博多駅前かしわぎクリニック理事長の柏木征三郎氏

 昨年末、抗インフルエンザ薬のイナビルに、インフルエンザウイルス感染症予防の効能が追加された。予防効果の実証試験を主導した博多駅前かしわぎクリニック理事長の柏木征三郎氏に、家庭内接触によるインフルエンザ暴露後予防におけるイナビルの成績についてうかがった。

―― 昨年末ですが、抗インフルエンザ薬のイナビル(一般名;ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)に、インフルエンザウイルス感染症予防で効能が追加されました。インフルエンザウイルス感染症の予防投与では、タミフル、リレンザに次ぐ3剤目となりました。

柏木 予防投与として、新たな選択肢が増えたことになります。

―― 先生方が取り組まれた臨床試験では、予防効果が高かったことが報告されています。

柏木 そもそもイナビルは、長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤で、インフルエンザに対する有効な治療の1つとなっています。2010年10月の発売以来、単回投与で治療が完結する吸入薬として、インフルエンザウイルス感染症の治療薬として普及しています。しかし、インフルエンザの予防という面では、イナビルの効果は実証されていませんでした。そこで、私たちは2011/12シーズンに、家庭内接触でのインフルエンザの暴露後予防において、イナビルがプラセボよりも優れているかどうかを判断するために、二重盲検、多施設、無作為化、プラセボ対照試験を実施しました。

―― 成果の詳細は2013年8月に「Journal of Infection and Chemotherapy」(参考文献)で発表されています。まず試験のポイントを解説していただけないでしょうか。

柏木 家庭内でインフルエンザ感染の初発患者と接触していた人で、インフルエンザを発症していなかった人を、3群に無作為化しました。具体的には、イナビル20mgを1日1回を2日間投与するLO-2群と、イナビル20mgを1日1回を3日間投与するLO-3群、さらにプラセボ1日1回を3日間投与するプレセボ群、のそれぞれに無作為に振り分けて、暴露後予防効果を比較検討したのです。

―― 主要評価項目は何を評価したのでしょうか。

柏木 治療開始から10日間のインフルエンザ発症者の割合としました。インフルエンザ発症は臨床的に判断しました。具体的には、臨床検査でインフルエンザと診断され、腋窩温度が少なくとも37.5℃、および少なくとも2種類のインフルエンザ症状がある場合と定義しました。

―― 結果はいかがだったのでしょうか。

柏木 最終的に、LO-2群487人、LO-3群486人、プラセボ群478人について、予防効果の解析を行いました。その結果、主要評価項目は、LO-2群が3.9%、LO-3群が3.7%、プラセボ群が16.9%となりました(図1)。イナビル投与の2群はそれぞれ有意に、プラセボ群より発症者が少ないという結果でした(それぞれP<0.001)。プラセボ群と比べた場合の相対リスク減少は、LO-2群が77.0%(95%信頼区間[95%CI]:62.7-85.8%)、LO-3群が78.1%(95%CI:64.1-86.7%)だったわけです。

図1 インフルエンザ発症者の割合の推移

―― 安全面はいかがだったのでしょうか。

柏木 イナビル投与群における有害事象の発生率は、プラセボ群と同様であり、安全面でも問題がないという結果でした。これらの結果から私たちは、「イナビル20mg1日1回を2日間または3日間吸入した場合、忍容性は良好であり、かつ家庭内接触によるインフルエンザ発症を効果的に阻止することが実証された」と結論しました。

―― 先生方の実証試験に基づき、イナビルを予防に用いる場合は、成人および10歳以上の小児を対象として、イナビル20mgを1日1回、2日間吸入投与する、となりました。

柏木 その通りです。

―― 治療に用いる場合は、成人および10歳以上の小児は40mgを単回吸入投与するとなっています(10歳未満の小児は20mg)。同じ成人および10歳以上の小児において、予防投与の場合は、イナビル20mgを1日1回、2日間吸入投与するわけですが、用法用量が治療と予防で異なるのはなぜなのでしょうか。

柏木 40mgの単回吸入投与の予防効果については、まだ実証されていないからです。今後、新たな実証試験を行い、40mgの単回吸入投与の予防効果を検証する予定です。

―― インフルエンザウイルス感染症の予防投与におけるイナビルの特徴について、先生のお考えをお聞かせください。

柏木 タミフルやリレンザも予防投与に使えます。タミフルは1回1カプセル、1日1回内服とし、リレンザは1日1回吸入となっています。予防投与の期間は7日間から10日間です。一方、イナビルは、1日1回吸入を2日間です。期間が短くて済みますから、それだけで十分にベネフィットがあると考えられます。

■参考文献
・Laninamivir octanoate for post-exposure prophylaxis of influenza in household contacts: a randomized double blind placebo controlled trial.J Infect Chemother (2013) 19:740-749