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EBM:TOPICS

2008/10/6

UPLIFT study

チオトロピウムが呼吸機能の改善を4年間維持、安全性も再確認

Understanding Potential Long-term Impacts on Function with Tiotropium

関連ジャンル:
呼吸器
COPD
臨床研究

ベルギーLeuven大のMarc Decramer氏

 UPLIFT試験は、慢性閉塞性肺疾患COPDChronic Obstructive Pulmonary Disease)患者に長時間作用型吸入抗コリン薬であるチオトロピウム(商品名:スピリーバ)を4年間投与し、呼吸機能や死亡、急性増悪、QOLといった臨床上の様々な指標にどのような効果をもたらすか、すなわちCOPDの自然経過を変えることができるかを検討した大規模臨床試験である。この結果はベルギーLeuven大のMarc Decramer氏(写真)と米カリフォルニア大ロサンゼルス校のDonald P.Tashkin氏(写真)が第18回欧州呼吸器学会(ERS2008)で10月5日に発表し、呼吸機能やQOLの改善を4年間にわたり維持したことや、死亡率や急性増悪発生率などを有意に低下させたことなどを報告した。試験結果は同日、New England Journal of Medicineのオンライン版に掲載された(N Engl J Med. 2008;359:1543-1554)。

米カリフォルニア大ロサンゼルス校のDonald P. Tashkin氏

COPDにおける過去最大規模の臨床試験

 UPLIFT試験はプラセボ対照二重盲検比較試験で、日本を含む37カ国から5993人のCOPD患者を登録。この人数はCOPDに関する臨床試験として、過去最大規模の人数といえる。登録対象は、(1)臨床的にCOPDと診断、(2)40歳以上、(3)喫煙歴が10パック・年以上(禁煙者を含む)、(4)気管支拡張薬吸入後の1秒量(FEV1)が予測値の70%以下、(5)FEV1が努力肺活量(FVC)の70%以下、(6)呼吸機能検査が実施可能、(7)治療薬投与開始前の6週間、呼吸器疾患の治療が安定――などの条件を満たした患者。

 これらの患者をチオトロピウム投与群(2987人)あるいは対照群(3006人)のいずれかに無作為に割り付けた。チオトロピウム投与群はチオトロピウム18μgを毎朝決まった時間に、専用の吸入器であるハンディへラーを用いて吸入した。なお、対照群は試験薬である吸入抗コリン薬を除いてすべての薬物療法が認められている。実際、いずれの群においても、短時間作用型β2刺激薬、長時間作用型β2刺激薬、吸入ステロイドは治療期間中それぞれ7割以上の患者に投与されていた。

 登録患者の平均年齢は65±8歳、男性が4分の3を占め、喫煙者は30%。また、試験開始時における気管支拡張薬吸入後のFEV1は1.32±0.44Lで、これは予測値の48%だった。

 試験開始後のスパイロメトリー(呼吸機能検査)については、投与開始から1カ月後に行い、それ以降は6カ月後、12カ月後と、6カ月ごとに48カ月後まで実施し、呼吸機能の指標としてFEV1やFVC、肺活量(SVC)を測定した。QOLの評価にはSGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)を用い、6カ月ごとに実施した。

チオトロピウムによる呼吸機能の改善が4年間維持される

 解析の結果、チオトロピウム投与群は対照群に比べ、FEV1の改善を4年間にわたり有意に維持していた。これは、試験開始1カ月後から48カ月後までのどの時点においても、チオトロピウム投与群が対照群よりもFEV1の値が気管支拡張薬の投与前あるいは投与後のいずれにおいても、有意に大きかったことを意味する(p<0.0001)。試験期間を通じての両群の差は、気管支拡張薬投与前が87〜103mL、同薬投与後が47〜65mLであり、試験開始から1カ月後における改善幅を維持し続けた形だ。また、FEV1だけでなく、FVCにおいても同様に改善を4年間にわたって有意に維持していた(p<0.05)。

 しかし、プライマリーエンドポイントであったFEV1の低下率については、その抑制効果が認められなかった。無作為割り付け後に3回以上呼吸機能を測定できた患者データで検討したところ、気管支拡張薬投与前はチオトロピウム投与群の低下率が30mL/年、対照群のそれが30mL/年であり(p=0.95)、同薬投与後では順に40mL/年、42mL/年であった(p=0.21)。

 ただし、試験開始時に吸入ステロイドも長時間作用型β2刺激薬も処方されていなかった患者に限って、気管支拡張薬投与後のFEV1の低下率をみると、チオトロピウム投与群(787人)が40mL/年、対照群(764人)が47mL/年で、有意差が認められた(p=0.048)。

 また、世界的なガイドラインであるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)のステージ分類別に解析したところ、ステージII(中等症)の気管支拡張薬投与後のFEV1の低下率がチオトロピウム投与群(1218人)は43mL/年、対照群(1158人)は49mL/年で、有意に低下率を抑制していた(p=0.02)。一方、ステージIII(重症)とステージIV(最重症)では有意な差が認められなかった。

試験終了時のQOLが試験開始時より優れたまま

 QOL評価に用いたSGRQに関しては、6カ月後から48カ月後のいずれの時点においても、チオトロピウム投与群は対照群に比べ有意にスコアが低かった。すなわち、QOLが4年間にわたり有意に高い状態が続いていた。そのスコアの差は2.3〜3.3ユニットであり(p<0.0001)、FEV1などと同様に6カ月後における改善幅をほぼそのまま維持した形になっている。さらに、チオトロピウム投与群は4年後においても試験開始時のスコアよりも低かったが、対照群は3年後にそれを超えた。

 COPDの臨床経過を悪化させうる急性増悪に関しては、チオトロピウム投与群の方が14%有意に発生率は低かった(p<0.001)。また、急性増悪の日数は、チオトロピウム投与群が11%有意に少なかった(p<0.001)。さらに、入院に至る急性増悪のリスクも14%少ないという結果であった(p=0.002)。

全死亡は有意に減少、脳卒中や心筋梗塞は増えず

 全死亡率については、チオトロピウム投与群の方が有意に低かった。ITT(intent-to-treat)解析の場合、チオトロピウム投与群が14.4%、対照群が16.3%であり、ハザード比は0.87(95%信頼区間:0.76〜0.99)と有意差が認められた(p=0.034)。また、投薬期間中だけで(on-treatment)解析した場合は、チオトロピウム投与群が12.8%、対照群が13.7%で、ハザード比は0.84(95%信頼区間:0.73〜0.97)とやはり有意に低かった(p=0.016)。

 Journal of the American Medical Association(JAMA)に9月24日付けで掲載されたメタ解析では、吸入抗コリン薬により心血管死や心筋梗塞などが増えるとの結果が示されていた(JAMA. 2008;300:1439-1450)。しかし、今回のUPLIFT試験では、心血管死などにおいて全く異なるデータが報告された。さらに、上記のメタ解析で用いられた複合エンドポイント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中など)のデータでは、チオトロピウム投与群は100人年当たり2.25、対照群は同2.89で、チオトロピウム投与群の方が22%少なかった(95%信頼区間:0.65〜0.94)。

 また、米食品医薬品局(FDA)が今年3月に脳卒中リスクが増える可能性を指摘していた。しかし、今回のUPLIFT試験では、ITT解析でも投薬期間中だけの解析でも両群の差は確認されず、脳卒中リスクは否定された。さらに、心筋梗塞でも同じく両群間で差は認められなかった。

 なお、副作用については、大半のものでは両群間で有意差はなかった。ただし、チオトロピウム投与群で有意に多かったのが口渇と不眠であり、それらのリスク比は順に1.80(95%信頼区間:1.37〜2.36)、1.34(95%信頼区間:1.02〜1.75)であった。

 以上の結果を踏まえて、発表者らは、「プライマリーエンドポイントであるFEV1の低下抑制に対しては効果が得られなかったが、長時間作用型β2刺激薬や吸入ステロイドを処方されていなかったサブグループでは、低下抑制が認められた。また、FEV1やFVC、SVCの呼吸機能やQOLでは試験期間を通じて、その改善が継続して認められた。さらに、チオトロピウムによる治療は死亡率の減少をもたらすだけでなく、脳卒中や心筋梗塞を増やさないことが確認できた」と総括した。

(日経メディカル開発)

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