一部のDPP-4阻害薬は腎機能にかかわらず同一用量

 日本では、DPP-4阻害薬は現在7種類あります。直接比較した試験データはほとんどありませんが、HbA1c低下作用に関しては、おそらく著しい差はないでしょう。これまでの処方動向を見ると、併用の自由度が大きく影響していたと思います。他の血糖降下薬との併用が、保険診療上多く認められている薬剤がよく処方されていました。しかし、どの薬剤も併用の保険適用を拡大し、あるいはしつつあるので、併用に関してはやがて差がなくなるでしょう。

 この他、重要と考えられるのが代謝・排泄経路です。糖尿病患者において糖尿病腎症の合併は珍しくなく、腎機能が低下しやすいという特徴があります。腎機能に関するインターネット調査を実施したところ、新規糖尿病患者で腎機能レベルが低下している人は、軽度を含めると約6割に達していました。さらに、残り4割の半数は腎機能低下の危険因子を持っていました。つまり、腎機能に問題がなかった患者でも半数はやがて腎機能が低下する可能性があり、腎機能低下のリスクが低い糖尿病患者は少ないということです。

 一方、血糖降下薬の多くは腎排泄型ですから、腎機能が低下した患者には使用できなかったり、用量調節が必要であるという添付文書上の縛りは珍しくありません。DPP-4阻害薬の場合、リナグリプチンとテネリグリプチンは腎機能にかかわらず同一用量ですが、それ以外の薬剤は腎機能に応じた減量投与あるいは慎重投与が勧められます。

同じDPP-4阻害薬でも血糖降下以外の作用は異なる可能性

 DPP-4阻害薬は、阻害活性を指標にスクリーニングして候補物質をピックアップしたため、同じクラスの薬剤であっても構造が異なっています。血糖降下作用はDPP-4の阻害活性に依存しているので似たり寄ったりでも、心血管イベントへの影響などは異なる可能性があります。

 日本の第II相試験と第III相試験のデータを解析すると、興味深いことに、インスリン分泌の良し悪し、インスリン抵抗性の有無、BMIの大小で分けてみても、DPP-4阻害薬による血糖降下作用に差がなかったのです。同薬はインスリン分泌促進薬に分類されていますが、インスリン抵抗性がある患者にも効果を発揮すると考えられ、実際、欧米人においても有効性を示す理由の1つといえます。

 DPP-4阻害薬はこれまでの使用期間が比較的短いものの、多くの2型糖尿病患者に処方され、安全性がある程度担保されているので、積極的に用いて問題がない薬剤であると考えています。その意味で、専門医も非専門医も使いやすい薬剤です。

 最後に、血糖値の管理が甘いケースが散見されるようになったことに触れたいと思います。昨年6月に日本糖尿病学会は新たな血糖コントロール指標を定めましたが、HbA1c 7%未満を達成するという目標は以前からほぼ同じです。ところが、7%未満を達成する努力をせず、8%未満でもよいと誤解している臨床医が少なからずいるようです。

 そうではなく、安全に下げられる範囲であれば、より正常な血糖コントロールを目指してほしいと思います。HbA1c 7%未満の達成が原則であり、8%未満はあくまでも重篤な低血糖などで治療強化が困難な例での目標であることを臨床医は認識する必要があります。