川崎医科大学小児科学教授の中野貴司氏

 2010/2011年、2011/2012年の2シーズンにおけるイナビルの有害事象を分析したところ、事故につながったり他人に危害を与えたりする可能性のある異常行動は、男性に多く、10歳代にピークがあり、投与日とその翌日に集中して発現していることなどが示された。11月24日から25日まで開催された第44回日本小児感染症学会総会・学術集会で、川崎医科大学小児科学教授の中野貴司氏らが発表した。

 小児のインフルエンザ患者に異常行動やせん妄などの精神神経系事象が多く報告され、ノイラミニダーゼ阻害薬との関連性が議論されている。

 そこで、2010年10月から販売が開始されたラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)の2シーズン(2010/2011年、2011/2012年)における異常行動・言動について検討した。

 第一三共が市販後に収集した有害事象の中から、異常行動・言動、および厚生労働省研究班の異常言動分類表に基づくカテゴリーA(自傷行為・他害行為)の発現数を調べた。

 その結果、副作用の総数は、2010/2011シーズン445例、2011/2012シーズン440例で、いずれのシーズンでも精神障害、胃腸障害、皮膚および皮下組織障害などが主な副作用だった。

 異常行動に関連する副作用について見てみると、2010/2011シーズンは全117例(重篤9例)で、主なものは異常行動76例、せん妄15例、幻覚12例。また、カテゴリーA(自傷行為・他害行為)は24例だった。

 2011/2012シーズンは、全128例(重篤15例)で、異常行動82例、せん妄13例、幻覚12例。カテゴリーAは32例だった。

 カテゴリーAの患者の性別を調べると、いずれのシーズンでも男性が多く、約7割を占めた(2010/2011シーズン男性71%、2011/2012シーズン男性72%)。

 カテゴリーAの患者の平均年齢は2010/2011シーズン9.88歳(中央値10)、2011/2012シーズン12.50歳(中央値11)で、小・中学生に集中していた。

 さらにカテゴリーAの患者の異常行動発現は、イナビル投与日(2010/2011シーズン75%、2011/2012シーズン78%)と2日目(2010/2011シーズン21%、2011/2012シーズン22%)に集中していた。

 2011/2012シーズンには、薬剤投与日の転落・死亡症例(B型インフルエンザの10歳代の男性)が1例報告された。この症例では過去にも、治療後に問題行動・言動があったことが確認されているという。

 中野氏は、「イナビルの異常行動・言動に関する副作用を検討したところ、事故につながったり他人に危害を加えたりする可能性のある異常行動は、『男性』、『10歳代』、『投与して2日以内』での発現が多かった。こうした異常行動・言動は、インフルエンザそのもので起こると考えられ、抗インフルエンザ薬投与の影響については明らかではない。ただし、過去に異常行動・言動の発現などのヒストリーのある患者については、慎重に投与すべきであろう。また、こうした副作用の発現は、発症後2日以内に起こっていることからも、未成年の患者を1人にせずに2日間は看病してあげることが、事故を未然に防ぐ上でも望ましいと考えられる」と話した。