ライフ調剤薬局(愛知県)の近藤一朗氏

 抗インフルエンザ薬が処方された20歳未満の患者700例以上を対象に行ったアンケート調査で、異常行動はタミフルが処方された群(10歳未満)、リレンザが処方された群とも約15%で認められ、全体の80%以上は睡眠時または覚醒直後に発生していたことが分かった。ライフ調剤薬局(愛知県)の近藤一朗氏らが、第46回日本薬剤師会学術大会(9月22〜23日、開催地:大阪市)で報告。抗インフルエンザ薬の服薬指導において、特に睡眠時、覚醒直後に患者から目を離さないよう注意喚起することの重要性を指摘した。

 抗インフルエンザ薬を使用した小児で異常行動が見られたという報告は毎シーズン行われる。その都度、抗インフルエンザ薬との関連が話題となるが、現時点で、抗インフルエンザ薬との因果関係は確認されていない。しかし、インフルエンザ患者に少なからず起きていることは確かで、処方時の注意喚起は非常に重要となる。

 厚生労働科学研究「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」の2011/12年シーズンの報告でも、特定の因果関係は認められないことが示された。同報告は、わが国の全医療機関を対象に、インフルエンザ様疾患と診断され、かつ重度の異常な行動(飛び降り、急に走り出すなど、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある行動)を示した患者に関する前向き調査だ。

 この調査で、2011/12年シーズンに、重度の異常な行動を起こした患者は92例。年齢は平均8.5歳、中央値8歳で、男性が74%。イナビル吸入後の飛び降りによる死亡が1例認められた。服用薬別(他薬併用あり)の件数(調査総数49件)は、アセトアミノフェン16件(飛び降り、突然走り出すは11件)、タミフル9件(同3件)、イナビル9件(同6件)、リレンザ7件(同3件)。医薬品非使用でも8件(同8件)認められた。

 同調査の前年シーズンまでの結果とほぼ一致しており、「これまでと同様に、抗ウイルス薬の種類、使用の有無と異常行動については、特定の関係に限られるものではないと考えられた」とまとめられた。そのうえで「抗インフルエンザ薬の処方の有無に関わらず、インフルエンザ発症後の異常行動に関して注意喚起する」こと、「抗インフルエンザ薬についても、従来同様の注意喚起を徹底するとともに、異常行動の収集・評価を継続して行う」ことが必要とされた。

 異常行動の発現に関して、患者(保護者)に直接アンケート調査すると、どのような結果が得られるのか――。近藤氏らは今回、調剤薬局の受付で、抗インフルエンザ薬が処方された患者(保護者)全員に調査票を配布し、後日回収して解析した。調査票配布期間は2013年1月5日〜同年3月31日。対象年齢は20歳未満とした。

 調査票を配布した患者は734例。うち、419例(57.1%)より回収できた。419例の年齢は平均6.9歳、中央値7歳。性別は男性237例(56.6%)、女性182例(43.4%)。ウイルス型はA型266例(63.5%)、B型153例(36.5%)。

 処方された抗インフルエンザ薬は、タミフル287例(68.5%)、リレンザ130例(31.0%)、イナビル2例(0.5%)。処方薬群別の年齢の平均と中央値は、それぞれタミフル群5.0歳、5歳、リレンザ群10.9歳、11歳、イナビル群13.0歳、13歳。タミフルは10代の患者には原則使用されていないため、タミフル群では低年齢となった。

 イナビル処方例は2例に留まったため、今回の調査ではタミフル処方例、リレンザ処方例について解析した。異常行動の判断については、調査実施側は干渉せず、あえて保護者の主観に委ねた。

 その結果、異常行動は419例中66例(15.8%)で認められた。比較的高率だったのは「保護者の判断に任せたことから、軽度のうわごとなども含まれているためと思われた」。処方薬別ではタミフル群47例(16.4%)、リレンザ群19例(14.6%)で、発現率に有意差はなかった。抗インフルエンザ薬の使用前、使用後で分けて調べると、使用前の発現率はタミフル群7.0%、リレンザ群5.4%、使用後の発現率はそれぞれ11.1%、10.8%。使用前、使用後とも処方薬による有意差は見られなかったが、両群とも使用後で高率だった。

 異常行動の発現時期は、タミフル群が第1病日51.0%、第2病日32.7%、リレンザ群がそれぞれ61.9%、23.8%。両群とも80%以上が第2病日までに発現していたことになる。第2病日までが多いことは、これまでの報告でも指摘されている。午前、午後、夜間に分けて数えると、異常行動発現例全体の半数近くが第1病日の夜間に発現していた。

 一方、異常行動発現時の状況については、睡眠から覚めた直後に起こりやすいという報告が多い(前述の厚生労働科学研究では毎シーズン60%前後)。近藤氏らもこの点を検討したところ、異常行動発現例全体の81.8%が睡眠時または覚醒直後であった。処方薬別ではタミフル群80.9%、リレンザ群84.2%でほぼ同等だった。

 さらに、併用薬の有無を検討すると、抗インフルエンザ薬のみが71.2%、抗インフルエンザ薬+解熱剤が6.1%、抗インフルエンザ薬+解熱鎮痛剤以外が22.7%。抗インフルエンザ薬のみの内訳は、タミフルのみ53.0%、リレンザのみ18.2%と、タミフルで高率だった。

 なお、薬剤投与開始までの平均時間は、タミフル群17.6時間、リレンザ群17.5時間で有意差はなかった。平均解熱時間(投与開始から解熱までの時間)も、タミフル群28.5時間、リレンザ群28.0時間でほぼ同等だった。

 以上のように、今回の患者へのアンケート調査で、これまでの他の調査結果とほぼ一致するデータが得られた。近藤氏は、異常行動発現率はタミフル群とリレンザ群の間で有意差が認められなかったことから「薬剤との因果関係について、オセルタミビルに特異的であるとは言えないと考えられた」と述べた。ただし、オセルタミビルは10代の患者に原則使用しないという状況下での調査であるため「因果関係について踏み込んだことは言えない」とも付け加えた。

 異常行動の発現時期についても、過去に発表された調査と同様の結果が得られ「少なくとも2日間は、小児・未成年患者が1人にならないように配慮する必要性について、現在行われている服薬指導内容に一定の根拠が認められた」とした。

 さらに、異常行動発現時の状況に関しては、80%以上が睡眠時または覚醒直後であったため「今後の服薬指導において、睡眠中・覚醒直後においてより重点的に目を離さないよう注意喚起することで、重大な事故発生の抑制に寄与する可能性があると考えられた」と語った。