松波総合病院(岐阜県羽島郡)救急部・総合内科の長門直氏

 2012/13年シーズンにノイラミニダーゼ(NA)阻害薬を処方したインフルエンザ患者70例で、各NA阻害薬(ラピアクタを除く3薬)の効果や有害事象を検討した結果、有効率、有害事象発現率は薬剤間で有意差がなかったことが分かった。松波総合病院(岐阜県羽島郡)救急部・総合内科の長門直氏らが、共同開催された第61回日本化学療法学会西日本支部総会・第56回日本感染症学会中日本地方会学術集会・第83回日本感染症学会西日本地方会学術集会(11月6〜8日、開催地:大阪市)で報告した。同氏らは、2011/12年シーズンに行った検討でも同様の結果を得ており、「(効果、副作用の観点からは)どのNA阻害薬を使用してもよいと考えられた」と述べた。

 現在、抗インフルエンザ薬として4種類のNA阻害薬が使用されている。内服薬(1日2回5日間)のタミフル、吸入薬(1日2回5日間)のリレンザ、注射薬(単回点滴、複数回可)のラピアクタ、吸入薬(単回吸入)のイナビルだ。

 NA阻害薬の使い分けについて、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班によるインフルエンザ診療マニュアル2013/14年シーズン版では「薬剤によって使用に適した年齢などが異なり、臨床現場での使い分けが必要」とされている。タミフルの添付文書では、10歳以上の未成年患者には原則として使用を差し控えるよう記載されている。

 実際に、使用されているNA阻害薬の種類は年代によって偏りが見られる。同研究班が2012/13年シーズンに行った調査によると、9歳以下ではタミフル、10歳代ではイナビル、リレンザ、60歳未満の成人ではイナビル、タミフル、60歳以上ではイナビル、ラピアクタが主に使用されていた。

 使い分けについてはさらに、入院管理、肺炎合併など、重症度に応じた推奨薬剤を示した、日本感染症学会の2011年提言が知られている。しかし、外来でのNA阻害薬の使い分けに関してはまだ明確な基準はない。

 そこで長門氏らは、NA阻害薬の処方指針を検討するため、2011/12年シーズンに引き続き、2012/13年シーズンのNA阻害薬処方例に任意のアンケート調査を行い、各NA阻害薬の効果、有害事象を比較検討した。アンケート調査は、同院救急外来でインフルエンザと診断され、NA阻害薬を処方された患者420例中122例に実施し、73例(60%)より回答を得た(麻黄湯処方例1例含む)。

 処方したNA阻害薬の内訳は、タミフル31例(43%)、イナビル26例(36%)、リレンザ13例(18%)、ラピアクタ2例(3%)。例数が少なかったラピアクタ処方例2例と麻黄湯処方例1例を除く70例を今回の検討対象とした。

 ちなみに、2011/12年シーズンの調査(対象104例)はタミフル63例(61%)、イナビル34例(33%)、ラピアクタ4例(4%)、リレンザ3例(3%)だった。2011/12年シーズンに比べると、2012/13年シーズンはタミフルの割合が減り、リレンザの割合が増えたことになる。リレンザが増えた理由は明らかではなかったが、タミフルについては、患者側が異常行動を気にして、他の薬剤を希望したことが減少に結びついた可能性が考えられた。

 まず、患者背景を各NA阻害薬処方群間で比較すると、平均年齢はタミフル群39歳、イナビル群36歳、リレンザ群24歳と、リレンザ群で低い傾向が認められた。また、15歳未満の割合は、タミフル群が23%、イナビル群が19%、リレンザ群が46%と、リレンザで高い傾向が見られた。こうした年齢分布の差が影響したためか、受診時体温はタミフル群38.181℃、イナビル群38.292℃、リレンザ群39.923℃と、リレンザ群が他2群に比べて有意に高かった。

 次に、効果を比較検討した。処方後の解熱時間が2日以内であった症例の割合を有効率とすると、有効率はタミフル群65%、イナビル群77%、リレンザ群62%で、3群間に有意差は見られなかった。

 なお、有効率を予防接種の有無、受診時までの有熱期間(1〜5日間の5群)によっても比較したが、いずれも有意差は認められなかった。

 さらに、有害事象について調べたところ、有害事象の発現頻度はタミフル群23%、イナビル群35%、リレンザ群42%で、やはり3群間で有意差は認められなかった。

 以上の結果から、長門氏は、「(効果、副作用の観点からは)どのNA阻害薬を使用してもよいと考えられた。個々の症例に応じて処方を検討していくことが必要だろう」と結論した。