事例研究:藤沢市民病院

現場で「使いやすい」持参薬指示表作成の実現へ

 湘南東部医療圏の基幹病院として高度医療・救急医療を担う藤沢市民病院は、オーダリングシステムの注射剤処方オーダ機能追加を機に、同システムから利用できる医薬品情報一元管理システムを導入した。毎日更新される最新の医薬品情報を医師や看護師などすべての医療スタッフに提供するとともに、システムの機能を有効に活用することによって、病棟の診療現場に即した持参薬管理・指示表を作成して、業務効率を上げている。




利用されなかった医薬品情報システムを刷新


 一般病床530床の藤沢市民病院は、1971年の開設以来、湘南東部医療圏の基幹病院として高度医療・救急医療を担ってきた。2000年には神奈川県下で最初に地域医療支援病院の承認を受けて地域医療機関との連携を強化するとともに、地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、周産期救急医療中核病院、災害医療拠点病院などの役割も担っている。


 同病院の薬局では、十数年前から医師への医薬品情報提供として、その情報ソースにMEDIS-DC(JAMESデータ)を利用してきた。当初は、このデータを基にした独自の医薬品情報データベースを作り、用法・用量、薬効などのコードで検索できるようにして院内の端末に配信していた。しかし、オーダリングシステムを導入してオーダ画面が操作の中心となると、医薬品情報の検索のために画面を切り替えて利用することが煩雑になり、次第に同データベースは使われなくなったという。


 その独自の医薬品情報データベースに代わって、MEDIS-DCデータをオーダリングシステムの処方画面から情報を呼び出せるような仕組みに切り替えた。しかし、統一画面で簡単に添付文書情報がポップアップ表示されるものの、添付文書の内容に沿って文字が羅列表示されるために、非常に見にくく、知りたい情報に容易にたどりつけないという欠点があった。結局、このシステムもほとんど利用されずじまいだった。しかも、MEDIS-DCデータの更新は3カ月に1回程度。情報の鮮度が低いことは致命的で、薬事委員会の新薬検討の際などで利用されるデータとしてはまったく使い物にならなかったという。


薬局長の石川正樹氏

薬局長の石川正樹氏

 こうした経緯を経て、2008年10月、オーダリングシステムに注射剤処方オーダ機能を追加することを契機に、導入されたのが日本ユースウェアシステムの医薬品情報一元管理システム「JUS D.I.」である。

 「販売元のスズケンからの提案されたものでしたが、添付文書情報が整理され、相互作用も検索できるなど機能が豊富で使いやすいという感触を得ました。導入・運用コスト面ではMEDIS-DCと比較しても、ほぼ同等だったため、費用対効果は大きいと判断して導入を決定しました。病院全体での費用対効果を上げるために、オーダリングシステムの全端末からJUS D.I.にアクセスできる環境を最初から整備しました」。同病院薬局長の石川正樹氏は、システム導入の経緯をこう振り返る。

持参薬管理表作成機能を有効に活用

 石川氏は、「収録する添付文書情報は毎日更新され、最新の医薬品情報を院内に提供できること」「相互作用検索をはじめ、さまざまな検索機能を駆使し、知りたい情報が見やすい形で表示されること」「院内医薬品集が簡単、迅速に作成できること」など、JUS D.I.の主な機能を高く評価するが、もっとも有効に活用でき、便利だとしているのが持参薬管理にかかわる機能である。

 「以前は入院患者さんの持参薬は継続使用せずに新たに処方していましたが、医療費のDPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類)包括評価への移行に伴って入院医療費抑制のため持参薬を有効に活用するよう方針を転換しました。そのためには必ず薬剤師が持参薬チェックを行うとともに持参薬管理ルールを確立し、適正な利用につなげる必要があります。単に薬剤鑑別を行って持参薬報告書が作成できても、それが間違いなく医師の指示表に反映され、看護師も服薬の状況を把握できる管理方法を実現することが必要です」(石川氏)という方針の下、JUS D.I.の持参薬管理表作成機能による情報を、院内独自の「持参薬指示表」に変換して運用することを試みている。

 以前の持参薬管理は薬剤師または病棟看護師が調べて、手書きで持参薬報告書を作成していた。これを元に医師は継続使用、非採用薬なら代替薬への変更、あるいは中止といった指示を行い、カルテや指示簿にそれらの情報を転記することになるが、その際に転記ミスなどが発生する危険がある。JUS D.I.の持参薬管理表作成機能は、検索や採用薬の中から代替候補薬リストアップ機能などを使い、容易に作成できる。そのデータを、人的作業を経ずに病棟の現場で使う指示簿などに自動的に変換できれば、単純なエラーは防ぐことができるわけだ。

現場がより使いやすい仕様を求めて試行錯誤

薬局主査の喜古康博氏

薬局主査の喜古康博氏

 JUS D.I.で作成される持参薬管理表はシステムで用意している標準フォーマットであり、本体コードや色、販売名、一般名から用法、採用薬/非採用薬、持参数など、候補代替薬など持参薬を確実に把握するための多くの情報を網羅している。だが、網羅性に優れた情報をそのまま持参薬の指示表として病棟の現場で利用するには情報が多すぎて、決して利用しやすいとは限らない。

 「持参薬管理の機能としては十分な機能を持っていますが、標準の出力様式では、医師の指示欄が狭い、コードやメーカー名の表示は現場では不要、採用薬/非採用薬の表示がわかりにくい、文字が小さくて読みにくい、さらには投薬表も入れると助かる――など、さまざまな意見や要求がありました。医師や病棟の看護師を交えて仕様の検討を繰り返し、仕様固めまでに数十版にもなる表を試作しました」。独自フォーマットの持参薬指示表の作成をリーダー的な立場で担当してきた薬局主査の喜古康博氏は、同院独自の持参薬指示表作成に至るまでの試行錯誤をこう語る。ちなみに喜古氏は、以前に勤務していた病院でJUS D.I.を利用するとともに、ユーザーとして同システムの開発に協力してきた経験がある。




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