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2009/9/2

J-HEALTH

ARB投与でGFRが回復すれば心血管イベントリスクが減少

Japan Hypertension Evaluation with AIIA Losartan Therapy

関連ジャンル:
慢性腎臓病(CKD)
高血圧

日本人の高血圧患者に対してARBを投与した観察研究のサブ解析の結果、糸球体濾過量で示される腎機能が低下した患者でもARB投与によって回復し、心血管イベントの発症リスクを下げられることが確認された。


イタリア・ミラノで開催されたWorld Congressof Nephrology2009でJ-HEALTHサブ解析結果を発表した東北大学内科病態学教授の伊藤貞嘉氏。「プライマリケア医のARB治療でGFRが回復していることが確認された意義は大きい」と語る

 「日本のプライマリケアで行われている降圧治療が腎機能を回復させていることが示された」─東北大学内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野教授の伊藤貞嘉氏は、5月に開催された世界腎臓会議2009(World Congress of Nephrology2009)で発表したJ-HEALTH試験のサブ解析結果をこう評価する。

 J-HEALTH試験は、プライマリケア医など4000人以上の医師が参加して未治療高血圧患者3万1048人を登録し、アンジオテンシン脅容体拮抗薬ARBロサルタン投与を開始して最長5年間追跡した多施設オープンラベル観察研究だ。ロサルタンの効果や安全性とともに血圧値と心血管イベントの関連を評価するのが目的だ。

 J-HELATHではこれまでに、日本人の脳卒中発症率は3.90/1000人・年、心筋梗塞の発症率は1.02/1000人・年であるといった結果が発表されている。今回、伊藤氏は、対象患者を登録時の腎機能(推算糸球体濾過量;eGFR)で分類して心血管イベントの発症率を比較したサブ解析の結果を発表した。

CKD患者の腎機能が回復

 J-HEALTHの対象患者のうち、追跡期間中に複数回の血清クレアチニンの測定ができた7629例を対象に絞って解析した。その結果、慢性腎臓病CKD)の診断基準となるeGFR値 60mL/min/1.73m2よりも高いeGFR値だった患者は3896例(以下、非CKD群)、60mL/min未満だった患者は3733例(以下、CKD群)だった。非CKD群の登録時のeGFRは74.7±15.8mL/minで、CKD群の登録時のeGFRは49.5±7.8mL/minだった。

 この2群の心血管イベントの発症率を比較した結果、CKD群は、非CKD群よりもイベント発症率が高かった(図1)。

 追跡期間中のeGFR 値の変動については、非CKD群は5年後に80.7mL/minへと上昇。CKD群は登録時の49.5mL/minから65.8mL/minと、非CKD群以上に上昇していることが明らかとなった(図2)。

 伊藤氏は、「従来、腎機能は低下してしまうと、治療しても大きく改善はしないと考えられてきた。しかし、今回の結果から、プライマリケア医が行っている降圧治療によって、日本人の腎機能が回復していることが明らかになった」と強調する。

腎機能が回復するとリスクは減少

 ただし、CKD群、非CKD群ともに対象者の3分の2はeGFRが上昇していたが、3分の1はeGFRが低下していたため、CKD群と非CKD群それぞれをさらに分類して心血管イベントの発症リスクを解析した。 その結果、CKD群において、eGFRが上昇した群に対して上昇しなかった群の相対リスクは1.55であることが明らかになった(図3左)。非CKD群においても、eGFRが上昇した群に対しeGFRが上昇しなかった群の心血管イベントの相対リスクは1.49であることが明らかになった(図3右)。

 ここで気になるのが、それぞれの群でGFRが上昇した症例としなかった症例の違いだが、現在、血圧の変化やARBの使用量、併用薬の種類、年齢や尿蛋白の有無などの要素を含めた解析を進めている段階だという。

 伊藤氏は、「まずはGFR、つまり腎機能を低下させない治療が重要だ。しかし、GFRが低下してしまっていても、回復させる治療を行えば心血管イベントの発症リスクは下げられるということも常に意識して診療にあたってほしい」と、腎保護診療の重要性を訴えた。

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