手術スタッフのステータス管理をリアルタイムで実現

タブレットモバイルPC活用した手術室管理---帝京大学医学部附属病院

 帝京大学医学部附属病院は、新病院棟のオープンとともに統合型病院情報システムを稼動させた。医療情報連携基盤にSOA(サービス指向アーキテクチャ)を導入して先進的なシステムを構築したのをはじめ、音声・データ兼用携帯電話による情報伝達・共有の仕組みやリアルタイムな手術スタッフの管理が可能な手術室管理システムなどを運用している。独自に開発した手術室管理システムは、インテルが提唱するモバイル・クリニカル・アシスタント(MCA)を利用することで術中に手術担当看護師のステータスを容易に管理でき、看護師の勤務環境の適正化を支援している。




新病院棟開設を機に革新的な病院情報システムを稼動


地上19階・地下2階の新病院棟

地上19階・地下2階の新病院棟

 帝京大学医学部附属病院(以下、帝京大学病院)は、特定機能病院として、また救命救急センター、総合周産期母子医療センターなども併せ持ち、高度な設備および優れた専門医をそろえ質の高い医療を提供している。2009年5月には、地上19階・地下2階の新病院棟を竣工、病床数1154床の国内最大規模を誇る病院へと生まれ変わった。新病院棟では、ER病棟を設けてERスタッフが(一次、二次救急を含め)救急外来での診療にあたるほか、手術室に隣接した位置に院内集中治療室(GICU)や循環器センター(CICU)を設置。また、災害拠点病院として災害時に備えて屋上にヘリポートを設置するなど、その機能を充実させて万全の救急医療体制を構築した。

 新病院棟の新設を機に、新たなコンセプトを基に先進的な新病院情報システム「iEHR(Electronic Health Record)」も稼動させた。プロジェクトを指揮した本部情報システム部部長の澤 智博氏は、そのコンセプトを「病院内で発生する医療情報の統合的・一元的管理」と「その個々のデータの基となるワークフローをできるだけ洗練化すること」の2つだと指摘する。

 「従来の病院情報システムは、基幹システム、部門システムともに大手ベンダーに丸投げ状態で構築されるため、ほぼ5年ごとにそれぞれのシステムががらっと変わってしまいます。ところが、医療現場の業務は日々変わるものもあれば、20年と変わらないプロセスもあります。これらのギャップをシステムで吸収するためには、変化に対応すべき部分をいつでも切り離し、その部分だけを新しいものに付け替えられる仕組みが必要。iEHRは、そうした柔軟性を可能にする医療情報連携基盤をベースにしたものです」(澤氏)。

 その情報連携基盤構築の技術として採用したのが、SOA(サービス指向アーキテクチャ)技術である。情報連携基盤上では、電子カルテシステム、部門システム、業務プロセスを支援するサブシステムなどがWebサービス経由で相互連携している。それとともにすべてのシステムのデータは、連携基盤のデータベースで一元的に管理されており、電子カルテシステムや部門システムはそれぞれのデータベースにアクセスするほか、連携基盤上のデータベースも参照できるようになっている。iEHRの中核となる医療情報連携基盤構築にはオラクルのSOA基盤が採用されており、ハードウエアの構築を新日鉄ソリューションズが担当し、病院独自にソフトウエアを開発した。

プロジェクトの大半を占めたワークフローの洗練化・可視化への作業

帝京大学本部情報システム部部長の澤智博氏

帝京大学本部情報システム部部長の澤智博氏

 医療情報連携基盤上のシステムは、ワークフローに沿って発生する情報を可視化してデータ連携されている。その実現のために最も時間と労力を費やしたのが、ワークフローの洗い出しと整備・設計だったという。澤氏は、これまで各部門の現場で行われてきたワークフローを徹底して調査し、形式化・図式化することに2年間を費やした。例えば、単純X線撮影のワークフローといったように各部門の業務プロセスを細かく細分化した上で、1つひとつのワークフローにおいて、既存のオーダリングシステムを使用しているのか、帳票を使っているとすれば、どのような帳票なのか・・・・・・という洗い出しを重ね、膨大なワークフローを調査・分析していった。

 「これまで培ったワークフローは基本的には完成度が高いと見なし、各現場の業務に影響を与えない形――旧病院でできたことが新病院でもできることを目標に、より効率的なワークフローを描こうと考えました。SOA技術の採用という先端的なことが注目されていますが、実は、ワークフローの調査・分析という作業がプロジェクトの8割を占めていると言っても過言ではありません。調査や基本構想に多くの時間を割いても、短期間・低コストでシステム開発を可能にする仕組みを求めた結果がSOAだったわけです」(澤氏)と述べる。

●業務の大幅効率化を実現した手術室管理システム

 ITによる現場のワークフローの可視化によって、医療スタッフにリアルタイムかつ的確な情報を提供することで無駄な作業を削減し、業務効率化を試みた仕組みは数多い。その中の1つに手術室管理システムがある。

 帝京大学病院の中央手術室では、1日あたり20〜30件の手術が行われており、年間では7600件を超えている。新病院棟の手術室は15室に拡大したため、その件数はさらに増加してきている。そのため、手術室、執刀医、麻酔医、手術部門看護師の計画・管理作業は煩雑さを極める。旧病院棟では、1週間分の手術のタイムスケジュールと、それぞれにアサインする人的リソースの計画をA3の紙を2枚つなげた用紙上に記入してきた。看護部手術室主任以下3名が毎週金曜日いっぱいの多大な時間を割き、手術担当看護師約50名の昼食交代などを含めた詳細な割り振りとともに、麻酔科主任による麻酔科医30名の割り振りとあわせてスケジュール計画を作成していた。

 「看護師のアサインは、手術内容によって経験値を考慮しなければならないことに加え、ある看護師だけが緊張感や負担が大きい手術だけに従事するような隔たりがないよう、勤務の不公平感をなくすことも考えなければならず、パッケージでは対応しにくい部分があります。当初は、わずか50名の部門システム化の投資メリットは少ないと考えましたが、医療スタッフ自身への安心で快適な職場環境を提供することを最優先した結果、システム化することにしました」(澤氏)という。

 システム要件は看護部の伊東晶子手術室主任が中心となり開発された。「例えば、看護師をアサインする際に単に看護師名がリストアップされるだけでなく、手術器具を準備する担当、外回り看護師、あるいは指導役なのか見習いなのかといった職能とロールを織り込んだ看護師リストを表示するようにしました。また、手術中の昼食交代など手術進行に応じて適切にリソースのアサインができるよう、常に現在時間によってタイムテーブルが移動表示できるような工夫もしました」(伊東氏)。


スケジュール管理画面(提供:帝京大学医学部附属病院)
(↑クリックすると拡大して表示します)

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