2012/13シーズン・インフルエンザ治療・レビュー調査の結果について、インフルエンザ診療の専門家のコメントを紹介する。今回は九州大学先端医療イノベーションセンター臨床試験部門長の池松秀之氏(特任教授)に読み解いてもらった。


池松秀之氏

 リレンザ、タミフル、イナビル、ラピアクタの4剤の使用が定着し、その使い分けについて考慮されるようになってきた様子がよく分かる調査結果であると思われる。今回のレビューで、使用状況は2011/12と同様にタミフルが半数以上を占めているが、イナビルも多く使用されており、タミフル中心の使用から他の薬剤が治療に取り入れられてきている状況が示されている。

 治療薬剤の選択基準では、リレンザとタミフルでは使用実績が主要な点となっている。一方、ラピアクタとイナビルでは当然と思われるが、1回で済むことがポイントとなっている。今回の調査では1回の投薬で済むという特徴がある程度支持されていることがうかがわれる。

 前年度からの変化で目立っているのは、患者の重症度(高熱、肺炎など)を気にかける事項としてあげる医師が多かった点であろう。入院患者でラピアクタが多く使用されており、おそらく重症と判断された症例にはラビアクタを選択した医師が多かったのではないかと思われる。

 2011/12調査では耐性ウイルスの出現が高い割合で気にかける事項となっていた(図1)が、今回その割合は減っている(図2)。タミフルに耐性と呼ばれていたH275Y変異H1N1ウイルスや、一部で耐性変異が報告されたH1N1pdm09の流行はみられなくなったことより、耐性ウイルス出現に対する関心が薄れているようである。再びH1N1の流行が起こることは充分考えられるため、H275Y変異に関連したタミフル、ラピアクタの感受性低下(耐性)については注意が必要と思われる。また、流行しているウイルスのタイプへの関心が低下しているが、これも流行の大部分がH3N2であったことが反映されていると思われる。リレンザ治療例で二峰性発熱が少なかったと最近報告がされているが、6.6%にその点が選択する際に気にかける事項として挙げられていた。インフルエンザにかかわる新しい情報に対して臨床家の関心の高いことが現れていると思う。

図1 抗インフルエンザ薬を選択する際に気にかける事項は(2012年調査。n=794、複数回答)

図2 抗インフルエンザ薬を選択する際に気にかける事項は(2013年調査。%、n=879、複数回答)

 今期の抗インフルエンザ薬の使い分けにおいては、患者の重症度を含む状態に応じた選択が行われると思われる。肺炎に対して、局所で高濃度となる吸入薬のメリットがあるのかは、大切なポイントで、今後検証が進められることが望まれる。また、耐性ウイルスが出現するかは重要なポイントとなると思われる。昨年、学校保健安全法施行規則の一部改正に関連して、治療後のウイルス残存への関心が高まっていた。各薬剤におけるウイルス残存に関するデータが明らかにされれば、それが今後の薬剤の選択に影響を与えることが予測される。