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EBM:TOPICS

2008/4/7

J-HEALTH

日本人3万例で確認されたARBロサルタンの降圧効果と安全性

Japan Hypertension Evaluation with AIIA Losartan Therapy

関連ジャンル:
心疾患
臨床研究

 日本でアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)が発売されたのは1998年だが、日本人におけるARBの安全性や効果について明確に示したデータはなかった。

 2000年にスタートした国内最大規模の前向き観察コホート研究J-HEALTHは、ARBロサルタン(商品名;ニューロタン)の長期投与による有効性・安全性、降圧治療中の血圧値と心血管系イベントの関連性を検討するため実施され、2006年10月、第21回国際高血圧学会で解析結果が発表された。

 J-HEALTHの対象は調査開始前1カ月以内に降圧薬を服用していない成人の高血圧症例。3万例という膨大な人数が登録された。

 ロサルタン25〜50mg/日から投与を開始し、100mg/日まで増量可能とした。原則試験開始3カ月まで、ロサルタン単剤のみによる治療を行い、降圧が不十分な場合には他の降圧薬を併用した。

 平均観察期間は3年。エンドポイントは、脳卒中、心臓突然死を含む心筋梗塞、脳卒中+心筋梗塞である。

 登録患者3万1048例中、男性1万3737例、女性1万7311例、平均年齢62.4歳、平均血圧165.3/94.3mmHg。合併症は高脂血症 38.5%、糖尿病13.1%、心血管系疾患の既往は8.0%。最終的な有効性解析対象は2万6512例(ロサルタン単剤59%、他剤併用41%、ロサルタン平均投与量47mg/日)。

投与前血圧値が高いほどロサルタンの降圧効果は大きい

 解析の結果、随時血圧は収縮期、拡張期血圧ともに試験開始3カ月までに良好な降圧効果が得られ、60カ月後も136.9/79.2 mmHgにコントロールされていた。また、ロサルタン投与による随時血圧の降下度は、投与前血圧値が高いほど大きく、中等度(収縮期血圧160〜170mmHg)で20〜30mmHg低下させ、単剤でも良好な血圧コントロールが得られた(図1)。副作用の発現頻度は3.5%(3万1048例中1101例)。主な副作用は、目まい(0.31%)、肝機能異常(0.2%)、頭痛(0.16%)などであった。

心血管系イベント発生率は140/85mmHg以上で上昇

 エンドポイントである脳卒中と心筋梗塞の発生率(/千人・年)は、それぞれ3.90、1.02で、久山町研究の第3集団の結果と同程度であった。

 心血管系イベント発生率と血圧値との関係を130/75mmHg未満を基準として検討すると、収縮期血圧は140mmHg以上、拡張期血圧は85mmHg以上で、心血管系イベント、特に脳卒中の発生率に有意な上昇が認められた(図2)。

 J-HEALTHの登録症例には85歳以上の超高齢者も含まれていた。その超高齢者の心血管系イベント発生率を、血圧コントロール良好群(140/90mmHg未満、310例)と、不良群(140/90mmHg以上、382例)とに分けて比較すると、不良群での心血管系イベント発生率は良好群よりも有意に高く、85歳以上でも血圧をコントロールすれば、心血管系イベントを抑制できることが示唆された。

 糖尿病合併例と非合併例における心血管系イベント発生と血圧の関係も解析された。非糖尿病合併例の血圧130/75mmHg未満を基準とすると、心血管系イベント発生率は、非糖尿病合併例では140/85mmHg以上で有意に上昇したが、糖尿病合併例では既に130/85mmHg以上から有意に上昇することが分かった。

ロサルタンによる尿酸値の低下、尿蛋白の減少を改めて実証

 ロサルタンはARBの中で唯一、尿酸低下作用を有することが知られている。J-HEALTHでは、登録時の尿酸値が7.0mg/dL以上で尿酸低下薬を投与されていない症例において、ロサルタン投与前の平均7.61mg/dLが投与60カ月後は6.26mg/dLまで低下。尿酸低下薬投与例でも尿酸値が低下しており、ロサルタンの尿酸低下作用が臨床的に改めて裏付けられた。

 また、糖尿病合併例について尿蛋白と血清クレアチニン値の変化を調べたところ、尿蛋白の出現頻度はロサルタン投与後、有意に低下。血清クレアチニン値に上昇傾向は認められなかった。こうした尿蛋白減少、血清クレアチニン値の維持は、非糖尿病例でも認められた。

 同研究の解析結果を発表した国立循環器病センター内科脳血管部門部長の成冨博章氏は、「ロサルタン投与による尿酸値の低下、尿蛋白の減少は、心血管系イベントの発症予防に寄与するものと考えられる」と指摘する。

患者のコンプライアンス維持に家庭血圧測定は重要

 J-HEALTH の特徴の1つは、家庭血圧を約4600例という今までに類を見ない規模で検討できたことにある。

 随時血圧(3カ月ごとの外来血圧)と家庭血圧(原則毎日、起床直後に1回)の双方の測定結果が得られた4596例について、家庭血圧値と心血管系イベントとの関係を検討。非測定群に比べ有意差はなかったが、家庭血圧測定群では心血管系イベントの発生率が低かった。

 また、随時収縮期血圧(CSBP)と家庭収縮期血圧(HSBP)をいずれも130mmHg未満を基準として調べたところ、脳卒中の相対危険度が有意に増加する家庭血圧値は、随時血圧値より10mmHg低かった。

 成冨氏は「家庭血圧の測定が治療コンプライアンスを維持し、心血管系イベントの発症抑制に寄与している可能性が示唆された」と語る。

 これらの結果から成冨氏はJ-HEALTHを、「日本人の高血圧治療において、ロサルタンの有用性を示すとともに、日常臨床ですぐに活用できるエビデンス」と位置付けている。

(日経メディカル別冊)

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