琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学の砂川智子氏

 日本は世界で唯一、インフルエンザ治療において4種のノイラミニダーゼ(NA)阻害薬が使用可能な国で、その治療成績や使い分け、供給予測に関するデータは海外からも大きく注目されている。沖縄県におけるインフルエンザ流行状況と抗インフルエンザ薬販売動向を調査した、琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学の砂川智子氏、藤田次郎氏らは、ここ数年、新薬発売や耐性株出現、流行ウイルスの型、老人保健施設での予防投与などを反映して、各NA阻害薬の売上高比率が大きく変化していることを、日本化学療法学会西日本支部総会/日本感染症学会中日本・西日本地方会学術集会(11月5〜7日、開催地:福岡市)で報告した。

 砂川氏らはまず、沖縄県における最近のインフルエンザ流行状況を調査した。沖縄県では夏季も、冬季より患者数は少ないものの、インフルエンザの流行を見ることがあるが、2009年も35週目をピークとする夏季の流行が認められた。また、パンデミックウイルス(H1N1pmd09)の流行が他の地域に先駆けて認められた。H1N1pmd09感染により人工呼吸器管理となった患者は、2009年8月中旬から2010年1月末にかけて計21例見られた。治療薬としては、約8割に相当する17例でタミフルが、ほか4例中3例にはリレンザが使用された。

 2011年1月にもH1N1pmd09によるインフルエンザ流行が認められた。人工呼吸器管理となった患者は、1月初めから2月初めにかけて16例見られ、このうちタミフルが使用されたのは半数の8例にとどまった。6例には、2010年1月発売のラピアクタが使用された。タミフルを使用した9歳女児では、治療終了後にタミフル耐性(H275Y)のH1N1pmd09ウイルスが検出された。

 さらに、各NA阻害薬の売上高の比率を調べると、2009年1月を中心とする流行期ではタミフルが64%、リレンザが36%であったが、2009/10年シーズンにはタミフルが70%に増え、リレンザは30%に減少した。イナビルが発売された2010/11年シーズンは、比率の変化がより顕著だった。すなわち、タミフル53%、イナビル37%、リレンザ8%、ラピアクタ2%となり、リレンザの使用が大きく減少し、イナビルの使用が急速に広がったことが分かった。

 こうした売上高比率の変化は、新薬発売、耐性株の出現に加え、流行したウイルスの型や予防投与によるところも大きいようだ。砂川氏らは、インフルエンザウイルス抗原検査による疫学調査を継続的に行っているが、夏季には主にB型ウイルスの流行を認めている。2012年もB型の流行が見られたが、その後、A型(H3N2)の流行が認められた。特に老健施設での流行が顕著だったため、予防投与が可能で、吸入薬のリレンザよりも高齢者のアドヒアランスが良好と考えられるタミフルが積極的に使用された模様だ。

 こうした流行状況を反映して、2012年1〜5月のNA阻害薬売上高比率はイナビルがトップで、B型に対する効果が乏しいとされるタミフルは2位となったのに対して、A型流行期も含めた2012年1〜9月においては、2011年と同様、タミフルがトップに返り咲いたと推測されたという。