事例研究:昭和大学藤が丘病院

安全性と診療の質向上を目指し、医薬品情報管理システムを駆使

 横浜市青葉区にある昭和大学藤が丘病院は、総病床数643床、職員約1400人を擁し、高度な専門医療を提供するとともに、神奈川県北部と隣接地域をカバーする3次救急医療施設としての役割も果たしている。同院の薬局では、2004年に導入した医薬品情報一元管理システムを基盤として、実際の診療現場に役立つ最新の医薬品情報を提供、医薬品の適正使用と安全管理に努めている。




情報の鮮度、信頼性の低さに問題があった医薬品情報データベース


 「医薬品の最新情報を、医療スタッフや患者さんに不足なく、迅速に提供していくこと。それによって医薬品の適正使用を実現し、医療の質の向上に貢献することが、医薬品情報管理室(DI室)の重要な役割です」。昭和大学藤が丘病院薬局のDI室担当、田中章久氏は、医薬品情報管理業務を担うDI室の使命をこう述べる。


薬剤部DI室担当 薬剤師 田中章久氏

薬剤部DI室担当 薬剤師 田中章久氏

 このため、常に製薬企業の情報や学術雑誌、厚生労働省の医薬品情報など、最新の情報を収集し、情報の信頼性を評価した上で、適切な情報提供を行っている。そのなかで医薬品情報を管理する業務のシステム基盤になっているのが、2004年11月に導入した医薬品情報一元管理システム「JUS D.I.」である。


 同院では、このシステムを導入する2年前、2002年に現在のオーダリングシステムを稼動させているが、その際、別の医薬品情報データベースを採用し、オーダリングシステムの処方画面から医薬品情報にアクセスできる環境を構築していた。ところが、その情報の更新は年4回程度、しかも数カ月遅れでデータを格納したCD-ROMが届くという状態だった。


 「データの編集を経た上で届くため、実際には1年遅れでデータが更新されている状況でした。しかもシステム自体の信頼性が低く、オーダリング画面で表示された情報に文字化けが多いという、なんとも使い勝手の悪いシステムになってしまいました。結局、医療スタッフには利用されなくなり、薬剤師は紙の添付文書を参照して、医療スタッフからの問い合わせに答えていました」(田中氏)と、以前の医薬品情報データベースの問題点を指摘する。


医薬品の最新情報の入手と医療安全


昭和大学藤が丘病院の外観

昭和大学藤が丘病院の外観

 田中氏がJUS D.I.を知ったのは、神奈川県病院薬剤師会のある勉強会だったという。医薬品医療機器総合機構が運営している「医薬品医療機器情報提供ホームページ」の添付文書データを利用して、最新情報を院内LAN経由で伝達できるシステムだと聞いた田中氏は、どれぐらいの有効性があるのか、当初は疑問を持っていたが、機能や使い勝手などを一つひとつ確認した。その結果、従来システムの問題を解決し、診療現場の医師や看護師に添付文書情報を迅速かつ簡便に伝達できるとして、病院に導入を提案した。


 「導入コストが問題でしたが、2〜3年に1回改訂・発行していた採用医薬品集の制作コストや追補版を含めた編集作業の人的コスト、毎年の日本医薬品集の購入コストなどを考えれば、費用対効果は得られると判断しました」(田中氏)。


 JUS D.I.の最大の特徴は、インターネットから得た添付文書などのデータが自動で更新される機能にある。毎日、簡単な更新作業を行うことで、常に最新の情報を保持できる。緊急を要する改訂は毎日あるとは限らないが、重大な副作用や警告禁忌なども随時、速やかに更新され、改訂箇所を表示する機能もあるので有用性は高いと田中氏は指摘する。


 重要な医薬品情報の伝達手段として、DIニュースを毎月発行していたが、院内採用薬が約1500品目あるため、1カ月分の情報改訂などで100ページに及ぶこともあったという。編集作業には薬剤師2人が数日間張り付く必要があったため、その発行時期になると大きな負荷を強いられていた。


 現在は、掲載内容について注意喚起を必要とする重要な情報などに限定したため、DIニュース発行の手間は大幅に軽減された。何よりも毎日情報が更新されることによって、最新の情報を迅速に伝達するという目的を遂げている点に大きな意味があるという。


脳神経外科 医療安全管理室長 鈴木龍太氏

脳神経外科 医療安全管理室長 鈴木龍太氏

 診療現場で医薬品情報を参照する医師たちも、最新の情報を迅速に提供される有用性を指摘する。脳神経外科医で医療安全管理室長でもある鈴木龍太氏は、外来診察中、患者に薬の副作用などを質問されたとき、オーダリング画面からJUS D.I.の添付文書情報を呼び出し、画面を見せながら説明するという。「常にデータが新しいから安心感がある」(同氏)と指摘する。


 「医薬品関連の安全管理には膨大な項目があります。常に最新の添付文書情報などを参照できることは基本的な要件といえます。今では、特に意識することなく最新の情報に触れられるという安心感があります。情報の信頼性が高いということは医薬品使用の質の向上につながります。診察の現場では、患者さんと副作用の情報などを一緒に見ながら分かりやすく説明することで、患者さんも納得でき、お互いの信頼関係を築くツールとしての効用もあります」(鈴木氏)。


持参薬管理など業務効率も大幅に向上


 JUS D.I.は薬剤師の業務効率にも大きな変化をもたらしている。代表的な例が薬剤鑑別/持参薬管理表作成に関する業務だ。


 昭和大学藤が丘病院は入院患者の持参薬に関して病棟薬剤師が積極的にかかわるという方針で、薬剤師が患者の安全管理に適切に関与するとともに、包括評価支払制度の導入によって極力、持参薬の利用を促している。


 その際、従来は日本医薬品集などに頼って薬剤鑑別を行い、薬剤鑑別報告書、持参薬管理表を作成してきたが、JUS D.I.の持参薬管理表/薬剤鑑別報告書作成機能を利用することで作業時間の大幅な短縮が実現した。


JUS D.I.により情報探しの煩雑さから解放された

かつては、すべてファイル・管理していた添付文書をいちいち探し出さなければならなかったが、JUS D.I.により情報探しの煩雑さから解放された

 田中氏は、持参薬管理表/薬剤鑑別報告書作成機能の有用性を確認するため、薬剤師を15人ずつ2グループに分け、JUS D.I.を使用するグループと従来の書籍を使用するグループで、6種類の薬品を用意して薬剤鑑別、採用の有無、代替薬の選択を行う業務比較を試みた。その結果、鑑別、採用の有無などの回答内容はほぼ同等だったが、代替薬の選択は書籍グループの方がばらつきが目立ったという。特にグループ差が大きかったのは、鑑別・選択に要した時間だった。


 「平均作業時間を比較すると、JUS D.I.を利用した方が10分以上短縮できることが分かりました。薬剤鑑別をすれば自動的に採用/非採用が表示されるし、同一成分の採用薬は何かを簡単に抽出できるので、作業効率の点で非常に有用性があります。最近は持参薬にジェネリックが含まれることが多くなりましたが、鑑別の際の使い勝手が非常にいいと思われます。入院患者数が多い日や、持参薬の多い高齢患者の薬剤鑑別報告書作成などには特に有効です」(田中氏)と指摘する。


 持参薬鑑別の際には同時に相互作用のチェックができる。入院時にも、今後の投薬治療に対する薬剤師のコメントを付加できるなど使い勝手がよいという。JUS D.I.の操作用検索機能はフルライセンスのAdvanced版で提供される機能で、販売名単位での相互作用チェック、任意の医薬品と全採用薬のチェック、医薬品と一部の食品、サプリメント、特定保健用食品の相互作用チェックなどができる。


 JUS D.I.導入で、DI室への医薬品に関する問い合わせが減り、ドクターからの質問内容も変わった。旧システムでも基本的な医薬品情報は参照できていたため、問い合わせ件数には劇的な変化はないが、文字化けなどシステムトラブルに関する問い合わせがなくなり、添付文書情報だけで確認できる質問もなくなったという。


薬剤部DI室担当 薬剤師 八木仁史氏

薬剤部DI室担当 薬剤師 八木仁史氏

 「用法・用量や副作用など添付文書に記載された情報を理解した上で、添付文書の微妙な解釈や、より詳細な情報を求める問い合わせが増えてきました。JUS D.I.の導入前後の問い合わせ件数を詳細には比較していませんが、単純な質問が減ったことは実感しており、非常に助かります。病棟での薬剤鑑別・持参薬管理報告書の作成が効率化したことも含め、今ではJUS D.I.がないと仕事にならないほどです」と、DI室担当薬剤師の八木仁史氏は導入の効果を強調する。


診療現場に有用な情報提供に注力


 多彩な検索機能が特徴のJUS D.I.だが、機能不足と感じている部分もある。その一つが、代替薬の検索における一部の結果表示だという。


 例えば、持参薬管理で代替薬を検索したとき、薬価基準収載医薬品コードの上位4桁が一致するものを同効薬として抽出するシステムのため、代替薬として適さない薬効の薬も抽出されてしまう。「薬剤師であれば、検索結果から代替薬を選択できますが、診療スタッフでは対応しきれないケースもあります。この点については改善を要請しているところです」(田中氏)。開発元の日本ユースウェアシステムでは、田中氏の意見に基づいて、「薬理作用別薬効分類」で検索できる機能を現在開発中だという。


 JUS D.I.の導入によって薬局の業務効率が向上したため、田中氏は今後、同システムをさらに駆使して、実際の診療現場のニーズに応えて病棟業務で役立つ情報を提供していきたいと語る。


 「診療現場からは、日常業務で必要な情報を提供してほしいという希望が以前からありました。しかし、個々の案件には対応できずにいたのが実状です。例えば、「点滴の際に複数の注射薬を同時に投与するとき、単独ルートが推奨される薬剤の一覧がほしい」という看護部からの要望に対し、以前は、添付文書情報をいちいち確認して、組み合わせの資料を作ることになり、大変な作業でしたが、JUS D.I.の検索機能を使って資料を加工することで、このような依頼に応じることが可能です。医療安全管理室からも、同様の情報提供を要請されているので、現場のニーズに応えた安全性と医療の質向上につながる情報を提供していきたいと思っています」(田中氏)と強調していた。


(増田 克善=委嘱ライター)

●「JUS D.I.」の端末での薬剤情報画面(クリックすると拡大します)




■病院概要
名称:昭和大学藤が丘病院
住所:神奈川県横浜市青葉区藤が丘1-30
病床数:643床
Webサイト:http://www.showa-university-fujigaoka.gr.jp/
システム開発・導入:日本ユースウェアシステム(東京・品川)
総販売元:スズケン


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