一方、60歳未満の患者でCKDや糖尿病を合併していない場合は、治療開始値はDBPで90mmHg以上、降圧目標値はDBPで90mmHg未満とした(勧告2、30〜59歳ではグレードA、18〜29歳ではグレードE)。60歳未満の場合、SBPでの基準を定めるに足りる確固としたエビデンスがなかったため、DBPだけでの勧告となったという。また30歳未満の患者では、DBPに基づく降圧治療の利益自体が不明確だったため、Expert Opinionとしての言及となった。

 このように勧告2ではSBPによる定義をあえて行わなかったが、後に述べるCKDや糖尿病を合併した場合は、SBPでも治療開始値などが具体的に規定されている。そこで、これらとの整合性を図るなどの理由から、勧告3ではExpert Opinionであると断った上で、SBPでの治療開始値として140mmHg以上を、降圧目標値として140mmHg未満を勧告した。

 勧告4はCKD合併例、また勧告5は糖尿病合併例についての治療開始値と降圧目標値だ。どちらも18歳以上であれば年齢にかかわらず、140/90mmHg以上で降圧治療を開始するとし、降圧目標は140/90mmHg未満とした(どちらもグレードE)。ただしCKD合併例については、70歳以上は症例ごとに判断するとしている。

 勧告の後半は薬物選択についてで、黒人と黒人以外で第一選択薬を分けている。黒人以外の場合、糖尿病合併の有無にかかわらず、サイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARBの4種類を第一選択薬として推奨した(勧告6、グレードB[中等度の推奨])。JNC 7では、特に問題がなければサイアザイド系利尿薬を第一選択薬としていたが、JNC 8では「これら4剤は総死亡や心血管合併症の発症予防に対して同等の効果を持つ」と位置づけた。また糖尿病合併患者であっても推奨薬剤を変更しなかったのは、主要な心血管合併症の予防効果に薬剤間の差を認めなかったためとしている。

 なお黒人では、糖尿病合併の有無にかかわらず、レニン・アンジオテンシン系抑制薬の2剤が除外され、サイアザイド系利尿薬とCa拮抗薬のみが第一選択薬とされた(勧告7、グレードC[弱い推奨])。これは、ACE阻害薬に比べサイアザイド系利尿薬の方が心血管合併症の発症予防や降圧効果に優れていること、サイアザイド系利尿薬とCa拮抗薬の間に差がなかったことなどが理由という(糖尿病非合併例:グレードB、糖尿病合併例:グレードC)。

 またCKDを合併している高血圧患者では、年齢(18歳以上)、人種、糖尿病の有無にかかわらず、第一選択薬または併用薬の1剤は、ACE阻害薬またはARBが含まれることとした(勧告8、グレードB)。