国立感染症研究所は12月27日、インフルエンザ感受性調査の第2報を公表した。12月7日に発表された第1報同様、全体としてはB型(山形系統)が調査した株の中で最も低い抗体保有率(31.0%)で変わらなかった。特に10歳未満および50歳以上の各年齢群は25%未満と比較的低い水準だった。コメントの中で感染研は、第50週(12月10〜16日)に全国的にインフルエンザの流行期に入った点を指摘し、「まだ予防接種を受けていない人、特に本調査において抗体保有率が低かった年齢層においては、ワクチン接種などの早めの予防対策が望まれる」と求めた。

 インフルエンザ感受性調査は、インフルエンザに対する国民の抗体保有状況を把握し、抗体保有率が低い年齢層に対してワクチン接種の注意喚起を行うとともに今後のインフルエンザ対策に生かしていくことを目的に毎年行われている。第2報は、2012年12月27日現在でまとまった調査結果の速報となる。

 今回の調査対象となったウイルス株は、以下の4種類。このうち1〜3は、今シーズンのワクチン株に採用されたもの。4のB型(ビクトリア系統)は、最近、B型(山形系統)と並行して流行がみられたことから調査対象になっている。

1) A/California(カリフォルニア)/7/2009 [A(H1N1)pdm09亜型]
2) A/Victoria(ビクトリア)/361/2011 [A(H3N2)亜型]
3) B/Wisconsin(ウィスコンシン)/1/2010 [B型(山形系統)]
4) B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008 [B型(ビクトリア系統)]


 第2報では、24都道府県から計6552人を対象とした結果が報告された。5歳ごとの年齢群別対象者数は、0〜4歳群が828人、5〜9歳群が511人、10〜14歳群が583人、15〜19歳群が514人、20〜24歳群が521人、25〜29歳群が578人、30〜34歳群が507人、35〜39歳群が518人、40〜44歳群が477人、45〜49歳群が370人、50〜54歳群が357人、55〜59歳群が294人、60〜64歳群が272人、65〜69歳群が114人、70歳以上群が108人だった。

 インフルエンザウイルスに対する抗体の有無および抗体価の測定は、対象者から採取された血液(血清)を用い、都道府県衛生研究所において赤血球凝集抑制試験(HI法)により実施された。採血時期は2012年7〜9月(インフルエンザの流行シーズン前かつワクチン接種前)。なお、第2報における抗体保有率は第1報同様、感染リスクを50%に抑える目安と考えられているHI抗体価1:40以上の抗体保有率を示している。数字の評価は、抗体保有率が60%以上を「高い」、40%以上60%未満を「比較的高い」、25%以上40%未満を「中程度」、10%以上25%未満を「比較的低い」、5%以上10%未満を「低い」、5%未満を「極めて低い」と表している。

 調査の結果、A/California(カリフォルニア)/7/2009 [A(H1N1)pdm09亜型]については、全体の抗体保有率は51.0%であり、調査株中最も高かった。0〜4歳群および55歳以上の各年齢群で中程度の抗体保有率(26〜36%)だったが、それ以外の年齢群は比較的高い〜高い抗体保有率(43〜80%)を示した。

 A/Victoria(ビクトリア)/361/2011 [A(H3N2)亜型]については、全体の抗体保有率は調査株中2番目に低かった(40.0%)。年齢群別では5〜44歳の各年齢群および70歳以上群は比較的高い抗体保有率(40〜54%)だった。しかし、それ以外の年齢群は中程度以下の抗体保有率(22〜34%)であり、特に0〜4歳群は25%未満で比較的低い抗体保有率だった。

 B/Wisconsin(ウィスコンシン)/1/2010 [B型(山形系統)]については、全体では31.0%と調査株中最も低かった。年齢群別では20〜24歳群をピークに15〜29歳の各年齢群のみが40%以上の抗体保有率(48〜65%)だった。それ以外の年齢群は中程度以下の抗体保有率(10〜37%)を示し、特に10歳未満および50歳以上の各年齢群は25%未満の抗体保有率だった。

 最後のB/Brisbane(ブリスベン)/60/2008 [B型(ビクトリア系統)]については、全体の抗体保有率は調査株中2番目に高い47.0%だった。年齢群別では、0〜4歳群および60歳以上の各年齢群で中程度以下の抗体保有率(20〜33%)だった。それ以外の年齢群は比較的高い〜高い抗体保有率(41〜69%)を示した。


国立感染症研究所感染症情報センター第三室(予防接種室)室長・多屋馨子氏の談話

 感染症発生動向調査によるインフルエンザ患者の定点あたり報告数は、2012年第50週(12月10日〜16日)に1.17となり、全国的な流行開始の指標となる1.0を上回った。これから本格的な流行を迎えるので、まだ予防接種を受けていない人はもちろん、感染症流行予測調査事業に基づいて実施されているインフルエンザ抗体保有状況-2012年速報第2報において抗体保有率が低かった年齢層(こちらから確認可能)においては、ワクチン接種などの予防対策が望まれる。

 インフルエンザに特異的な予防法ではないが、感染症予防の基本的事項として、流行期に人込みを避けること、それが避けられない場合などにはマスクを着用すること、外出後のうがいや手洗いを励行すること、咳エチケットの実施などが挙げられる。また、現在わが国で用いられているインフルエンザワクチンは、感染や発症そのものを完全には防御できないが、重症化や合併症の発生を予防する効果が期待されている。「高齢者福祉施設・病院に入所(院)している65歳以上の健常な高齢者に対してワクチンを接種すると、発病阻止効果は34〜55%、インフルエンザを契機とした死亡阻止効果は82%であり、インフルエンザワクチンは重症化を含め個人防衛に有効なワクチンと判断された」とワクチンの添付文書には記載されている。

 ただ、ワクチンについては接種してからおよそ2週間以降に効果が現れるので、特に早めの対応が必要だ。流行が拡大し患者数が増加している最中に接種したのでは遅いので、地域の流行状況を確認してから行動に移してほしい。ワクチン接種を希望する場合は近くの医療機関あるいは保健所等に相談してみるのもいいだろう。

 今シーズンはこれまでのところA香港型(AH3亜型)の報告が目立っている。このウイルスの場合、小児ではインフルエンザ脳症の発生頻度が他の亜型や型に比べて高いことが報告されている。また、年末年始に流行が重なると、人の移動が盛んになることに加えて、医療機関は休日体制となり、平日に比べるとの体制が手薄であることも考えられるので、より一層、予防の徹底を図る必要がある。

■参考情報
インフルエンザ抗体保有状況 −2012年速報第2報− (2012年12月27日現在)