北里大学医学部公衆衛生学准教授の和田耕治氏

 今年もインフルエンザ予防接種が始まった。65歳以上については、自治体の費用補助などもあり、診療の場で接種を勧めることも多いかもしれない。しかし、働く世代については個人の判断(任意)となっていることもあり、同居家族に小さな子やご老人のようなリスクの高い方がいる場合には接種を勧めるかもしれないが、そうでなければ基本的には本人からの希望に応じるという感じが多いであろうか。

 米国では、生後6カ月以降のすべての人にインフルエンザ予防接種を勧めるという見解が示されている。今後日本でどのような議論がされるかは不明であるが、そもそも、働く世代がインフルエンザの予防接種に関してどのような意識でいるかはあまり知られていない。

 本稿では、働く世代がインフルエンザの予防接種にどのような期待をしているのか、しない人はどうしてしないのかを紹介する。本調査はインターネットサーベイを用いて約3000人を対象に20歳から69歳の男女の調査を行ったものである。調査は2011年9月に行われた。

インフルエンザ予防接種をした人とその意識
 まず、2010年度のインフルエンザシーズンにインフルエンザの予防接種をしたか、しなかったかを質問した。参加者は3110人であった。2010年の冬にインフルエンザの予防接種をしたと回答したのは、853人(27.4%)であった。

 接種をした理由を尋ねたところ、大きく3つに分けられた。

 1位は「インフルエンザを発症するのを予防したいから(83.3%)」、2位は「感染しても重症化するのを予防したいから(63.7%)」、3位は「同居家族に重症化のリスクが高い人がいるから(25.4%)」であった。性別、年代別での解析でもほぼこの順位であった。インフルエンザの予防接種の効果としては「重症化の予防」が強調されているが、接種者にはそれ以上に発症予防に大きな期待があるようである。このあたりの認識を今後どのようにするかも課題であるし、発症予防の効果がさらに高いワクチンの開発も期待される。

インフルエンザ予防接種をしなかった人とその意識
 では予防接種をしなかった残りの72.6%の人々の傾向を見てみたい。

 全員を対象に解析すると、接種しなかった理由としては、1位が「医療機関に行く時間がなかったから(28%)」、2位が「自分はインフルエンザに感染しないと思うから(24%)」、3位が「予防接種のための経済的余裕がなかったから(22%)」(複数回答可)であった。

 しかし、もう少し細かく性別、年代別に見ると様々な姿が見える。表1に性別、そして年代にわけた場合の予防接種をしなかった理由を示した。

表1 性・年代別のインフルエンザの予防接種をしなかった理由(複数回答可。20歳から69歳までの男女、n=2257)[クリックで拡大]

 男性、女性ともに「医療機関に行く時間がなかったから」が多く選ばれていた。確かに企業でインフルエンザの予防接種をする機会を就業時間に提供すると接種者は増えるようである。とはいえ、働く世代はなにかと忙しい。アクセスをさらによくする方策の検討も必要である。

 米国を訪問したことがある方はご存じのように、町中の薬局や空港などでインフルエンザの予防接種ができるようにしている。いつかフロリダの薬局の担当者と話した際には、一定の教育を受けた薬剤師であれば、全ての人に対してではないが、接種できるとのことであった。日本でも、こうした接種体制が今後議論されることがあれば少しでもアクセス面が解決されるかもしれない。