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EBM:TOPICS

2009/8/26

JPAD

高齢糖尿病患者の心血管疾患を低用量アスピリンが32%抑制(AHA2008より)

Japanese primary Prevention of atherosclerosis with Aspirin for Diabetes

関連ジャンル:
循環器
虚血性心疾患
糖尿病

熊本大学循環器病態学教授の小川久雄氏

 2型糖尿病患者が動脈硬化性心血管イベントを発症するリスクは非糖尿病者の2〜4倍と高く、心筋梗塞や脳卒中の既往例と同等であることがこれまでの疫学研究から明らかになっている。

 このため、2型糖尿病患者に対しては動脈硬化性疾患の二次予防と同程度の厳格な治療が求められており、米国心臓協会(AHA)や米国糖尿病協会(ADA)は2型糖尿病患者における抗血小板薬アスピリンの予防的使用を推奨している。

 しかし、アスピリン投与のエビデンスは、大規模な二次予防試験のサブ解析から得られたものでしかなく、2型糖尿病に対する抗血小板療法の有用性を主目的として検証する無作為化試験が求められていた。

 AHA2008で新しい臨床試験の演題が集中する“Late Breaking Clinical Trials Session”で発表されたJPAD(Japanese primary Prevention of atherosclerosis with Aspirin for Diabetes)研究は、日本人でこの問題の解答を試みたもので、熊本大学循環器病態学教授の小川久雄氏が報告した。

一次評価項目で有意差なし、致死性イベントのリスクは減少
 JPAD研究は日本人の2型糖尿病患者を対象に、アスピリンの動脈硬化性疾患に対する一次予防効果の検証を目的に実施された多施設共同試験(163施設が参加)である。対象は年齢30〜85歳の、冠動脈疾患、脳血管障害を含む動脈硬化性疾患を発症していない2型糖尿病患者とした。抗血栓療法を必要とする心房細動患者、出血の危険性が高い重症胃十二指腸潰瘍患者、既に抗血栓薬を服用している患者は除外している。

 2002年12月〜2005年5月までの期間に2567例の患者を登録し、試験の条件に該当する被験者は2539例であった。2008年4月までフォローアップしている。

 被験者を、標準的な糖尿病治療に加えて、低用量アスピリンを投与する群(81または100mg/日、1262例)またはアスピリン非投与群(1277例)に無作為割付し、PROBE(Prospective、 Randomized、Open、Blinded-Endpoint)法により経過観察した。アスピリン投与群、アスピリン非投与群の患者背景はほぼ同等だった(図1)。

 有効性評価のための一次評価項目は心血管死、脳血管障害、急性冠症候群、末梢動脈疾患を含むすべての動脈硬化性心血管イベントとしている。観察期間(平均4.4年)におけるアスピリン投与群の一次評価項目(総心血管イベント)発生率はアスピリン非投与群に比べ20%低下したが、両群間に有意差は認められなかった(ハザード比0.80 95% CI:0.58-1.10、p=0.16)(図2)。

 しかし致死性心血管イベントの発生率はアスピリン投与群がアスピリン非投与群に比べ有意に低く(相対リスク減少率:90%、p=0.0037)、致死性イベントに対するアスピリンの有効性が示唆された。

65歳以上の高齢者のサブ解析では32%のリスク低下で有意差あり
 患者背景因子によるサブグループ解析では、年齢、性、高血圧合併の有無、脂質異常症合併の有無、喫煙歴に関して、それぞれの因子で層別化して総心血管イベントのリスクを比較した。

 これら背景因子のなかで有意な群間差が認められたのは、年齢により層別化した場合だった。65歳以上の高齢者では、アスピリンにより総心血管イベントのリスクが32%低下するという結果が得られた(ハザード比0.68 95% CI:0.46-0.99 p=0.047)(図3)。65才未満では、ハザード比1.0(95% CI:0.57-1.70)だった。

 なお、男性、女性、高血圧、正常血圧、脂質異常症、非脂質異常症、喫煙者(喫煙歴ありも含む)、非喫煙者のそれぞれのサブグループについて層別化した解析を行った場合、アスピリン投与群はアスピリン非投与群に比べて有意ではないものの、イベント発生リスクを低下させる傾向を示した。

脳出血や消化管出血はアスピリンの有無で有意差なし
 抗血小板療法では出血性障害の増加が懸念されるが、脳出血はアスピリン投与群で6例(うち死亡1例)、アスピリン非投与群で7例(うち死亡4例)発生した。このほかアスピリン投与群の4例が輸血を必要とする消化管出血を発症した。脳出血と重症消化管出血を合わせた出血性イベント発症例数はアスピリン投与群10例、アスピリン非投与群7例となるが、両群間に有意差は認められなかった。

 小川氏はこれらの結果にもとづき、「2型糖尿病患者の総心血管イベントに対するアスピリンの有効性に確証は得られなかったが、アスピリンが致死性イベントを著明に減少させ、かつ高齢者における総心血管イベントを有意に減少させたこと、また出血リスクの増加が認められなかったことから、日本人の2型糖尿病患者においても低用量アスピリンによる抗血小板療法の有用性が期待できる」と締めくくった。

(日経メディカル別冊)

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