日本赤十字社長崎原爆諫早病院呼吸器科の福島喜代康氏

 日本赤十字社長崎原爆諫早病院呼吸器科の福島喜代康氏らは、リアルタイムPCR法を用いた遺伝子検査により、院内発生インフルエンザ患者のウイルス陰性化までの期間を検討した。その結果、医療関係者、非担癌・ステロイド非内服入院患者のウイルス陰性化までの期間は、いずれも抗インフルエンザ薬投与開始後平均約5日だったが、担癌・ステロイド内服入院患者では8.5日に延長していたことが分かった。共同開催された第61回日本化学療法学会西日本支部総会・第56回日本感染症学会中日本地方会学術集会・第83回日本感染症学会西日本地方会学術集会(11月6〜8日、開催地:大阪市)で報告したもの。同氏は「入院患者の隔離解除は、基礎疾患などの背景を考慮して、慎重に行うべきだ」と指摘した。

 院内でインフルエンザの感染・発症が疑われる患者が発生した場合、基本的に個室隔離とするが、いつまで隔離すべきかは必ずしも明確ではない。一般には臨床症状、特に発熱の経過によって判断されることが多い。しかし、解熱後もウイルス残存の可能性はある。院内には免疫機能が低下している患者も少なくないため、より厳格な判断が望まれる。

 2009年に起きたA/H1N1pdm09ウイルスのパンデミックを契機に、リアルタイムRT-PCR法などを用いた遺伝子検査によるインフルエンザ確定診断の体制が、衛生研究所などに広く整備された。一般病院ではまだ一部に限られているが、日赤長崎原爆諫早病院は2012年4月に導入した。院内に遺伝子診断ラボを設置し、RT-PCR法およびLAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法による遺伝子診断を一般臨床で行っている。

 福島氏らは今回、リアルタイムRT-PCR法を用いて、院内発生インフルエンザ患者のウイルス陰性化までの期間を検討した。対象は、2012/13年シーズンに同院で診断されたA型インフルエンザ患者49例(入院患者33例、医療従事者16例)。綿棒で採取した鼻腔/咽頭ぬぐい液をHanks液に保存し、RT-PCR法に供した。

 罹患患者49例全例でAH3感染が認められた。H1N1pdm09はまったく検出されなかった。

 インフルエンザ罹患入院患者33例を、非担癌あるいはステロイド薬を内服していない患者19例と、担癌あるいはステロイド薬を内服している患者14例の2群に分け、罹患医療従事者の群を加えた3群で、ウイルス陰性化までの期間を比較した。

 なお、3群の平均年齢は、担癌・ステロイド内服群81歳、非担癌・ステロイド非内服群70歳、医療従事者群43歳で、医療従事者群に比べ、他2群で有意に高かった。また、各群の発症時のウイルス量を見ると、担癌・ステロイド内服群では他2群に比べ、やや多い傾向が認められた。

 医療従事者群では、抗インフルエンザ薬投与開始後3〜6日、平均4.5日で陰性化した。非担癌・ステロイド非内服群もほぼ同様で、3〜8日、平均5.0日で陰性化が認められた。これに対して、担癌・ステロイド内服群では、抗インフルエンザ薬投与開始から陰性化まで7〜13日、平均8.5日を要した。

 この結果から、同院では、入院患者の隔離解除(一般病室やリハビリ施設への移動可能)を「RT-PCR検査で陰性となった時点」とすることに決めた。その影響かは分からないものの、以後、院内感染患者が少ない状態が続いている。

 福島氏は、まだRT-PCR法などの遺伝子検査を行えない病院も多いことを踏まえ「入院患者の隔離解除は、基礎疾患などの背景を考慮して、慎重に行うべきだ」と結論した。