新着一覧へ

EBM:TOPICS

2008/3/27

ROADMAP

微量アルブミン尿の発症抑制を検証へオルメサルタンで腎障害予防目指す

Randomised Olmesartan and Diabetes Microalubuminuria Prevention study

関連ジャンル:
腎・泌尿器
糖尿病
高血圧

 糖尿病性腎症は、微量アルブミン尿が認められる早期腎症から顕性蛋白尿が認められる顕性腎症を経て、腎不全や透析導入へと進展する。日本では2型糖尿病の増加に伴って糖尿病性腎症が増加の一途をたどり、1998年以降は透析導入原因疾患の第1位を占めている。

 日本透析医学会の統計によると、2005年末時点で、透析患者の約30%が糖尿病性腎症であり、05年の新規透析導入患者3万6063人の約42%が糖尿病性腎症だ。ここ10年で糖尿病性腎症による新規透析導入は約2.7倍に増加している。

 東北大大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野教授の伊藤貞嘉氏は「糖尿病は高血糖により血管、腎臓、神経が傷害されていく疾患だが、特に血管傷害と腎臓傷害は患者の生命予後を決定する重要な因子。高血糖に高血圧が加わると、これらの傷害は相乗的に増大し、また血管傷害と腎臓傷害がさらに高血圧を悪化させる悪循環に陥る。血糖と血圧の両方のコントロールができて初めて糖尿病性腎症治療が可能になる」と強調する。

内外の臨床試験で示されたARBの腎症進展抑制効果

 糖尿病性腎症の血圧コントロールに有用とされているのが、レニン・アンジオテンシン(RA)系を抑制するアンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬ARB)とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬だ。

 というのも、糖尿病ではAIIの過剰な産生・効果発現があり、腎症進展の最大促進因子となっているからだ。特に輸出細動脈に作用し糸球体内圧の上昇をもたらしている点が重要だ。

 一方、高血糖による血管傷害、すなわち動脈硬化の進展も腎症に大きな影響をもたらし、この動脈硬化進展の過程にAIIが関与している。

 伊藤氏は、「RA系抑制薬の腎保護作用は、糸球体高血圧を改善するとともに、腎臓の動脈硬化による尿細管萎縮、間質の増生、尿蛋白の増加の抑制によってもたらされると考えられる」と指摘する。

 また、「症例によってはARBとACE阻害薬を併用したり、利尿薬などを含めた3剤併用も必要。併用すると尿蛋白がさらに減少することも明らかになってきた。ARBは、ACE阻害薬とは異なったメカニズムが働いている可能性がある」と伊藤氏は推測する。

 実際、ARBの有効性については、これまで複数の臨床試験でエビデンスの蓄積が進んでいる。

 微量アルブミン尿を呈してしまっている早期腎症例を対象としたIRMA-2試験では、ARBによって投与量依存的に顕性腎症への移行を抑制することが示された。2型糖尿病性腎症を有する高血圧患者を対象としたIDNT試験では、ARBとCa拮抗薬との間で降圧効果に有意差はなかったが、ARBの腎保護効果が確認された。RENAAL試験は顕性腎症を伴う2型糖尿病患者にARBを追加することで腎障害の進展予防効果が示されている。

 これらの臨床試験により、既に何らかの腎症の症状が出てしまっている症例で、ARBの保護効果や進展抑制効果が確認されたといえる。

腎症発症自体の抑制効果評価へ 初めの一歩が防げるか

 そして、いよいよARBが腎症の発症自体を抑制できるかどうかを評価する段階に来たようだ。

 それが、現在、欧州20カ国で実施されているROADMAP試験だ。

 ROADMAP試験は、ARBであるオルメサルタン(商品名;オルメテック)が、正常アルブミン尿の2型糖尿病患者に対して微量アルブミン尿発症を予防するかどうかを検証する、世界初の大規模臨床試験だ。

 対象となる患者は、心血管リスクファクターを1つ以上持つ正常アルブミン尿の2型糖尿病患者男女4400人。オルメサルタン40mg/日とプラセボによる無作為化二重盲検比較試験により、微量アルブミン尿発症率をみる計画だ(図1)。

 オルメサルタンは降圧作用とともに、ラットを用いた非臨床試験では糖尿病性腎症の進展抑制も確認されている。

 伊藤氏は「臨床的に腎症が明確にとらえられる時期(顕性蛋白尿、糸球体濾過値低下、クレアチニン・クリアランス低下、クレアチニン値上昇、浮腫など)では治療は手遅れといってよい。特に糖尿病性腎症では進行がはやい。微量アルブミン尿は鋭敏な指標であり、微量アルブミン尿は腎臓の微小血管に傷害が起こり始めていることを表している。オルメサルタンによって、その発症が抑制されれば、糖尿病性腎症における早期治療の実現に大きく貢献するだろう」と大きな期待を寄せている。

 2007年6月に、欧州高血圧学会(ESH)が発表した高血圧診療ガイドラインでも、腎障害発症をできるだけ早期に把握するため、微量アルブミン尿の診断項目としての位置付けを高いものとした。高血圧に伴う腎障害をできるだけ早くに検知し、発症を抑えることの重要性が認められたといえるだろう。高血圧患者における腎障害は世界的にも重要視されているテーマで、ROADMAP試験の結果が注目される。

(日経メディカル別冊)

関連記事

Information PR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. マッチング最終結果、市中病院人気が再び加速 【2017年度】フルマッチ校は11校、東京医科歯科大は5年連続 FBシェア数:174
  2. 「病院⇒介護医療院」の転換、10万床規模にも 日経ヘルスケアon the web FBシェア数:39
  3. 国内初の『慢性便秘症診療GL』の特徴は? 学会トピック◎JDDW2017 FBシェア数:48
  4. 67歳女性。右大腿の単発性赤褐色斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  5. 地裁が「パワハラで解雇は無効」 群馬大医学系研究科教授の懲戒解雇処分 FBシェア数:5
  6. ベルソムラは就寝前に飲んじゃダメ!? セキララ告白!個別指導 FBシェア数:80
  7. 高齢でもピロリ除菌を行うべきもう1つの理由 リポート◎ピロリ除菌の目的は胃癌発症抑制と潰瘍予防だけじゃない! FBシェア数:47
  8. 「医療訴訟がとにかく怖いんです!」 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:15
  9. 事業譲渡を迫る厚労省に翻弄される化血研 記者の眼 FBシェア数:0
  10. キャラクターで抗菌薬を覚える!? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:44