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EBM:TOPICS

2009/11/26

TRITON-TIMI38

抗血小板薬治療中のステント留置例にPPIの併用は予後を悪化させず

Trial to Assess Improvement in Therapeutic Outcomes by Optimizing Platelet Inhibition with Prasugrel - Thrombolysis in Myocardial Infarction 38

関連ジャンル:
虚血性心疾患
血栓
消化器

 冠動脈ステント治療を受けた患者では、抗血小板薬投与による悪心消化不良などの消化器系の副作用を予防するためにプロトンポンプ阻害薬PPI)を処方されることがある。また、ステント留置とは関係なく、消化性潰瘍胃食道逆流症などの適応でPPIを処方されるステント留置患者も存在する。

 しかし、一部の患者で抗血小板薬クロピドグレルの抗血小板作用が減弱することが指摘されている。このことに関して2009年初に米食品医薬品局(FDA)は、その原因が遺伝的要因なのかPPIとの相互作用によるのか、両者が関与するのか、検討を始めることを明らかにしていた。

 クロピドグレルはプロドラッグで、体内でCYP2C19によって代謝されることで抗血小板作用を発揮する。これまでの研究で、PPIによってクロピドグレルの代謝が阻害されていることを示唆する研究などが報告されたことが背景にある。

 今年5月には、Society for CardiovascularAngiography and Interventions(SCAI)第32回学術集会において、冠動脈ステント治療後にクロピドグレルとPPIを併用した患者は、併用していない患者に比べ心血管イベントリスクが51%上昇したとするレトロスペクティブコホート研究The ClopidogrelMedco OutcomesStudyの結果が発表され、SCAIは「さらに研究が必要だが、PPIではなくH2ブロッカーまたは制酸剤の処方を考慮することを推奨する」という声明を発表していた。また、同時期、欧州医薬品局(EMEA)も、クロピドグレルを含む治療を受けている患者は特に必要としない限りはPPI併用を止めるよう声明を発表している。

 こうした状況の中、抗血小板薬の新薬prasugrelとクロピドグレルのPCI施行患者に対する心血管イベント抑制効果を比較したTRITON TIMI38試験(図1)において、prasugrelあるいはクロピドグレルとPPIの併用が心血管イベント発症に影響があったかどうかを後ろ向きに解析した結果が発表された。発表者は、米Brigham and Women's HospitalのM.O'Donoghue氏。

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 TRITON-TIMI38試験の対象患者は1万3608例だが、そのうち登録時にPPIを処方されていたのは4529例だった。処方されていたPPIは、Pantoprazole(日本では未承認)、オメプラゾールがそれぞれ4割と多くを占めていた(表1)。

 登録時の患者背景は、PPI処方群とPPI非処方群の間に有意差はなかったが、消化性潰瘍の既往歴は、非PPI群で4.1%だったのに対し、PPI群では9.7%と有意に多かった。

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イベント発症にPPIの影響なし

 TRITON-TIMI38試験のプライマリーエンドポイントである心血管死/心筋梗塞/脳卒中の発症について、クロピドグレル群、prasugrel群のそれぞれをさらにPPI投与群とPPI非投与群に分けて解析した結果、両抗血小板薬ともにPPI処方の有無でイベント発症率に有意差は見られなかった(PPI vs noPPIは、クロピドグレル群:調整ハザード比0.96 95%CI 0.82-1.12、prasugrel群:調整ハザード比0.99 95% CI 0.83-1.17、図2)。

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 期間中、PPIを継続して使用していた患者2814例を対象にした場合でもクロピドグレル群、prasugrel群ともにPPIの有無によってイベントの発症率には有意差は見られなかった。また、PPIの薬剤別に解析した結果でも差は見られなかった(表2)。

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 O'Donoghue氏は、PPIの使用はランダム化されておらず、フォローアップ期間中にPPIの処方開始や中止が行われていたという解析上の制限を指摘しつつ、「この試験ではPPIの併用は、心血管イベントの発症リスクの上昇には関与していなかった。チエノピリジン系抗血小板薬を投与された患者におけるPPI処方の回避の必要性を支持しないデータだ」と締めくくった。

 この発表のディスカッサントであるオーストリアWilhelminen病院のKurt Huber氏は、全ての患者が継続してPPIを処方されていない、後ろ向き解析だとしながらも、TRITONTIMI38試験はよく定義された患者が登録された、前向きランダム化試験であることから、今回の結果はこれまでのレジストリーやレトロスペクティブな結果よりも信頼できると指摘。その上で、「ステント留置術を受けた急性冠症候群患者の予後にはPPIは影響を与えないようだ。ただし、チエノピリジン系抗血小板薬とPPIの併用の安全性に関する前向きの検討は必要」と改めて指摘した。

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