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EBM:TOPICS

2008/4/7

CHARM

慢性心不全による死亡・入院を抑制したARBカンデサルタン

Candesartan in Heart failure-Assessment of Reduction in mortality and Morbidity

関連ジャンル:
心疾患
臨床研究

 2005年に改訂されたACC/AHA慢性心不全治療ガイドラインで、慢性心不全(CHF)の初期から投与すべき治療薬として、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)が新たに加わった。この根拠の1つとなったのが、CHFにARBのカンデサルタン(商品名;ブロプレス)を投与したCHARM試験である。

 この試験の成績に基づき、2004年には欧州で、2005年には米国で、カンデサルタンは慢性心不全に対する効能を取得。日本でも2005年に国内で初めて、「ACE阻害薬の使用が適切でない軽症から中等症の慢性心不全患者」に対する適応を取得した。

左室収縮機能が正常な心不全の心血管死・入院リスクを14%減少

 CHARMプログラムは、3つの試験からなる。いずれも対象患者をカンデサルタン群とプラセボ群とに無作為に割り付け、カンデサルタン群は4mgまたは8mg/日で投与を開始、忍容性のある場合は2週間ごとに投与量を倍増し、32mg/日まで増量可とした。1次エンドポイントは心血管死+CHF悪化による入院である。

(1)CHARM-Alternative

 対象は、左室収縮機能が低下(左室駆出率[LVEF]≦40%)して、ACE阻害薬に忍容性のない患者。カンデサルタン群1013例(平均年齢66.3歳)、プラセボ群1015例(同66.8歳)の追跡期間中央値は33.7カ月。ACE阻害薬非忍容の主な理由は、咳(72%)、症候性低血圧(13%)、腎不全(12%)だった。

 結果を見ると、2次エンドポイントはカンデサルタン群334例(33.0%)、プラセボ群406例(40.0%)と、カンデサルタン投与により30%低下した(共変量補正後、以下同)。CHF悪化による入院だけを見ても、カンデサルタン群で少なかった。有害事象または臨床検査値異常のために試験薬を中止したのは、カンデサルタン群22%、プラセボ群19%だった。

(2)CHARM-Added

 対象はLVEF≦40%でACE阻害薬により治療されている患者。カンデサルタン群1276例とプラセボ群1272例の平均年齢はともに64歳。追跡期間中央値は41カ月だった。

 試験の結果、1次エンドポイントはカンデサルタン群483例(37.9%)、プラセボ群538例(42.3%)と、カンデサルタン投与により15%リスクが低下した。特にACE阻害薬+β遮断薬およびACE阻害薬を推奨量で投与した症例で、1次エンドポイントの発生リスクが低下した。心血管死、CHFによる入院それぞれについても、カンデサルタン群で有意に低下。有害事象または臨床検査値異常のために試験薬を中止したのは、カンデサルタン群24%、プラセボ群18%だった。

(3)CHARM-Preserved

 対象は、LVEFが>40%に保持された患者。カンデサルタン群1514例(平均年齢67.2歳)、プラセボ群1509例(同67.1歳)の追跡期間中央値は36.6カ月。

 1次エンドポイントはカンデサルタン群333例(22.0%)、プラセボ群366例(24.3%)と、カンデサルタン投与により14%リスクが低下した。心血管死は両群間で同等で、CHFの増悪による1回以上の入院、延べ入院回数はカンデサルタン群で少ない傾向にあった(図2)。有害事象または臨床検査値異常のために投与を中止したのは、カンデサルタン群18%、プラセボ群14%だった。

 厳密に言えば、「左室収縮機能が保たれた心不全」=「拡張不全」ではないが、CHARM-Preserved試験の対象には多くの拡張不全例が含まれていると考えられる。そのため同試験は、初めて拡張不全に対してARBの有効性を示唆したデータとしても注目されている。

 なお、上記3試験を統合したCHARM-Overallでは、1次エンドポイントの総死亡はカンデサルタン群886例(23.3%)に対してプラセボ群 945例(24.9%)と、カンデサルタン群で有意に低下した。心血管死+CHF悪化もカンデサルタン群1150例(30.2%)、プラセボ群1310例(34.5%)と、カンデサルタン群で有意に低下していた(図1)。

 また、CHARM試験ではカンデサルタン群全体でNYHA心機能分類の改善が得られた。ちなみにCHARM試験以前に行われたSTRETCH試験では、カンデサルタンが運動耐容能を向上させることが明らかになっている(図3)。

 自治医科大学医学部総合医学第1講座教授の百村伸一氏は「高血圧によって心肥大や虚血性心疾患が引き起こされ、心機能が低下し、さらに心不全へと至る。この一連の過程で関与するアンジオテンシンIIの働きを抑制することは、将来の心不全を予防する上でも重要だ」と話す。

 そして収縮不全と拡張不全をともに見過ごさないために、「プライマリケアでは心エコーをとるのは難しい面もあるが、息切れ、浮腫などの症状があって、高血圧、高齢者、糖尿病などの心不全危険因子の重積があり、血中BNPが上昇している場合には、迅速に専門医に紹介してほしい」(百村氏)。

 また、最近結果が発表されたCASE-J試験で、日本人高血圧患者の心血管系イベント発症の大きなリスクとなるのが腎機能低下であることが判明したことにも触れ、「心・腎の保護効果を有するARBを有効に用いることが大切」と指摘した。

(日経メディカル別冊)

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