床検査システムER」「医療事務管理システム」「メディカル介護システム」「訪問看護ステーション管理システム」

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