単剤療法と併用療法の選択アルゴリズムは図1のように示されている。例えば、高リスクでないI度高血圧の場合は、少量の単剤投与から始め、目標血圧値に達しないとき、通常用量への増量あるいは少量の併用に切り替える。一方、II度以上の高血圧や高リスクのI度高血圧の場合は、最初から通常量の単剤を用いるか少量の2剤を併用する。それでも目標血圧値に達しないときには、薬剤の増量、変更、追加を行う。

図1 降圧薬治療のステップ

 しかし、島田氏によれば、こうした薬物選択の原則は実地診療においては必ずしも反映されておらず、まだ不徹底だという。その根拠の1つは、第一選択薬の中でもCa拮抗薬とARBの使用量(売上)が他剤に比べて突出して多く、他の主要降圧薬が十分に活用されているとは言いがたいからだ。

 また、国内での最近の調査によれば、降圧目標の達成度が不十分にもかかわらず、併用療法の頻度が少ないことが報告されている。高血圧患者が服用している降圧薬の数は1剤が51.3%、2剤が32.0%、3剤以上は9.3%であり、収縮期血圧が降圧目標値を達成している患者の割合は54.9%に過ぎなかった(血圧 2006;13:1019-1025)。

 さらに島田氏は、現在は多剤併用時代を迎えているにもかかわらず、併用療法に関するエビデンスが不十分なことを指摘した。例えば、RA系阻害薬+Ca拮抗薬とRA系阻害薬+利尿薬の両者の間に優劣はあるのか否か、糖尿病や腎機能低下のある例ではどのような併用が推奨されるのか──といった併用療法のアルゴリズムを、今後のエビデンスの蓄積を通じて確立させる必要がある。

 降圧薬による治療目標値については、ONTARGET試験のpost-hoc解析やINVEST試験で、脳卒中発症は治療中血圧値が低いほど減少するが、治療中血圧値と心筋梗塞発症の間にJ型(Jカーブ)現象があり、過度の降圧が心筋梗塞を増加させる可能性があることが報告されている。このため、島田氏は「厳格な降圧のあり方を考えるには、J型現象がどのような臓器障害や血圧レベルにみられるのか、また、臓器や降圧薬による相違はあるのかといった点を、J型現象が果たして本当に存在するのかという点も含めて、今後検証していく必要もある」と述べた。