今冬のインフルエンザ流行はどうなるのか――。南半球の流行状況をみると、オーストラリアなどでは昨シーズン同様、H3N2亜型とB型の混合流行になっている。また、姿を消したかの感のあるH1N1pdm09の感染も散発的に発生しており、北半球で何が流行株の主流になるのかは予測しがたい状況だ。一方で、新たな脅威として中国で今春に確認された鳥インフルエンザA(H7N9)が浮上している。鳥インフルエンザA(H5N1)は依然致死率が高く、カンボジアで再燃しているのが気がかりだ。インフルエンザから離れると医療関係者の感染者が多い新コロナウイルスMERS-CoVも忘れてはならない。

 真っ先に留意すべき点にあげられるのが、中国で今春に確認された鳥インフルエンザA(H7N9)の脅威だ。タミフルなどの抗インフルエンザ薬に対する耐性株が見つかっていることが最大の理由だ。現在、ヒト-ヒト感染が容易に起こすような事態にはないが、ひとたびヒト化したウイルスが出現すると、仮に耐性株であった場合には、人類は有効な治療薬を持たないままにH7N9ウイルスに立ち向かわざるを得なくなる。こうした脅威に備えるため、厚生労働省はワクチン研究に乗り出したが、その成果が得られる前に、H7N9のパンデミック化が起こってしまう可能性もある。

 鳥H7N9亜型ウイルスのヒト感染例は、中国(台湾)で134例が確認されている。うち45人が死亡し、致死率は33.6%にのぼる(8月31日、表1、図1)。

表1 今冬の脅威となるのはどのウイルスなのか

注視すべきウイルス感染者数死亡致死率確認日留意点
鳥H7N91344533.6%中国CDC 8/31抗インフルエンザ薬に対する耐性株の存在
鳥H5N163737859.3WHO 8/29致死率が依然として高い
豚H3N2v33910.3%CDC 9/6 
新コロナウイルスMERS-CoV1145447.4%WHO 9/7医療関係者の感染者が目立つ

図1 鳥H7N9亜型ウイルスのヒト感染例の推移(中国CDCのデータから作成)[クリックで拡大]

 鳥H7N9亜型よりもパンデミックを起こす可能性が低いと推定された鳥H5N1亜型だが、依然として致死率は高くなっている。2013年8月29日のWHOのまとめをみると、2003年からこれまでに637人の感染例が確認され、378人が死亡している。致死率は59.3%に上る(表1、図2)。

 注目点は、カンボジアで再燃していることだ。2013年に入ってから8月末までに、17人の感染者が確認され10人が死亡している。カンボジアでは2005年に4例確認されて以降、毎年のように感染者が出ていたが、2013年にはじめて二桁にのってしまった。なぜ再燃したのか。特にウイルスに変化があるのかなど、検討すべき点は多い。

図2 鳥H5N1亜型ウイルスのヒト感染例の推移(WHOのデータから作成)[クリックで拡大]

 このほか米国で監視が続いているH3N2vウイルスについては、今夏は昨年ほどの大流行は見られていない。9月6日現在、2011年以降、これまでに339例が確認されている。死亡は1例のみにとどまっている。

 インフルエンザを離れると、中東を中心に広がっている新コロナウイルスMERS-CoVも脅威の1つだ。これまでに114例が確認され、54人が死亡している。致死率は47.4%と表1にあげたウイルスの中では、鳥H5N1亜型に次ぐ高さになっている。

 医療関係者の感染者が多いという点で脅威とする理由に十分だが、今年の5月以降、感染確認例の報告が相次いでいる点も見逃せない(図3)。5月にサウジアラビアで集団発生があったことが背景にある。最近になって、無症候性の事例が見つかっている点も注目すべきだ。また、確定患者や疑い患者の濃厚接触者の中に限定的であるものの地域内感染が見られており、上記のウイルスよりもヒト化へのステップを踏みこんでいる印象がある。

 世界中を多くの人が行き交うグローバル化の時代にあって、いつまでも「地域内感染」にとどまるとは考えにくい。地域外へ拡大した場合を想定し、今から対策を練っておくことが必要だろう。

図3 MERS-CoV感染例の推移(WHOのデータから作成)[クリックで拡大]

■参考情報
インフルエンザA(H7N9)特集ページ(国立感染症研究所)
中国・台湾で発生している鳥インフルエンザA(H7N9)について(厚生労働省検疫所)
鳥インフルエンザ(H5N1)とは?(厚生労働省)
鳥インフルエンザA(H5N1)に感染した患者の発生状況について(厚生労働省検疫所)
MERSコロナウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応(国立感染症研究所)
中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)の発生状況について(厚生労働省検疫所)


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