新着一覧へ

EBM:TOPICS

2008/9/17

CARTER Study

RA系阻害薬とL/N型Ca拮抗薬の併用で腎疾患合併高血圧患者の蛋白尿を抑制

Cilnidipine versus Amlodipine Randomized Trial for Evaluation in Renal Disease

関連ジャンル:
循環器
高血圧

 降圧治療の普及により、我が国で死亡原因の第1位だった脳血管疾患は時代とともに急速に減少した。しかし、耐糖能異常、脂質異常、肥満を合併する高血圧患者が急激に増えている。そして、腎疾患を合併する高血圧患者も増加しており、相まって慢性腎臓病CKD)という新たな概念の普及活動により、腎疾患への早期介入の重要性が指摘されてきている。

 毎年3万人以上が新規導入となっている人工透析の原疾患をみても、絶対数は少ないものの、高血圧性腎硬化症による透析導入は増加の一途をたどっている。40歳以上の山形県高畠町住民2321人を対象に行われたTakahata Studyでは、微量アルブミン尿の頻度は13.7%と予想外に多く、加齢とともにその頻度は上昇していた。

 また、INSIGHT研究では、尿蛋白の存在は心筋梗塞の既往と同程度の心血管疾患発症リスクであることも示された。

 こうした背景の中、腎疾患合併高血圧患者に対して血圧を厳格にコントロールすることが推奨されており、降圧薬としては、腎機能の低下を抑制することが確認されているレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬が第1選択薬として使用されることが多くなった。しかし、血圧を目標値まで下げるには2〜3種類の降圧薬の併用が必要なのが現状であり、第2選択薬の候補として、降圧薬抵抗性の高血圧患者に対しても血圧を下げるジヒドロピリジン系のCa拮抗薬が挙げられる。だが、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の腎保護効果に関する報告からは必ずしも一致した見解が得られていなかった。

 この点について明確な回答を与えたのがCARTER試験であり、L型だけでなくN型Caチャネルも阻害するCa拮抗薬シルニジピン(商品名:アテレック)は、L型チャネルのみを阻害するアムロジピンよりも、RA系阻害薬による治療を受けている高血圧患者の腎機能障害を抑制する効果が高いことを示した。

尿蛋白/クレアチニン比は、シルニジピン群で有意に低い

 CARTER試験は、蛋白尿を有し、RA系阻害薬を既に服用している顕性蛋白尿合併高血圧患者におけるCa拮抗薬シルニジピンとアムロジピンの蛋白尿抑制効果を比較検討した多施設・オープンラベル・無作為化試験である。

 対象は、尿蛋白/クレアチニン比≧300mg/g、血清クレアチニン≦3.0mg/dLの高血圧患者339例。シルニジピン併用(5〜20mg/日、179例)群とアムロジピン併用(2.5〜7.5mg/日、160例)群の2群に無作為に割り付けた。主要評価項目は尿蛋白/クレアチニン比の変化で、主要な副次的評価項目は心血管系イベントおよび死亡とした。

 主な患者背景は、平均年齢がシルニジピン群59.9歳・アムロジピン群59.3歳、原因疾患では糖尿病性腎症がシルニジピン群39.1%・アムロジピン群36.9%、原発性腎疾患がシルニジピン群31.8%・アムロジピン群38.1%、高血圧性腎硬化症がシルニジピン群19.0%・アムロジピン群16.3%、平均血圧はシルニジピン群152.4/86.9mmHg・アムロジピン群152.4/88.0mmHg、尿蛋白/クレアチニン比はシルニジピン群1921mg/g・アムロジピン群1712mg/gで、両群間に有意差はなかった。また、ベースラインの服用薬剤は、表1の通りである。

 比較検討の結果、血圧はシルニジピン群が133.1/75.6mmHgへ、アムロジピン群が134.5/77.9mmHgへ低下し、両群間に有意差はなかった。

 主要評価項目の尿蛋白/クレアチニン比は、試験期間の最終月(12カ月目)で、シルニジピン群がアムロジピン群よりも有意に低かった(1308.6 mg/g 対 1881.1 mg/g、p<0.05、図1)。ベースラインからの変化率も、治療3カ月目以降はシルニジピン群で有意に低く、治療12カ月後ではシルニジピン群では減少していた(−14.4%)が、アムロジピン群では減少が認められず(+13.9%)、両群間に有意差が認められた(p<0.01)。

 また、血圧が130/85mmHg未満にコントロールされていたサブグループ解析では、シルニジピン群の方がアムロジピン群よりも尿蛋白は有意に減少し(p<0.05)、130/85mmHg以上のグループではシルニジピン群は尿蛋白を減少させたのに対し、アムロジピン群は増加させた(p<0.05)(図2)。

 なお、副次的評価項目では、心血管系イベントの発症率はアムロジピン群で高かったが、有意差を示すには症例数が十分ではなかった。

腎交感神経活動を抑制することで蛋白尿抑制効果を発揮

 「論文では示していないが、われわれは降圧目標の130/85mmHg未満にコントロールされていたサブグループにおいても、両群の降圧レベルが同等であったことを確認している。それにもかかわらず、シルニジピンの蛋白尿抑制効果はアムロジピンよりも優れていたことから、この効果は降圧作用以外の機序に基づくものと考えられる」。この試験を実施したグループの1人、東京大学大学院医学系研究科分子循環代謝病学准教授の安東克之氏は、こう指摘した上で次のように語る。

 「CKDでは交感神経亢進に基づく輸出細動脈収縮も糸球体高血圧の原因となり腎障害の進行を促進している。輸出細動脈にはL型Caチャネルが存在しないため、L型Ca拮抗薬はこの病態を改善できない。しかし、シルニジピンは、N型Caチャネルの阻害により腎交感神経活動を抑制し、輸出細動脈拡張による糸球体内圧低下を生じ、尿蛋白を減少させると考えられる。このためシルニジピンは高い蛋白尿抑制効果を示す。したがって、腎疾患合併高血圧患者におけるRA系阻害薬の併用薬としてCa拮抗薬を投与する場合、L/N型Ca拮抗薬が推奨されるべきだと思われる」。

(日経メディカル別冊)

関連記事

Information PR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師・医学生の不祥事報道を目にする度に… 東謙二の「“虎”の病院経営日記」 FBシェア数:53
  2. 70歳女性。咽頭痛 日経メディクイズ●救急 FBシェア数:1
  3. 意外と多いナースの更衣室の悩み 小林光恵の「ほのぼのティータイム」 FBシェア数:22
  4. 「102歳Asystole」に思うこと 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:287
  5. 医師免許を失う以外はたいしたリスクじゃない 鈴木裕介の「キャリア迷子」に捧げる処方箋 FBシェア数:0
  6. 子どもにとってトイレやうんちは諸刃の剣 田中由佳里の「ハラワタの診かた」 FBシェア数:90
  7. 麻疹集団感染、医療機関の受診者からも陽性者 パンデミックに挑む:トピックス FBシェア数:244
  8. 地域医療連携推進法人の運用ガイドライン決まる 制度の内容がほぼ確定、4月2日にも第1号認可か FBシェア数:8
  9. 昨年11月時点の7対1病床、半年間で6105床減 シリーズ◎2018診療・介護報酬同時改定 FBシェア数:8
  10. インフルエンザ脳症が58例に、6人死亡 インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:385