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EBM:TOPICS

2009/8/26

I-PRESERVE

左室駆出率保持の心不全予後にイルベサルタン追加は影響与えず(AHA2008より)

Irbesartan in Heart Failure with Preserved Systolic Function Trial

関連ジャンル:
心不全

米Georgetown大学のPeter E. Carson氏

 心不全症状があるものの、左室駆出率が保持されている心不全(Heart Failure-Preserved Ejection Fraction:HF-PEF)の患者はどう治療すべきか――。駆出率45%以上で、6カ月以内の入院歴があるNYHA II〜IV度、他覚症状を有するIII度・IV度の患者4128例を対象に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)イルベサルタンの上乗せ効果を検討した大規模臨床試験I-PRESERVEの結果は、一次・二次評価項目ともにプラセボとの間で有意差が得られなかった。米Georgetown大学のPeter E. Carson氏が報告した。

有症状のHF-PEFを対象としたI-PRESERVE試験
 報告直後、壇上で英国Imperial CollegeのPhilip Poole-Wilson氏が思わずもらした「意外な結果」という発言が示すように、同試験に対する関係者の期待は大きかった。

 これまでにも、心不全の約半数を占めるとされ、日常臨床の場でも遭遇する頻度が高いHF-PEFを対象に、CHARM-Preserved(3023例)、PEP-CHF(850例)、DIG-PEF(988例)といった臨床試験が行われてきた。CHARM-PreservedはARBカンデサルタン、PEP-CHFはACE阻害薬ペリンドプリル、DIG-PEFはジゴキシンを用いたものだが、いずれも一次評価項目(それぞれ心血管死+心不全による入院、総死亡+心不全による入院、心不全による入院+心不全死)で有意差を示すには至らなかった。

 こうした中、HF-PEFを対象とした最大規模の試験としてI-PRESERVE(登録患者の平均駆出率59%)が実施された。

高齢・女性・高血圧が多いHF-PEF、一次・二次評価項目で有意差なし
 疫学データによれば、HF-PEFは高齢者・女性・高血圧患者に多い。I-PRESERVEの対象は、こうした疫学データに合致したreal worldの患者集団となっているのが特徴だ(図1)。患者は、イルベサルタン群2067例、プラセボ群2061例に無作為に割り付けられ(図2)、平均追跡期間は49.5カ月だった。

 一次評価項目は総死亡+プロトコールで設定された心血管系疾患による入院(心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、心室性・心房性不整脈)で、イベント数はイルベサルタン群742(36%)、プラセボ群763(37%)とイルベサルタン群で少なかったものの、両群間に有意差はなかった(図3)。二次評価項目(総死亡、心血管死、心不全死+心不全による入院、心血管死+心筋梗塞+脳卒中)についても同様の結果だった。

病態解明や治療薬選択などにつながる今後の解析に期待
 ディスカッサントとして登壇した米Mayo ClinicのMargaret Redfield氏は、「駆出率が低下した心不全と違いHF-PEFの進展にRA系が関与しているかどうかはなお不明」と口火を切った。続けて、これまでの観察研究や臨床試験と比較すると、I-PRESERVEは高齢高血圧患者が多いにもかかわらず、CHARMPreservedやPEP-CHFと同様、開始時の収縮期血圧が良好にコントロールされており、既に十分な基礎治療を受けていることが示唆されると指摘した。

 そして、I-PRESERVEを始めとした3試験の総死亡や心不全による入院の頻度が観察研究よりも少ないことにも注目(図4)。降圧治療が十分行われていれば、さらにRA系阻害薬を加えてもHF-PEFの進展抑制には大きな影響を与えないかもしれないとし、「HF-PEFの病態生理学は加齢の影響も相まって非常に複雑で、我々にはまだ多くのなすべき仕事がある」とコメントした。

 発表を聞いた大阪府立成人病センター総長の堀正二氏は、「高齢やリストアップ数11剤という服用薬剤の多さによるコンプライアンス不良が原因と思われる試験中断例が30%強と非常に多い。イルベサルタン投与が継続できた症例を対象としたperprotocol解析や、ACE阻害薬やスピロノラクトンなどイルベサルタン以外のRA系阻害薬を投与していない群を対象としたサブ解析を行えば良い結果が得られるかもしれない」と詳細な解析への期待を語った。

 EFが保持された心不全は拡張不全あるいは拡張期心不全(Diastolic Heart Failure:DHF)と呼ぶことも多いが、DHFとHF-PEFの病態は同じなのか、違うならどう違うのかさえ、明確なコンセンサスが得られておらず、標準治療も確立されていない。こうした中で実施されたI-PRESERVEから、病態の解明や治療薬選択など、研究の手掛かりにつながる今後の解析が待たれる。

(日経メディカル別冊)

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