指示・確認/実施の可視化により業務効率と安全性が向上

診療スタッフのコスト意識も醸成 --- 事例研究:医療法人 寿康会 寿康会病院

 埼玉県南部・川口市の寿康会病院(病床数90床)は、病院改革の一環として電子カルテシステムの導入をはじめとする診療現場のIT化に取り組んでいる。システムによる情報共有化の促進とともに、指示および、その確認・実施が可視化されたことにより、診療スタッフの動きが効率化するとともに実施に伴うミスが減少し、医療の安全性向上を実現しつつある。また、電子カルテシステムの稼働に伴って、利用する診療スタッフが診療報酬を念頭に置いて診療行為に携わるようになり、コスト意識も醸成されつつあるという。




 「当院は“地域医療に貢献する”という理念の元、長江医院、長江病院を経て、1984年に開院しました。時代の流れとともに、患者さんのニーズ、職員のニーズは変化し、それに対応するための病院改革が必要でした。その一環として、2007年からIT化に取り組んでいます」。寿康会病院副院長の長江康氏は、レセプトコンピュータ(レセコン)のリプレース、医用画像のデジタル化・PACSの導入、そして電子カルテシステム導入という医療現場のIT化を進めてきた動機をこう述べる。

●生き残りをかけた病院改革の一環としてIT化を推進

寿康会病院副院長の長江康氏(撮影:今井雅文)

寿康会病院副院長の長江康氏(撮影:今井雅文)

 寿康会病院が電子カルテシステムの導入を検討する中で目指したものは、“タイムラグのない情報の共有”だった。

 「病院にとって各科医師と看護師はもとより、医事課スタッフも含めた情報の確実な伝達と共有が不可欠です。電子カルテシステムにより、医師とスタッフ相互の情報共有が可能となることで、指示内容のチェックと確認作業の正確性が高まり、医療の安全性が向上するとともに診療業務も効率化されます。しかも、膨大な情報を正確かつコンパクトに記録して、必要な情報のみを簡単に抽出できます。また、実施内容が医事課に確実に伝達されることで、診療報酬の請求漏れを減らすことができると考えました」(長江氏)。

 その背景には、医師の指示が適切に看護スタッフに伝達されず、ケアレスミスを誘発したり、各部門を人の手によって伝票がリレーするために情報伝達のタイムラグが生じるといったことがあった。そして、そのタイムラグを避けるために電話での口頭伝達となり、正確に伝達されなかったり、記録も残らなかったりする。また、オーダーや実施内容などの情報が医事部門へ確実に伝わらないことなどに起因して、診療報酬の請求漏れが発生するといった問題もあった。

●使いやすさとリーズナブルな導入コストを理由に選定

 長江氏が中心となり、病院のIT化の検討を始めたのが2006年夏。「国際モダンホスピタルショウ」などで情報を収集しながら、電子カルテシステムの導入を見据えて大手電子カルテベンダーを含む3社のシステムを候補に絞り込んだ。そして検討を重ねた結果、まず08年4月の診療報酬改定に合わせて、従来のレセコンをワイズマンの「医療事務管理システム」にリプレースし、あわせて同年にはPACSも導入した。09年6月には、ワイズマンの「電子カルテシステムER」と「病棟看護支援システムER」を稼動させた。

 3社の電子カルテシステムからワイズマンのシステムを選定した理由を長江氏は次のように語る。

 「レセコンと電子カルテシステムとの連動がスムーズであること。導入時期をレセコン導入後に電子カルテを導入できるよう、分割導入が可能なこと。全国的なシェアがあり、運用後の保守に心配がないこと。当院の規模に適したシステムであること。そして、他の機器との接続に大きな問題がないこと……という理由からです」。

 当初、長江氏は、まず医療事務管理システムを導入、続いてオーダリング機能の導入後、電子カルテへの移行という段階的な導入を考えていたという。医事部門スタッフはともかく、急速なIT化は診療部門の年配スタッフの抵抗感が大きいと予想したためだ。しかし最終的には、段階的な導入プロセスごとに作業負担や教育コストが発生し、その都度収支が低下することが懸念されたため、オーダリングと電子カルテへの移行と病棟看護支援システム導入は、一気に実施することにした。また、スムーズな運用をめざして、電子カルテについては概要の説明にとどめ、まずは初級者向けのパソコン教室を開き、電源の入れ方から、クリック、スクロールといった言葉の説明から含めて、初歩のレクチャーから始めたという。

 ただし、レセプト作成など診療報酬の請求だけは確立した。それは、従来どおりの医事課による入力算定を確立しておけば、診療報酬の請求だけは確保され、無収入は避けられるからだ。それでなくても、医療報酬の入金は2〜3カ月の月遅れで入金されるのに対し、人件費や薬代などの支払いは翌月の出金になる。さらに、電子カルテの導入に伴う混乱や患者さんへの迷惑を最小限にとどめるため、導入月は患者数を制限してスムーズな運用を試みなければならない。つまり、減収は避けられないと予測されたからこそ、確実な入金は必須だったのだ。

電子カルテシステムERのGUI例

電子カルテシステムERのGUI例

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