なぜこれだけの流行規模になってしまったのか。

 1つにはH3N2型の流行株が、ワクチンの対象とした株に比べて、45%もが変異株だったことが挙げられる。国立感染症研究所が3月に発表した抗原性解析の結果(1)によると、全国で分離されたH3N2型2168株のうち90株を抗原性解析したところ、ワクチン株のA/Victoria/210/2009に類似した代表株A/Niigata(新潟)/403/2009の抗血清に対する反応性でみると、ワクチン類似株は12.2%、わずかながら抗原性の変化が見られた株は42.2%だった。一方、変異株(HI価が8倍以上低下した株)は45.6%だった。

 感染研が同様の抗血清で集計した前シーズンの3〜8月までの結果に比べると、変異株は18.8%から45.6%へ大きく増加していた。

 一方、B型では、感染研によると、2011/12シーズンは国内ではB Victoria系統(B/Brisbane/60/2008ワクチン類似株)とB山形系統が混合流行しており、その比率は2:1だった。しかし、前シーズンは9:1であり、ワクチン株とは違う山形系統の割合が大きく増加していることを示していた。

 可能性の1つとしては、ワクチンが効きにくく、かつ抗体保有率の低いと考えられるH3N2型あるいはB型が流行の主流だったために、過去12シーズンで2番目に多い患者数という規模になったという仮説が成り立つ。

 ただし、これらのH3N2変異株あるいはB型山形系統株に対して、実際のワクチン効果がどれほどであったかは、今後の検討を待たなければならない。また、H3N2変異株あるいはB型山形系統株に対する抗体保有率についても、明らかにされなければならない。

 昨年11月、テーマサイト「パンデミックに挑む」では、「今シーズンも混合流行の兆し、ワクチン株との反応性が低いAH3亜型に注意」という記事を掲載した。その中で、流行する株の変化をキャッチして、警告を発した2報を紹介した。
 
 1報目は、三重県保健環境研究所からの報告だった。2011年10月下旬に同県で発生した集団感染例のウイルス株はAH3亜型で、「抗原解析の結果から今シーズンのインフルエンザワクチン株との反応性が低い抗原性であった」ことを報告していた。その上で、「AH3亜型インフルエンザウイルスの動向に警戒し、特に高齢者や乳幼児の重症化には注意が必要である」との警告を発したものだった。

 もう1つは、堺市衛生研究所からのB型の株が昨シーズンと違うという報告だった。同県では、第39週と第42週にインフルエンザB型山形系統株が相次いで分離された。2010/11シーズンはB型Victoria系統が優勢であったが、2011/12シーズンはB型山形系統株が先行したことに着目、その変化をいち早く報告したものだ。

 感染のピークを低くし、感染のピークまでの時間を延ばすという意味で、ワクチンの役割は大きい。ただワクチンとて万能ではない。咳エチケットや外出後の手洗い・うがい、適度な湿度の保持、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、人混みや繁華街への外出を控えるなどといった日ごろからの予防策の徹底が欠かせず、その必要性については繰り返し訴えていかなければならない。

■参考文献
1)国内のインフルエンザ流行株の抗原性、遺伝子系統樹解析および薬剤耐性株の検出状況―2011/12シーズン途中経過
2)今シーズンも混合流行の兆し、ワクチン株との反応性が低いAH3亜型に注意

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