高齢者での厳格な降圧がこれまで懸念されてきた背景には、過度な降圧でイベントがかえって増加するJ型現象の可能性が指摘されてきたことがある。

 しかしJSH2009ガイドラインでは、「一般には過降圧の危険性はまれである」としている。楽木氏は、「J型現象が生じる恐れのある対象患者のプロファイルやその血圧値、失神や転倒・骨折に対する降圧の影響などについては、今後の重要な検討課題」との見解を示した。

併用療法の新知見に期待
 高齢者高血圧の薬物療法では、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、少量利尿薬を第一選択薬とし、一般に常用量の2分の1から開始して、降圧効果が不十分な場合はこれらを併用する(図1)。薬剤の選択は、患者の病態や合併症、臓器障害、QOLなどを考慮して行う。

図1 高齢者高血圧の治療計画

 高齢者における第二選択薬に関するエビデンスはこれまで十分ではなかったが、心血管系疾患の危険因子を有する高齢者高血圧患者を対象に、併用療法での第二選択薬の組み合わせを群間比較する試験が国内でいくつか進行中だ。その1つであるCOPE試験はCa拮抗薬+利尿薬、Ca拮抗薬+β遮断薬、Ca拮抗薬+ARBの併用を比較するもので、2009年11月に終了予定。また、ARB+利尿薬とARB+Ca拮抗薬を比較するCOLM試験は2011年8月に終了の見込みだ。「これらの試験の結果を通じて、わが国の高血圧治療ガイドラインはさらに一歩進化するのではないか」と、楽木氏は期待を示した。

 なお、楽木氏は日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン作成委員会の事務局長としてガイドライン発表後に学会に寄せられた様々な意見に対応しているが、JSH2009ガイドラインに対する評価は高く、「公表以後、内容に関して大きな変更はない」という。ただし、細かな訂正内容については、同学会のホームページで随時告知している。

 また、JSH2009ガイドラインの主要ポイントを抜粋し、治療方針を理解しやすくするためのフローチャート、若干の注釈・訂正などを加えた「高血圧治療ガイドライン2009ダイジェスト」が2009年9月に発行されている。