新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野のIsoldeC.Dapat氏

 2011/12年シーズンにおけるインフルエンザは、A/H3N2(香港型)とB型の混合流行で、A香港型はヘマグルチニン(HA)蛋白の遺伝子変異が進み、2011/12年シーズンのワクチン株とは抗原的にもやや異なるウイルスが流行したものの、2012/13年シーズンのワクチンとは一致していたこと、B型はVictoria系統株と山形系統株の混合流行が見られ、山形系統においては今シーズンのワクチン株と同一の抗原性を持つ株が増えたことが分かった。新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野のIsoldeC.Dapat氏、齋藤玲子氏らが、第60回日本ウイルス学会学術集会(11月13〜15日、開催地:大阪市)で報告した。

 インフルエンザウイルスは1本鎖RNAウイルスであり、遺伝子変異を頻繁に起こし、それに伴って抗原性も変化する。このため、宿主免疫を逃れて、成人にも繰り返し感染することになる。したがって、インフルエンザのコントロールにおいては、国内外の流行株の特性を常にモニターする必要がある。また、サーベイランスの結果に基づいて、ワクチン株の見直しまたは変更を検討することも必要となる。

 Dapat氏らは今回、8都道府県(北海道、新潟、群馬、東京、京都、大阪、兵庫、長崎)の診療所をインフルエンザ症状で受診した患者の臨床検体よりインフルエンザウイルスを分離・培養し、遺伝的特性を検討した。検体総数は1393検体で、インフルエンザ陽性は944検体。

 まず、ウイルスの型・亜型を調べたところ、A香港型519株(55%)、B型425株(45%)と、ほぼ半々に分かれた。B型はVictoria系統と山形系統に分かれるが、それぞれ382株(B型全体の90%)、43株(同10%)認められた。A/H1N1pdm09はまったく検出されなかった。なお、A香港型とB型の比率やB型の系統別比率は、都道府県による差が大きかった。A型の比率は大阪(100%)、兵庫(98%)、北海道(85%)などで高く、B型の比率は新潟(75%)や群馬(70%)で高かった。また、B型においては、北海道(33%)や群馬(37%)でVictoria系統の比率が低く、山形系統の比率が高かった。

 次に、各型の分離株数の推移を見ると、A香港型の立ち上がりが最も早く、2012年第3週がピークであった。その後、B型、特にVictoria系統株が増え始め、第5〜7週でA香港型を上回った。山形系統株は少ないながらも、第3週頃から持続的に検出された。B型としては最近、Victoria系統株の流行が認められていたが、2011/12年シーズンは山形系統株との混合流行が特徴的と考えられた。

 さらに、HAおよびノイラミニダーゼ(NA)の遺伝子系統樹解析を行うと、A香港型では、2011/12年シーズンのワクチン株に対して、実際に流行した株では遺伝子変異が進み、系統樹上やや離れた株となり、抗原性も異なっていた。しかし、今シーズンのワクチン株と抗原性は同じであった。次の流行株を示唆する季節はずれの9月に得た株を調べると、ワクチン株とのずれは大きくなかったことから「今シーズンのワクチン株でおそらくカバーできるのではないかと考えられた」(齋藤氏)。

 B型においては山形系統で、抗原性が2011/12年シーズンのワクチン株とは異なるが、今シーズンのワクチン株(B/Wisconsin/01/2010など)を含むクレード3ウイルスとは同一のクレード2のウイルスが増えていた。山形系統株は、昨シーズンまでほとんど認められなかったことからも、2012/13年シーズンに流行する可能性が高いと推測された。