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EBM:TOPICS

2008/4/7

TROPHY

ARBカンデサルタンによる早期介入で高血圧発症が66%減少

TRial Of Preventing HYpertension

関連ジャンル:
高血圧
臨床研究

 米国のフラミンガム研究は、血圧が正常〜正常高値レベルでも、将来の心血管系イベントの発症リスクが至適血圧レベルの群に比べて有意に高いことを明らかにした。その結果を受けて、JNC7(高血圧の予防、発見、診断、治療に関する米国合同委員会の第7次報告)では、120〜139/80〜89mmHgを「高血圧前症(Pre-Hypertension)」と定義した。JNC6で定義された正常高値血圧(130〜139/85〜89mmHg)からさらに低い血圧群を介入の対象とした形だ。

 JNC7が発表される4年前から開始されたTROPHY試験は、収縮期血圧130〜139mmHgの範囲にあって拡張期血圧が89mmHg以下の者、あるいは収縮期血圧が139mmHg以下で拡張期血圧が85〜89mmHgの者を対象に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARBカンデサルタン(商品名;ブロプレス)群とプラセボ群に分けて高血圧の発症率を比較した、4年間の臨床試験だ。

 この試験の結果を要約すると、未治療の正常高値血圧者の場合、2年間で約40%、4年間で約66%が高血圧を発症したこと、正常高値血圧例におけるカンデサルタン治療の忍容性は良好で、高血圧発症のリスクを有意に低下させることが明らかになった。

2年間で4割の発症リスクをカンデサルタンは6割低下

 TROPHY試験の対象は、米国71カ所の医療機関で登録された772例(平均年齢48.5歳、40%が女性)。

 カンデサルタン(16mg/日)投与群(391例)とプラセボ投与群(381例)に無作為に割り付け、それぞれ2年間投与した後、その後2年間、両群ともプラセボを投与。全例に降圧のための生活習慣(食事、運動)の改善を指導した。

 主要評価項目は高血圧の発症の有無。発症の定義は、(1)3回の受診時の測定値が140/90mmHg以上、(2)1回受診時の測定値が160/100mmHg以上、(3)降圧治療が必要と担当医が判断、(4)48カ月目の受診時血圧が140/90mmHg以上──とした。

 解析の結果、試験開始後2年の高血圧発症例はカンデサルタン群53例(13.6%)、プラセボ群154例(40.4%)であり、カンデサルタンを2年間投与することで相対リスクが66%低下した。また、途中でカンデサルタンをプラセボに切り替えた2年間を含む4年目の発症は、カンデサルタン群208例(53.2%)、プラセボ群240例(63.0%)で、リスク低下は 15.6%(p<0.007)。4年間の試験期間全体では、42%のリスク低下が認められた(図1)。

 興味深いことに、カンデサルタン投与後、収縮期血圧は速やかに約10mmHg低下し、カンデサルタンの投与中止により上昇するが、プラセボ群と同レベルまで上昇することはなく、中止後2年経過しても2.0mmHg低いままだった(図2)。

 なお、重篤な有害イベントはカンデサルタン群14例(3.5%)、プラセボ群23例(5.9%)で、両群とも低かった。

 東京都老人医療センター副院長の桑島巌氏は「TROPHY試験では、わが国のガイドラインでは正常高値に分類される130〜139/85〜89mmHgの血圧レベルでも、2年後に40%、4年後には63%がステージ1以上の高血圧に進行することを示した点で貴重だ」と語る。

前高血圧・職場高血圧の段階で積極的な生活習慣改善が必要

 また、桑島氏らは職場高血圧の研究から、正常血圧値内であっても130〜139/85〜89mmHgの場合、肥満や高血圧家族歴があれば積極的な生活習慣の改善が必要であると報告しているが、TROPHY試験はこれを裏付けるデータだという。

 桑島氏らが、都庁職員の職場の血圧値と健康診断時の血圧値を比較したところ、140/90mmHg以上の職場高血圧が認められたのは23%。この職場での血圧上昇因子は年齢、BMI、高血圧家族歴だった。健康診断時の血圧130/85mmHgをカットオフ値とした場合、63%が職場高血圧であった(図3)。この結果から、健康診断で140/90mmHg未満であっても、130/85mmHg以上で、肥満、家族歴、45歳以上であれば、職場高血圧の可能性が高い、と桑島氏らは結論付けた。「職場高血圧は高血圧の前段階と位置付けられ、その多くが脂質代謝異常を伴っていると考えられる。従って、前高血圧・職場高血圧の段階で積極的に生活習慣を改善することが重要なのです」(桑島氏)。

 桑島氏は、TROPHY試験における高血圧の発症抑制が、ARBだけの効果であるのか、あるいは利尿薬やCa拮抗薬でも可能なのかは、この結果からは明らかにできないという。ただ、降圧薬を用いる場合、「ARBあるいはACE阻害薬と利尿薬を併用することは、レニン・アンジオテンシン系に対する作用を互いに補完するかたちになり、降圧効果が増強されるため、試みるべき方法だ」としている。

(日経メディカル別冊)

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