新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野の近藤大貴氏

 2009/10年〜2011/12年の3シーズンに、インフルエンザ症状で全国9都道府県の医療機関を受診した患者の臨床分離株を調べたところ、ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬に対する感受性低下につながる可能性のある新しいアミノ酸変異が検出されたことが分かった。新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野の近藤大貴氏、齋藤玲子氏らが、第60回日本ウイルス学会学術集会(11月13〜15日、開催地:大阪市)で報告した。初診時検体におけるA/H1N1pdm09のタミフル耐性H274Y(N2表記法、以下同)変異株の検出率が上昇する傾向も認められたという。

 近藤氏らは、2009/10年〜2011/12年の3シーズンに、インフルエンザ症状で全国9都道府県の協力医療機関を受診した患者(初診3288例、再診221例、再々診1例)の臨床検体を用いて、耐性状況を検討した。検体から分離、培養した初診2627株、再診67株、再々診1株について、型・亜型を判定し、H274Y変異を検出。H274Y変異を持つ株と持たない株のランダム抽出株において、薬剤感受性試験(IC50値測定)およびNA遺伝子のシークエンス解析を行った。IC50値が75パーセンタイル+四分位範囲の3倍を超えたものをはずれ値、平均IC50値の10倍を超えたものを高度耐性とした。

 各シーズンの型・亜型別の分離株数は、2009/10年がH1N1pdm09のみで初診601株、再診10株、2010/11年はH1N1pdm09がそれぞれ414株、8株、H3N2が524株、4株、B型が33株、1株、2011/12年はH3N2が454株、25株、B型が414株、9株だった。

 まず、H1N1pdm09について、初診時検体分離株の各NA阻害薬に対するIC50値の分布を見ると、2009/10年シーズンに57株中2株がはずれ値を示した。うち1株はタミフルに対する軽度のはずれ値で、M241I変異が認められた。ほか1株は4薬すべてに対する軽度のはずれ値で、I222T変異が認められた。アミノ酸222位は、活性中心の枠組み部位で、疎水性ポケット形成にかかわる部位であるため、I222T変異により、側鎖がメチル基からヒドロキシ基に変わり、疎水性が低下し、耐性を示す可能性があると考えられた。2010〜2011シーズンでは、60株中5株がはずれ値を示した。うち2株はタミフルとラピアクタに対する高度耐性で、H274Y変異が認められた。また、1株はリレンザに対する軽度のはずれ値で、P120L変異、N221D変異が認められた。アミノ酸120位と221位は、それぞれ119位と222位における活性中心の枠組み部位のアミノ酸近傍に位置するため、P120L変異、N221D変異はIC50値の上昇につながる可能性がある新しいアミノ酸変異と考えられた。

 シーズンの初診時分離株全体におけるH1N1pdm09のH274Y変異株の出現は、2009/10年には見られなかったが、2010/11年には414株中2株(0.48%)とわずかながら上昇が認められた。

 また、2009/10年において、初診時と再診時のIC50値を比較した6件中1件(17%)でタミフル治療後にH274Y変異が認められ、タミフルに対するIC50値は440nM、ラピアクタに対するIC50値は31nMまで上昇していた。リレンザ、イナビルに対するIC50値の上昇は見られなかった。2010/11年には、タミフル治療後に5件中2件(40%)でH274Y変異が認められ、うち1件ではタミフルに対するIC50値が387nM、ペラミビル対するIC50値が30nMに上昇していた。ほか1件は、H274Y変異株と感受性株の混合株で、IC50値の上昇は認められなかった。リレンザ、イナビルに対するIC50値は上昇していなかった。なお、治療後のH274Y変異検出率は、再診時の検体数が少なかったために高く出たと推測された。

 次に、H3N2について、初診時検体分離株のIC50値を見ると、2010/11年シーズンでは59株中2株が軽度のはずれ値を示した。うち1株はタミフル、ほか1株はリレンザに対するはずれ値で、それぞれD151G変異、148T/I混合変異が認められた。2011/12年シーズンにも147株中9株が軽度のはずれ値を示し、D151G変異、D151N変異、148T/K混合変異などが認められた。初診時と再診時の比較は2011/12年シーズンに行ったが、治療後のIC50値上昇は認められなかった。

 B型では、2010/11年の初診時分離株18株中1株が軽度のはずれ値を示し、T43K変異が認められた。2011/12年では54株中1株がはずれ値を示したが、変異は認められなかった。また、治療後のIC50値上昇は、2010/11年、2011/12年とも認められなかった。

 今回の検討より、IC50値の上昇につながる可能性のある新しいアミノ酸変異が検出されたこと、初診時検体でH274Y変異を持つタミフル耐性株の検出率がわずかに増加したことが明らかにされた。近藤氏は「現在は、タミフル耐性H274Y変異を持つH1N1pdm09の検出率は低いが、H1N1(ソ連型)のように耐性変異株が流行する可能性がある」と述べ、薬剤耐性サーベイランス継続の必要性を強調した。