三重県で検出されたタミフル・ラピアクタ耐性H1N1pdm09ウイルスは、札幌市で確認された耐性ウイルスと遺伝子配列が同じであることが明らかになった。三重県保健環境研究所が1月24日、国立感染症研究所のインフルエンザウイルス分離・検出速報で発表した。

 それによると、三重県で確認された耐性H1N1pdm09ウイルスは、抗インフルエンザ薬の投与歴のない患児の検体から分離されたものだった。三重県では1月14日現在、2013年9月に3株、12月下旬に1株、2014年1月上旬に3株の計7株のH1N1pdm09ウイルスが分離されており、NA遺伝子塩基配列の解析の結果、昨年12月25日に採取された患児の検体から分離した株(A/Mie/27/2013)にH275Y耐性変異が確認された。この耐性ウイルス(A/Mie/27/2013)のNA蛋白は、札幌市の耐性ウイルス株と同様にV241I、N369K、N386Kの変異を有することも分かった。

 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターで実施されたNA阻害薬に対する感受性試験の結果、この耐性ウイルス(A/Mie/27/2013)のタミフル、ラピアクタ、リレンザ、イナビルに対するIC50値は、それぞれ364.80nM、16.52nM、0.18nM、0.93nMとなり、感受性参照株と比較してタミフルとラピアクタに対する感受性は著しく低下していた。一方、リレンザとイナビルに対しては感受性が維持されていた。

 疫学情報を見ると、患児は、欧州から帰国後、家族とともに2013年12月20日から24日まで札幌市に滞在していた。その後、三重県へ帰省、同年12月25日にインフルエンザ定点医療機関(小児科)を受診した。検体採取前に抗インフルエンザ薬の投与は受けていなかったことから、「薬剤により患児の体内で耐性ウイルスが選択的に発生した可能性は否定される」(三重県保健環境研究所)という。 

 患児がインフルエンザ症状を発症する前に、父母が発熱症状を示していたことが確認されており、父親の検査については不明だが、母親は患児が発症する前日に医療機関を受診しA型インフルエンザと診断されていた。このため今回の事例は「家族内感染の可能性が考えられる」としている。

 なお、母親にはリレンザが処方されていた。患児の方は、年末の受診以降、医療機関を受診していないため、「予後および感染拡大等の詳細は不明」という。

 三重県保健環境研究所では、「札幌市で耐性株がまとまって検出された時期に患者家族が札幌市に滞在していた」点と「遺伝子配列が札幌市の耐性株と全く同じであった」ことを根拠に、「札幌で耐性株に感染し三重県に持ち帰ったケースと考えられる」とまとめている。その上で、「今後、国内でのH1N1pdm09ウイルスの流行動向および抗インフルエンザ薬耐性株の出現状況を注意深くモニタリングし、医療機関における投与薬剤の選択戦略を検討するための情報提供をしていきたい」と結んでいる。

 全国地方衛生研究所と国立感染症研究所が行っている抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスによると、1月27日現在、タミフル・ラピアクタ耐性A/H1N1pdmウイルスは、解析したウイルス株は151件のうち20件に確認された。検出率は13%だった。

 検体を採取した週別にみると、2014年2週に8件、3週に1件、新たに検出されている。報告機関別では、札幌市衛生研究所で17株中15件、山形県衛生研究所で4株中2件、神奈川県衛生研究所で2株中1件、三重県保健環境研究所で4株中1件、大阪府立公衆衛生研究所で13株中1件に、それぞれ確認されている。

 札幌と三重で同一の遺伝子配列を持つタミフル・ラピアクタ耐性ウイルスが見つかったことと、抗インフルエンザ薬の投与前の症例から検出されていることを考え合わせると、今後、耐性ウイルスがほかの地域へ拡大する可能性もある。H1N1pdm09ウイルスの流行動向および抗インフルエンザ薬耐性株の出現状況については、今後とも細心の注意を払う必要がある。


■参考情報
・<速報>家族内感染が疑われたオセルタミビル投与前の小児患者から分離された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス―三重県