河合直樹氏(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班班長、河合内科医院院長)

 「よくわかるインフルエンザのすべて」(医薬ジャーナル社)がこの夏に上梓された。なぜこの時期に――。編者の河合直樹氏(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班班長、河合内科医院院長)は、今だからこそインフルエンザの全体像をまとめる必要があった、と話す。2009年のパンデミック・インフルエンザの出現以降も、豚インフルエンザH3N2vや鳥インフルエンザH7N9のヒト感染例が確認されるなど、新たなパンデミックを想起させる事例が続いている。わが国も特別措置法のもと、国としてネクスト・パンデミックに備える準備を進めている最中だ。「インフルエンザの実像を、最新の知見に基づいて体系化する」。編者にこの本にこめた意図を語ってもらった。

―― 8月にインフルエンザをテーマとした新刊が出版されるのは、珍しいのではないでしょうか。

河合 執筆・編集作業に追われていた今年の春に、中国で鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が確認されました。私は改めて、人類はパンデミック(世界的大流行)を引き起こすインフルエンザウイルスの脅威から逃れられない宿命にあるように思いました。一方で、わが国では特別措置法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)が成立し、国としての備えが進んでいます。この辺りで、インフルエンザの実像について、最新の知見に基づいて体系化するということは意義のあることだと思いました。

―― 日本臨床内科医会では、毎年10月に、医師向けに「インフルエンザ診療マニュアル」をはこうしています。こちらと今回の本の位置づけはどうなりますか。

河合 インフルエンザ診療マニュアルはデータブックという役割があります。毎年10万部を超える部数になっていますが、前シーズンのさまざまなデータを解析し、その結果を新たなシーズンへ向けた留意点としてまとめているわけです。

 今回発行した「よくわかるインフルエンザのすべて」は、これまでの知識を体系化し整理したものです。インフルエンザを理解するための教科書と言ってもいいと思います。読者の対象も、インフルエンザ診療に携わる医師だけでなく、学校や行政、企業などの保健業務に携わる人、あるいは薬剤師や看護師などの医療機関や介護関連の仕事に就いている専門家らにも手に取って読んでもらいたいと思います。もちろん一般の人にもです。

―― 章立てをみると、「インフルエンザの基礎知識」「インフルエンザと他のウイルス感染症の診断」「インフルエンザの外来治療」「インフルエンザの合併症」「重症例と入院治療」「インフルエンザの伴う異常行動」などと幅広いテーマを取り上げています。

河合 「インフルエンザの予防と感染対策」もあります。「新たなインフルエンザの脅威と対策」も用意しました。

―― 「新たなインフルエンザの脅威と対策」は、トピックスとして、米国で監視が続く豚H3N2v、さきほどの中国の鳥H7N9を取り上げています。最近、カンボジアで再燃している鳥H5N1もあります。

よくわかるインフルエンザのすべて」(医薬ジャーナル社)
発行日:2013年8月20日
定価:本体2800円+税

河合 新たなインフルエンザの脅威と対策の中では、「新たなパンデミック対策」の項目を盛り込みました。日本での対策の進み具合、政府が発表した新型インフルエンザ対策行動計画についても解説しています。

―― 最新知見を網羅という点では、幅広く、それぞれがコンパクトにまとまっているという印象です。

河合 小児の重症例の対策や最近改訂された学校保健安全法施行規則の解釈などについては、川崎医科大学小児科の中野貴司氏ならびに田中孝明氏にも執筆していただきました。

―― 園児や児童がインフルエンザに罹ったときは、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」学校を休むこととされました。この出席停止期間については、「解熱した後2日を経過するまで」の日数の数え方などに混乱がありました。

河合 学校保健安全法施行規則のただし書きでは、医師が病状から感染の恐れがないと判断した場合は、定められた日数を待たなくても登校は可能です。この辺りを含めて、オリジナルの図表を駆使して解説していただきました。

 この本を多くの人に読んでもらうことで、今後のインフルエンザ対策に少しでも貢献できればと思います。


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