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EBM:TOPICS

2009/8/26

JUPITER

CRP高値例の心血管疾患予防にロスバスタチンが有効(AHA2008より)

Justification for the Use of statins in Primary prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin

関連ジャンル:
循環器
臨床研究

米Brigham and Women's HospitalのPaul Ridker氏

 2001年に発表された、心血管疾患の既往がない男女を対象にしたスタチンの一次予防効果を評価する大規模試験AFCAPS/TexCAPSのサブグループ解析では、LDL-コレステロール(LDL-C)が低値であるものの、hsCRPが高値だった例で心血管イベントの発症率は脂質異常症患者と同程度であることが明らかとなった。

 さらにスタチンの投与により、心血管疾患の発症を有意に低下させることが示されていた(ハザード比0.6、95%CI:0.34-0.98)(Ridker et al. N Engl J Med 2001;344:1959-65)。

 このpost-hoc解析で得られたhsCRP高値例に対するスタチン治療の有用性を、大規模な前向き臨床試験で確認するために開始されたのがJUPITER試験だ。

 AHA2008で、米Brigham and Women's HospitalのPaul Ridker氏が結果を発表。LDL-C値が低値、あるいは正常であったhsCRP高値例に対してロスバスタチンを投与することで、心血管疾患の発症が44%低下することが明らかとなった。

対象は心血管疾患や糖尿病歴がなくLDL-C値正常だがCRP高値の患者
 プラセボ対照二重盲検無作為化試験JUPITERは、心血管疾患の既往あるいは糖尿病歴がないLDL-C<130mg/dL、hsCRP≧2mg/Lの男女(男性≧50歳、女性≧60歳)を対象とした、26カ国におよぶ多施設共同研究として行われた。

 対象者を、ロスバスタチン投与群(20mg/日、8901人)とプラセボ群(8901人)に無作為に割り付け、4年以上にわたって追跡調査した(中央値1.9年、最長5.0年)(図1)。

 各群に割り付けられた対象者の背景因子については、収縮期血圧134mmHg(124-145、両群同じ)、拡張期血圧80mmHg(75-87、両群同じ)、喫煙者の割合約16%(投与群15.7%、プラセボ群16.0%)、メタボリックシンドロームの割合約41%(投与群41.0%、プラセボ群41.8%)といずれの項目も両群ほぼ同じで、アスピリン使用例は両群で全く同じ(16.6%)だった。

 ロスバスタチン群のhsCRP値は4.2mg/L(2.8-7.1)、LDL-C は108mg/dL(94-119)、HDL-C は49mg/dL(40-60)、トリグリセライド118mg/L(85-169)、総コレステ
ロール186mg/dL(168-200)、血中グルコース94mg/dL(87-102)、HbA1cは5.7%(5.4-5.9)で、これらの値もプラセボ群とほぼ同様であった(図2)。

 一次評価項目は、心筋梗塞や不安定狭心症、脳卒中や心血管死の発生、ならびに冠動脈バイパス術(CABG)/経皮的冠動脈形成術(PTCA)の実施などからなる複合ポイント。二次評価項目は総死亡とした。

ロスバスタチン投与群で複合イベント発症率が44%低下
 試験の結果、一次評価項目は、ロスバスタチン投与群で8901例中142例に、プラセボ群で8901例中251例に確認された。

 プラセボ群に対するロスバスタチン投与群の累積発症率は44%減少した(ハザード比0.56、95% CI:0.46-0.69、p<0.00001)(図3)。

 この結果により、JUPITER試験の独立データ管理委員会はロスバスタチン投与によるメリットが明らかであるとして、試験を早期に終了させるよう勧告し、予定を待たずに試験は終了となった。

 NNT(Number Needed to Treat、患者1人がメリットを得るために同様に何人の患者に治療を行わなければならないかを示す指数)は25人だった。

 心筋梗塞、脳卒中あるいは心血管死だけを取り出した複合リスクは、ロスバスタチン投与群で47%減少していた(ハザード比0.53、95%CI:0.40-0.69、p<0.00001)。

 また、不安定狭心症による入院あるいはCABG/PTCAの実施でみても、投与群の方が47%減少した(ハザード比0.53、95%CI:0.40-0.70、p<0.00001)。

 二次評価項目である総死亡は、ロスバスタチン投与群で198例、プラセボ群で247例が確認され、投与群の方が20%減少という結果だった(ハザード比0.80、95%CI 0.67-0.97、p=0.02)。

有害事象は両群変わらず、医療経済的に有用と結論
 有害事象と安全性の評価指標について、癌による死亡は、ロスバスタチン投与群で35例(0.4%)、プラセボ群で58例(0.7%)。GFR(mL/min/1.73m2、12カ月時点)は投与群で中央値66.8(59.1-76.5)、プラセボ群で中央値66.6(58.8-76.2)と有意差が見られ(p=0.02)、HbA1c(%、24カ月時点)も投与群5.9(5.7-6.1)、プラセボ群5.8(5.6-6.1)(p=0.01)、医師による糖尿病発症の報告も投与群270件(3.0%)、プラセボ群216件(2.4%)と有意差がみられた(p=0.02)。

 脳出血、空腹時血糖値、糖尿、ミオパシー、筋力低下、発癌については有意差はみられなかった。

 これらの結果から、Ridker氏らは、「LDLコレステロールが低値であってもhsCRP高値例に対するロスバスタチン投与は有益である」と結論した。

 特に、今回の対象者は現状でスタチン治療の対象ではないものの、追跡期間中央値である約2年間で心筋梗塞、脳卒中あるいは心血管死が47%減少し、総死亡を20%減少させた点と、NNTが25人だった点を強調し、JUPITER試験で行われたスクリーニングや治療戦略は費用対効果に優れ、医療経済的にも有益と指摘した。

 安全性についても、プラセボ群に対してロスバスタチン群に重篤な有害事象の増加は見られず、HbA1cの値と医師による糖尿病発症の報告数が増加していた点については、他のスタチンを使った臨床試験と同様に微増だったとした。

(日経メディカル別冊)

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