2009年10月に開催された第32回日本高血圧学会総会の特別企画「JSH2009ガイドラインを検証する」では、公表後の同ガイドラインの認知状況や主な変更点などが紹介されたほか、学会に寄せられた意見を踏まえ、今後の検討課題について議論が交わされた。その中から「高齢者高血圧」に関する部分を紹介する。


大阪大学大学院老年・腎臓内科学教授の楽木宏実氏

 JSH2009ガイドラインにおける高齢者高血圧の治療に関する内容に関する概説と検証は、大阪大学大学院老年・腎臓内科学教授の楽木宏実氏が担当した。同ガイドラインでは、「高齢者でも最終降圧目標達成のために積極的に治療すること」を基本姿勢として強調しており、降圧療法の対象年齢に上限を設けていないことが特徴だ。

 降圧目標に関しても、「いずれの年齢層でも140/90mmHg未満の降圧により予後改善が期待される。65歳未満から治療中の患者において、65歳になって降圧を緩める必要はない」と明記している。楽木氏はその理由を、「降圧薬治療介入に関する大規模試験はSBP160mmHg以上、DBP90〜100mmHg以上を対象としたものがほとんどで、I度高血圧に関するエビデンスはわずかしかない。しかし、疫学的には70歳以上でも、140/90mmHg以上で心血管疾患のリスクが増加することは明らかだ。また、降圧療法による心血管疾患発症リスクの軽減は年齢によらないというデータもあり、薬物療法を行うかどうかは別として、少なくとも管理対象にはなると判断したため」と説明した。

 ただし、75歳以上でSBP160mmHg以上の場合は、降圧の最終目標は140/90mmHgとしながらも、150/90mmHg未満を中間目標として慎重に降圧を行うべきと付記している。

 楽木氏によれば、75歳以上のII度以上高血圧で、140/90mmHgを降圧目標とすることに関して介入試験のエビデンスはない。例えば、日本人の高齢高血圧患者を対象にしたJATOS試験では、降圧目標を140mmHg未満に設定した場合と140〜160mmHgに設定した場合で、イベント発生に差はみられていない。このため、ガイドライン作成委員会では150mmHg未満を目標にすべきとの意見も出たが、厳格な降圧を否定するものではないとの見方から、疫学研究の成績を重視してこの形にまとまったという。