九州大学先端医療イノベーションセンター臨床試験部門の池松秀之氏

 2010年9月に保険適用となった、最も新しいノイラミニダーゼ(NA)阻害薬であるイナビルは、AH3型、B型の患者、あるいは10歳未満、10歳以上の患者のいずれに対しても臨床的に有効であることが確認された。九州大学先端医療イノベーションセンター臨床試験部門の池松秀之氏らが、2011/12年シーズンにおける全国24施設のインフルエンザ患者約200例を対象に検討した結果。さらに、投与後に残存したウイルスにおける、イナビルを含むNA阻害薬4薬のIC50値は、AH3型、B型とも、投与前後で上昇が認められないことも分かった。同氏が、日本化学療法学会西日本支部総会/日本感染症学会中日本・西日本地方会学術集会(11月5〜7日、開催地:福岡市)で報告した。

 イナビルは、長時間作用型で1度の吸入で治療が完結する。また、耐性ウイルスはほとんど見られず、H275Y変異によるタミフル耐性ウイルスにも有効とされる。しかし、臨床効果に関する報告はまだ少ない。そこで池松氏らは、2011/12年シーズンのインフルエンザ患者に対する同薬の臨床効果、安全性を検討した。併せて、投与後残存ウイルスのIC50値の変化についても調べた。

 対象は、2011年11月〜2012年4月に、全国11都道府県の24施設において、迅速診断キット陽性となったA型またはB型インフルエンザ患者で、来院時の体温が37.5℃以上を示し、かつ他のウイルス、細菌などへの感染(二次感染含む)が認められないイナビル投与例。登録された235例から各評価基準を満たさない症例を除いた234例において安全性を、211例において臨床効果を、172例においてイナビル投与4〜6日目のウイルス残存率を、さらに52例において残存ウイルスのIC50値を検討した。

 有効性の評価症例211例の性別は男性103例(49%)、女性108例(51%)、年齢は10歳未満61例(29%)、10歳以上20歳未満80例(38%)、20歳以上70例33%、平均22.1歳。ウイルス型・亜型はAH3型190例(90%)、B型21例(10%)。来院時の体温は平均38.5℃。2011年9月以降のインフルエンザワクチン接種歴あり47%。イナビル投与までの時間は12時間以内32%、24時間以内71%、48時間以内98%だった。

 まず、イナビル投与から平熱(10歳未満37.4℃以下、10歳以上36.9℃以下)に解熱するまでの時間(解熱時間)の中央値は、AH3型33.0時間、B型50.0時間で、B型が長い傾向を示したが、有意差はなかった。AH3型症例の解熱時間中央値を年齢別に求めると、10歳未満23.0時間、10歳以上35.0時間で有意差はなかった。B型症例では、10歳未満69.0時間、10歳以上46.0時間と、10歳未満で長い傾向が見られたが、有意差はなかった。

 イナビル投与からインフルエンザ7症状(頭痛、筋肉または関節痛、疲労感、悪寒または発汗、鼻症状、喉の痛み、咳)がすべて消失、または軽度に改善するまでの時間(罹病時間)の中央値は、AH3型89.0時間、B型94.0時間で有意差はなかった。AH3型症例の罹病時間中央値を年齢別に求めると、10歳未満89.0時間、10歳以上91.0時間で有意差はなかった。B型症例では、10歳未満114.0時間、10歳以上77.0時間と、10歳未満で長い傾向が見られたが、有意差は認められなかった。

 副作用は、高揚感(ハイで寝付けない感じ)1例、軟便2例の計3例(1.3%)に認められたが、いずれも重篤でなく、容易に改善した。

 イナビル投与4〜6日目のウイルス残存率は、AH3型25.8%、B型70.6%で、B型において有意に高かった。AH型のウイルス残存率を年齢別に求めると、10歳未満39.5%、10歳以上2.5%で有意差はなかった。B型のウイルス残存率は、10歳未満80.0%、10歳以上57.1%と、10歳未満で高い傾向が見られたが、有意差はなかった。

 イナビル投与後に残存したウイルスについて、イナビル投与前後におけるNA阻害薬4薬のIC50値の変化を検討すると、AH3型、B型とも、4薬すべてでIC50値の上昇は認められなかった。

 以上より、池松氏は「イナビルは1度の吸入で、流行したAH3型とB型に、10歳未満でも10歳以上でも臨床的に有効であり、安全性にも問題はないと考えられた」とまとめた。