わが国で使用できるノイラミニダーゼ阻害薬は現在4薬で、その中でも吸入薬であるのがイナビルリレンザだ。小児患者に使用した場合、効果や安全性に両者の違いはあるのか。公立南丹病院(京都府南丹市)の小児インフルエンザ患者を対象に、この2薬のランダム化比較試験を行い、その結果をPEDIAREICSに発表した同病院小児科の勝見良樹氏に話を聞いた。

公立南丹病院小児科の勝見良樹氏

―― 試験を行ったのは2011年の1月〜5月ということですが、背景や試験の目的についてお話いただけますか。

勝見 ご覧のとおり長閑な場所にある病院ですが、シーズンになるとたくさんの子どもたちがインフルエンザで来院します。ちょうど吸入薬のイナビルが発売されて、まだ市販後調査の結果が出ていなかったので、小児患者におけるイナビルとリレンザの効き方の違いなどを調べてなんらかの形で発信したいと思ったのです。解熱までの時間、下痢や嘔吐などの副作用、異常行動などについて検討してみることにしました。

―― 試験の方法は?

勝見 対象は、南丹病院の小児科の外来患者でインフルエンザの検査を実施してA型、またはB型と診断された小児218人でした。この中から受診時すでに48時間以上熱が続いている患者や喘息以外の基礎疾患のある患者、タミフルの処方を親御さんが希望する患者などを除外し、計112⼈をイナビル群(55⼈)とリレンザ群(57⼈)の2群に準無作為に振り分けて処方しました。

 患者の親御さんにアンケート用紙を渡し、熱が下がったタイミングや副作用などについて記入してもらい、後で返送してもらいました。アンケートが戻ってきた患者から、完全に吸入ができなかった例(イナビル群8人、リレンザ群7人)を除くなどし、最終的にイナビル群44人、リレンザ群41人について解析を行いました。

―― 結果についてお話ください。

勝見 患者の平均年齢はイナビル群10.3歳、リレンザ群9.68歳、治療前の熱の持続時間はイナビル群18.6時間、リレンザ群18.7時間で、いずれも有意差はありませんでした。そのほかの病歴などでも2群間で差は見られませんでした。

 解熱までの時間ですが、どちらの群でも約半数は36時間以内に解熱していて、解熱までの時間の中央値はイナビル群36時間、リレンザ群37時間と同様で、統計的にも有意差は見られませんでした(表1)。また、解熱した患者の割合も両群で同様の推移を示しました(図1)。

表1 イナビルとリレンザの解熱効果、副作用の発現数(出典:PEDIATRICS 2012;129,e1431-36)

図1 薬物治療開始後に解熱*した患者の割合の推移(PEDIATRICS 2012;129,e1431-36により作成)

 症例をインフルエンザA型とB型に分けて、イナビル群とリレンザ群の解熱までの時間(中央値)を比較したところ、A型ではイナビル群34時間、リレンザ群36時間、B型ではイナビル群47時間、リレンザ群42時間で、どちらの型でも2群間で有意な差はありませんでした。

 発症後の学校・園の欠席数(イナビル群3.40日、リレンザ群3.18日)にも差はありませんでした。

 消化器症状の発現率は、イナビル群20.5%、リレンザ群22.0%、異常行動の発現率はイナビル群6.80%、リレンザ群7.32%で、いずれも2群間で相違は見られませんでした。

―― 異常行動の内容はどのようなものだったのですか。

勝見 異常行動については両群で3例ずつ見られました。いずれも、意味のない動きや恐怖感を感じるといったもので、危険性の高い行動は見られず、2〜3時間で自然に治まりました。

―― 今回の解析では、効果、安全性のいずれについても、イナビルとリレンザは同様との結果が得られたということですね。

勝見 はい。小児の患者さんで検討したところ、そのような結果が得られたわけです。ただし、今回の試験では、サンプル数が少ないこと、また親御さんのアンケート記入に基づく解析であることなど、限界はあります。また、ランダム化についても、今回は診察室と診察時間で自動的に患者さんを2薬に振り分けたので、厳密なランダム化ではありません。

 今後、さらに症例数を増やしてもう一度検討してみたいと思っています。

―― 今回の結果を踏まえて、先生の処方に対するお考えをお聞かせください。

勝見 小児のインフルエンザの患者さんにノイラミニダーゼ阻害薬を処方する場合、まず吸入できない10歳未満の子どもであれば、タミフルを処方します。そして、吸入できる子どもであれば、1回の吸入で済むイナビルを処方しますね。簡便性という点で、私はそのように考えています。ただし、1回吸入のみとういうことは、つまり一発勝負ですから、吸入できないリスクもあるわけで、吸入ができる子かどうかをしっかり見極める必要がありますね。また親御さんの中には、本人への使用経験や日本における10年以上の歴史からタミフルやリレンザを希望されるケースもあります。各々の剤形・投与回数・適応年齢などを、表を用いてわかりやすく説明し、吸入できるかについては練習用デバイスを用いて実際に確かめることが大事であると思います。

■参考文献
・Yoshiki Katsumi,et al;Effect of a single inhalation of laninamivir octanoate in children with influenza.PEDIATRICS 2012;129,e1431-36