北海道大学病院感染制御部部長の石黒信久氏

 いったん37.5℃未満に解熱後、24時間以降に再び37.5℃以上に発熱するインフルエンザの二峰性発熱例は、リレンザ治療群の方が同じ吸入薬であるイナビル治療群よりも有意に少ないことが示された。2011/12シーズンに北海道内の多施設医療機関で行われた前向き観察研究で明らかになったもの。成果はこのほど、Influenza Other Respi Viruses誌に発表された。研究に取り組んだ北海道大学病院感染制御部部長の石黒信久氏に、検討の詳細と結果についてうかがった。

―― 昨年の第44回日本小児感染症学会総会・学術集会で発表された研究成果が、最近、論文誌に掲載されたとうかがいました。

石黒 Influenza Other Respi Viruses誌にアクセプトされ、8月にオンライン版で先行掲載となりました。

―― 先生方は今回の研究で、二峰性発熱に注目されていますが、なぜなのでしょうか。

石黒 小児のインフルエンザでは、いったん解熱した後に再び発熱する二峰性発熱を認めることがあります。意外と知られていないようですが、例えば体温表を記録してもらうと図のような変化を示す症例があります。この症例では治療開始日から2日目に37.5℃未満に解熱しています。ところが3日目に再び37.5℃以上に発熱していたのです(図1)。

図1 二峰性発熱を呈した症例の体温表

 なぜこのような経過をたどるのか。治療法に依存するものなのか、あるいはインフルエンザ特有の現象なのか――。私たちはそのメカニズムを解明する必要があると考えました。

 二峰性発熱は、患者さん本人はもちろん、見守る家族にとっても肉体的、精神的負担になります。医療コストも余計にかかることになります。また、出席停止期間(学校保健安全法等の「学校保健安全法施行規則」では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日[幼児の場合は3日]を経過するまで)が延びてしまうという問題も出てくるのです。

 インフルエンザ治療においては、早期の解熱はもちろんですが、二峰性発熱をできる限り抑制するような対策が望まれているわけです。

―― 二峰性発熱の頻度はどれぐらいなのでしょうか。

石黒 佐久間孝久先生らの研究では、抗インフルエンザ薬を使用しない場合で、例えば0〜6カ月では15.4%、1〜2歳未満で92.3%にみられたと発表しています(図2)。

図2 二峰性発熱の割合と年齢(抗インフルエンザ薬を使用しない場合)

―― とても高い数字だと思います。

石黒 二峰性発熱の定義によっても変わってくると思いますが、確かに高い割合だと思います。私たちは抗インフルエンザ薬によって治療した症例でも二峰性発熱例がみられることから、治療薬によってその頻度に違いがあるかもしれないと考え、今回の検討を行いました。

―― 研究の全体像をご説明ください。

石黒 私たちはまず、同じ吸入薬であるリレンザとイナビルに着目し、それぞれの治療効果と二峰性発熱例の発生頻度を調べました。

 研究デザインは図3にまとめました。対象は、2012年1〜4月に北海道内の医療機関でインフルエンザと診断され、発熱後48時間以内にリレンザまたはイナビルによる治療が行われた小児患者です。リレンザを処方するのかあるいはイナビルを処方するのかは、診療に当たった医師の判断にゆだねました。