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EBM:TOPICS

2009/9/1

ORIENT

糖尿病性腎症に対するARBの腎保護効果は結論出ず

Olmesaetan Reducing Incidence of End stage renal disease in diabetic Nephropathy Trial

顕性腎症を伴う2型糖尿病においてARBを投与することで心血管イベントの発症を抑制できることが大規模試験で初めて確認された。しかし、主要評価項目である腎複合イベントの抑制効果は確認されず、その理由の解明が待たれる


5月21日から大阪で開催された第52回日本糖尿病学会でORIENT 試験の結果を発表した旭川医科大学内科学教授の羽田勝計氏

 顕性腎症を伴う2型糖尿病例においてARBが脳心血管イベントを抑制することが、世界で初めて二重盲検比較試験で示された。しかし、腎複合イベント抑制効果は確認されず、追加の解析が待たれる結果となった。

 この試験はARBであるオルメサルタンの腎症進展抑制効果を評価したORIENT試験。結果を、試験をとりまとめた3人の医師が“世界同時発表”して注目された。日本糖尿病学会で旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野教授の羽田勝計氏が、世界腎臓会議(World Congressof Nephrology 2009)で大阪大学附属病院腎臓内科教授の今井圓裕氏が、日本腎臓学会で東北大学内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野教授の伊藤貞嘉氏が発表した。

患者は高リスクだがコントロール良好

 ORIENT試験の対象者は、顕性蛋白尿を呈する2型糖尿病患者で、日本と香港の患者を登録。最終的に566例を解析対象とした。

 主要評価項目は、血清クレアチニン値(血清Cr値)の2倍化、末期腎不全(血清Cr値5.0mg/dL以上、透析、腎移植)、死亡という腎複合イベント。副次評価項目は、’梢慣豐品9腑ぅ戰鵐函平慣豐瓢爐簇鹵彁狎脳卒中、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症や心不全による入院、冠動脈・頸動脈・末梢血管の血行再建術施行、壊疸による下肢切断)尿蛋白の変化率腎機能の低下速度(血清Cr値の逆数[1/Cr]の推移で評価)─の3点だ。

 オルメサルタン10mgから開始し、最大40mgまで増量するオルメサルタン群(282例、以下OLM群)とプラセボ群(284例、以下P群)に割り付け、最長5年間追跡した。

 2群間の患者背景に、後述する心血管の既往症・合併症以外は有意な差はなく、平均収縮期血圧/平均拡張期血圧がOLM群141.7/77.8mmHg、P群が140.8/77.2mmHg で、HbA1c がOLM群7.11%、P群7.05%。ACE阻害薬の併用は2群とも患者の7割に達していた。「高血圧、糖尿病が非常によく管理された患者が対象だった」(羽田氏)。

 一方、既往症・合併症をみると、「非常にハイリスクな患者集団だったといえる」(伊藤氏)。心筋梗塞はOLM群3.9 %(P群1.8 %)、CABGもしくはPCIがOLM群8.5 %(P群2.8%)、心不全がOLM群4.3 %(P群3.2%)、末梢血管障害がOLM群11.7%(P群6.7 %)、脳卒中もしくはTIAがOLM群14.5%(P群14.8%)だった。OLM群で既往症・合併症が多いが、これは意図して割り付けたものではないという。

腎複合イベントは有意差なし

 結果は、尿蛋白や腎機能低下はOLM群で改善していたものの、主要評価項目である腎複合イベントはOLM群とP群で有意差はみられなかった(ハザード比0.97、p=0.79)。

 副次評価項目である尿蛋白量の変化は、P群が増加していたのに対してOLM群は有意に減少していた。腎機能の低下速度もP群に対してOLM群では有意に低下しており、この差は一般的な透析導入の基準である血清Cr値8mg/dLに到達するまでの期間を1.4年間延長させることになるものだった。

 羽田氏は、「副次項目の尿蛋白や腎機能低下速度も抑制しているのに、なぜ主要評価項目で有意差が出なかったかは、我々も是非知りたい点だ。現在、対象患者の治療経過中の各検査値などを加味したサブ解析を行っているところ」と語った。

脳心血管イベントは36%抑制

 副次評価項目である脳心血管複合イベントの発症率については、P群に対してOLM群では36%減少した(p=0.039)。

 伊藤氏は、「ORIENT試験のP群の脳心血管イベント発症率は、糖尿病性腎症に対するARBの腎保護効果を評価した過去の試験の実薬群よりも低かった。OLM群はそのP群より発症率を低下させた。OLM群もP群も7割にACE阻害薬が投与されていたが、オルメサルタンの追加でさらに発症リスクが下がった。今後のCKD診療を考える上で、非常に重要な結果だ」と語った。

 なお、試験期間中の血圧値は、OLM群の方が低く、収縮期血圧で平均2.8mmHg、拡張期血圧で平均1.8mmHgの有意な差がみられた。

 この血圧差について羽田氏は、「現状、降圧すればするほど腎保護効果が高まるとされている。OLM群で降圧達成度が高かったが、主要評価項目に差が付かなかったのには、何か理由があるかもしれない。ただし、脳心血管複合イベントに関しては、試験期間中の両群の血圧差を調整した解析結果でも有意差は保たれていた」と語った。

5月22日からイタリア・ミラノで開催されたWorld Congress of Nephrology 2009で試験結果を発表した大阪大学附属病院腎臓内科教授の今井圓裕氏

ORIENT試験が日常診療にもたらすもの

 現在までに発表されている範囲でのORIENT試験の結果から、日常診療に反映できる点は少なくとも2つある。

 1つは、顕性腎症を伴う2型糖尿病患者の脳心血管イベントのリスクをARB投与により下げられること。

 これまで、2型糖尿病性腎症患者に対するARBの腎保護効果を評価した試験として、Ca拮抗薬や利尿薬による治療群とARBロサルタン追加群を比較したRENAAL試験、Ca拮抗薬群とARBイルベサルタン群を比較したIDNT試験がある。いずれも主要評価項目である腎複合イベントの抑制効果は確認されたものの、副次評価項目である心血管イベント発生抑制効果については対照群と有意な差が確認されなかった。

 ORIENT試験では、ACE阻害薬を含む治療で血圧や血糖値がよく管理されている患者であっても、ARBを追加投与することで脳心血管イベントの発生を抑制した。「RA系を強力に抑制することの意義が確認されたことは、CKD診療において非常に重要な意味を持つだろう」と今井氏は強調する。

 2つ目は、腎機能低下が進んだ糖尿病性腎症患者に対して、ACE阻害薬とARBの併用は安全であると示されたことだ。

 昨年発表された、ARBテルミサルタン単独群、ACE阻害薬ラミプリル単独群、両剤の併用群の腎障害への効果を評価したONTARGET試験のサブ解析では、単独群は同等だったが、併用群は単独群に比べて腎複合イベントや急性腎不全の発症リスクが有意に高いことが示された。

 これに対し、ORIENT試験ではOLM群の7割がACE阻害薬とARBを併用していたが、腎複合イベントの発症率はプラセボ群と同等で、尿蛋白や腎機能の低下速度は遅くなった。そのため、「ACE阻害薬とARBの併用は安全で有効である可能性がある」と今井氏は指摘した。

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