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ACTIVE I:結果詳報

2009/9/18

AFへのイルベサルタン追加により副次項目の心不全入院は抑制

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 これまで心房細動AF)の発症あるいは再発に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)の抑制効果を評価した試験はいくつか報告されているが、ACTIVE Iは、AF患者における脳卒中心筋梗塞血管死心不全による入院をエンドポイントとしてARBの有効性を評価する初めての試験。注目されていた結果が、8月30日からスペインバルセロナで開催された欧州心臓学会(ESC2009)で発表された。プライマリーエンドポイントについてはプラセボ群と差はなく、イベント発症に影響を与えないというものだった。ただし、セカンダリーエンドポイントの心不全による入院は抑制したという結果が得られた。

 ACTIVE Iの対象は、血管イベントのリスク因子(年齢75歳以上、高血圧、脳卒中/一過性脳虚血性発作(TIA)既往、左室駆出率(LVEF)45%未満、末梢動脈疾患(PAD)、年齢55〜74歳で冠動脈疾患か糖尿病がある)を1つ以上持つ心房細動患者。ARBイルベサルタン投与群(4518例)とプラセボ群(4498例)に割り付け、脳卒中、心筋梗塞、血管死、心不全による入院の抑制効果を評価した(試験デザインの詳細はこちら)。

 プライマリーエンドポイントである脳卒中+心筋梗塞+血管死という複合エンドポイントの年間発症率はイルベサルタン群5.4%、プラセボ群5.4%となり、ハザード比は0.99(95%CI:0.91-1.08、p=0.846)と、2群間に差はみられなかった。

 プライマリーエンドポイントには、脳卒中+心筋梗塞+血管死に、心不全による入院(初発)を加えた複合エンドポイントも設定され、年間発症率はイルベサルタン群7.3%、プラセボ群7.7%だった。ハザード比は0.94(95%CI:0.87-1.02、p=0.122)で差はみられなかった。

 プライマリーエンドポイントに対する追加解析として、脳卒中+心筋梗塞+血管死の再発に心不全による再入院を加えた複合エンドポイントに関して解析を行った結果、発症率はイルベサルタン群が39.6%、プラセボ群44.3%となり、ハザード比は0.89(95%CI:0.82-0.98、p=0.016)。イルベサルタン群で有意な減少がみられた。

 セカンダリーエンドポイントの1つである心不全による入院について、イルベサルタン群で有意に減少していた(ハザード比0.86、95%CI:0.76-0.98、p=0.018)。心不全はAF患者の合併症として脳卒中とともに頻度が高く、AFは心不全のリスク因子であることも知られている。しかし、AF患者を対象とした臨床試験はAF自体の治療効果に関するものがほとんどで、心血管イベント抑制効果という予後を評価する試験はこれまで実施されてこなかった。ACTIVE Iにおけるセカンダリーエンドポイントの結果は、AF患者における心血管イベント抑制効果を示した世界で初めてのものといえる。

 心不全による入院数と平均入院期間をかけ合わせた総入院期間についても、プラセボ群が3万9971日であったのに対し、イルベサルタン群では3万6440日と有意に減少していた(p<0.01)。

 また同じく、post hoc解析ではあるが、イルベサルタン投与により、「脳卒中+TIA+全身性塞栓症」が有意に少なかったことも報告された(イルベサルタン群2.9%、プラセボ群3.4%、ハザード比0.87[95%CI0.78-0.98]、p=0.024)。

 結果を発表したカナダMcMaster大のSalim Yusuf氏は、ACTIVE Iの結果から日常臨床に反映できることとして、「AF患者において高血圧はよくみられ、脳卒中以上に心不全を合併する頻度が高い。よく治療されているAF患者においてイルベサルタンを追加投与して積極的に降圧することで心不全を抑制できる」と語った。

 Yusuf氏の発表に対するディスカッサントとして登壇したBarcelona大Josep Brugada Terradellas氏は、追加投与がプライマリーエンドポイントに影響を与えなかった原因として、登録患者のAFには、永続性(66%)、発作性(19.6%)、持続性(14.3%)とさまざまなタイプが含まれていたことを指摘した。また、登録時の収縮期血圧の基準が110mmHg以上と低値で、併用薬剤によって十分治療されている患者が多かったことを指摘した。

差がつきにくいデザインで確認されたイルベサルタンの心不全の抑制効果は注目に値する


名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
室原豊明氏

 ACTIVE Iに登録した患者さんの収縮期血圧の登録基準は、心房細動を有していることもあり、110mmHg以上に設定されている。したがって、血圧値が比較的安定している人もエントリーされている可能性がある。また、ACTIVE Iの登録患者は全員、血栓塞栓性イベントの発症予防のための治療を受けている患者でもある。これらの点を考慮すると、元々、脳心血管イベント発症においては有意差がつきにくいデザインの試験ではなかったかと感じる。

 プライマリーエンドポイントでは有意差がつかなかったものの、セカンダリーエンドポイントの一つである「心不全による入院」ではイルベサルタン群で有意にイベントが減少している。この点はやはり注目されるべきで、心不全を合併しやすい心房細動患者の日常診療を考える上でも留意されてよい結果だろう。プライマリーエンドポイントでは両群間に有意差は出なかったが、この結果のみでARBに心房細動のアップストリーム治療の効果がないと判断するのは時期尚早であろう。

心不全予防はAF診療の今後の焦点になる


心臓血管研究所研究本部長
山下武志氏

 これまでAF治療は、リズムコントロールやレートコントロールといった抗不整脈治療と、脳卒中の発症予防を中心に考えてきた。しかし、今回のACTIVE Iで明らかになったことは、AFの合併症として脳卒中と同じ程度のインパクトをもって心不全による入院が重要であるということだろう。心不全の発症・増悪因子の1つがAFであることは既に知られていることではあるが、私を含めて不整脈の専門医は「AF患者における心不全予防」という発想はあまり持っていなかったように思う。実際、AF患者における心不全発症率を正確に長期間追跡しているのはFramingham研究ぐらいしかない。

 ACTIVE Iでは、セカンダリーエンドポイントとして「心不全による入院」がイルベサルタン投与により有意に抑制されるという結果が得られた。今回のESCでは、AF患者の脳卒中発症予防として、ワルファリンよりも開発中の抗凝固薬であるダビガトランの有効性が高く使いやすいという結果が発表されたが(RE-LY試験)、一方、ACTIVE Iの結果はこれからの心房細動治療の心不全予防にはARBの時代となる可能性を示唆したといえる。

 今後の課題は、AF患者の心不全発症リスクの評価法の開発だろう。脳卒中発症リスクを評価するにはCHADS2スコアがあるが、心不全にはない。ACTIVE Iで心不全を起こした患者の詳細な解析が待ち望まれる。

(日経メディカル別冊)

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