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EBM:TOPICS

2008/9/24

PERISCOPE

ピオグリタゾンが冠動脈プラークの進展を糖尿病治療薬として初めて抑制

Pioglitazone Effect on Regression of Intravascular Sonographic Coronary Obstruction Prospective Evaluation

関連ジャンル:
循環器
糖尿病

 糖尿病治療薬が冠動脈のアテローム硬化の進行を抑制したということを証明した初めてのエビデンス──。それがPERISCOPE試験である。

プラークの体積がピオグリタゾンで減少

 米国やカナダなど97施設で実施されたPERISCOPE試験は、インスリン抵抗性を改善するピオグリタゾン(商品名:アクトス)とインスリン分泌を促進するスルホニル尿素薬(SU薬)のグリメピリドで、冠動脈における動脈硬化の進展抑制作用を血管内超音波法(IVUS;intravascularultrasound)を用いて比較検討した無作為二重盲検比較試験である。2008年3月、第57回米国心臓病学会年次学術集会(ACC 2008)で成績が発表され、同時にJournal of the American Medical Association(JAMA)オンライン版にも掲載された。

 対象は、冠動脈造影で少なくとも1枝病変に20%以上の狭窄を認める2型糖尿病患者543例で、無作為にピオグリタゾン群またはグリメピリド群に割り付け、18カ月間の治療を行った。2型糖尿病患者の登録基準は、それまで糖尿病治療薬を服用していない場合はHbA1C 6.5〜10%、服用中の場合は同6.0〜9.0%。試験薬の投与量はピオグリタゾンが15〜45mg、グリメピリドが1〜4mgであり、16週間かけて最大用量まで増量した。主要評価項目は冠動脈における%プラーク体積(PAV;percent atheroma volume)の変化。ベースライン時、ならびに18カ月後にIVUSが実施できた症例は360例であった。

 解析の結果、試験期間中の血糖低下作用(HbA1C)は、24週時点まではグリメピリド群(181例)が大きかったが、以後逆転し、グリメピリド群では血糖低下作用が弱まったのに対し、ピオグリタゾン群(179例)ではその効果が持続した(p=0.03)(図1)。また、グリメピリド群では収縮期/拡張期血圧の上昇が認められたが(+2.3/+0.9 mmHg)、ピオグリタゾン群では上昇が有意に抑制された(+0.1/−0.9 mmHg)。LDL-コレステロール(LDL-C )の変化に差は認められなかったものの、HDL-コレステロール(HDL-C)の上昇率をはじめ、トリグリセライドの低下率、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)の低下率は、いずれもピオグリタゾン群の方が有意に大きかった(図2)。

 18カ月の治療の結果、主要評価項目である冠動脈における%プラーク体積は、グリメピリド群で0.73%増加したのに対し、ピオグリタゾン群では0.16%の減少が認められ、両群間に有意差が認められた(p=0.002)(図3)。この結果は、ピオグリタゾンの方がグリメピリドよりも、動脈硬化の進展を抑制する作用が強いことを示している。

 LDL-C値と%プラーク体積の変化に着目すると、グリメピリド群における%プラーク体積の増加は、これまでに実施されたIVUSを用いた臨床試験に当てはめると順当な結果である(図4)。しかし、ピオグリタゾン群ではLDL-C値から予想される%プラーク体積の変化を大きく下回る結果が出ており、ピオグリタゾンにLDL-C値とは独立したプラーク進展抑制作用があることが示唆された。

 なお、安全面については、心血管イベントの発現頻度やうっ血性心不全による入院件数などで、両群間に有意差はなかった。

動脈硬化の進展抑制を見据えた糖尿病治療

 ピオグリタゾンが冠動脈プラークの進展を抑制した理由について、社会保険小倉記念病院循環器科診療部長の横井宏佳氏は、(1)HDL-C値を上げたこと、(2)炎症を抑制したこと、(3)インスリン抵抗性を改善し、インスリン値を低下させたこと、(4)血圧を改善したこと──などを挙げ、「特にHDL-C値を上げたことが大きい」と指摘する。そして、「ほとんどの症例がスタチン、アスピリン、β遮断薬、ACE阻害薬/ARBなど、最適な薬物治療を受けているなかで、ピオグリタゾンが冠動脈プラークの進展を抑制した意義は大きい」と強調する。

 横井氏によれば、小倉記念病院で待機的PCI(冠動脈インターベンション)症例における糖代謝異常を調べたところ、256例中105人(41%)で糖尿病の既往があり、境界型の予備軍を含めると66%に達していた。冠動脈疾患の発症・再発に糖代謝がいかに深く関与しているかが分かる。

 「糖尿病患者の冠血管はびまん性病変を呈することが多く、冠動脈病変を有する糖尿病患者の予後は不良である。ピオグリタゾンを“血管保護薬”と位置付け、積極的に使用すべきだと考える。またメタボリックシンドロームを呈する糖尿病患者ではプラークの破綻が原因となる急性冠症候群(ACS)を来たしやすいことから、プラークの進展を抑制するピオグリタゾンをより早期の段階から投与すべきだ」と横井氏は話す。

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