日本呼吸器学会による「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」が4年ぶりに改訂された。ガイドライン作成委員長を務めた東京女子医科大学統括病院長の永井厚志氏が、4月19日から21日にかけて東京で開催された日本呼吸器学会で改訂ポイントを解説した。

 改訂のポイントは7つあり、(1)疾患定義の加筆修正、(2)COPDの病態概念のアップデート、(3)薬物療法のアップデート、(4)増悪の重要性、(5)運動耐容能から身体活動性への概念の転換、(6)災害などへの対応、(7)文献のエビデンスレベルの記載、用語の統一など。

 前回のガイドライン発刊後に新薬が複数登場しているため、薬物療法は最新のエビデンスを反映し、治療方針を変更した。安定期の患者に対しては、これまで第一選択薬は「長時間作用性抗コリン薬(または長時間作用性β2刺激薬)」だったが、今改訂で「長時間作用性抗コリン薬またはβ2刺激薬(必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬)」となった(図3)。すなわち、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の推奨レベルが同等になった。

図3●安定期COPDの管理
重症度はFEV1の低下だけではなく、症状の程度や増悪の頻度を加味し、重症度を総合的に判断したうえで治療法を選択する。
*増悪を繰り返す症例には、長時間作用性気管支拡張薬に加えて吸入ステロイド薬や喀痰調整薬の追加を考慮する。
(出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版)

 その理由を永井氏は、「以前のガイドラインの刊行時点では、LAMAとLABAの比較試験を見ると、LAMAの方が有効性で勝っていた。しかし、その後に登場した新しいLABAは気管支拡張作用などにおいてLAMAと同等の効果を有することが明らかになったため」と説明した。

 今回の改訂の大きな特徴として、安定期COPDの管理において、具体的な治療手順を示すアルゴリズムを新たに作成したことが挙げられる。同アルゴリズムでは、患者の状態ごとに推奨される薬物療法と非薬物療法をそれぞれ提示している。

 薬物療法では、強い労作時のみ呼吸困難症状があるときは、必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬を使用する。病状が進行し、労作時に呼吸困難症状が出る患者には、LAMAまたはLABA(吸入または貼付)を投与する。さらに、喘息合併症例や頻回の増悪を繰り返す患者では、吸入ステロイド薬や喀痰調整薬を追加することが示されている。

 一方、非薬物療法では、「禁煙、喫煙曝露からの回避、インフルエンザワクチン、身体活動性の維持と向上」をまず検討する。症状が進行した場合はさらに呼吸リハビリテーションを追加することで、身体活動性を維持することを求めている。喘息合併や頻回の増悪が見られる場合は、さらに酸素療法や換気補助療法、外科療法を考慮すると記されている。

 増悪については、その定義を少し変更した。増悪前に出現する症状として「胸部不快感・違和感の出現あるいは増強」という文言を追加し、早期から増悪を想定した治療を行うことを求める内容にした。

 呼吸リハビリテーションについては、運動耐容能だけでなく身体活動性の維持が重要であるという考えを明確に示した。

 東日本大震災後初めての改訂となることから、震災など災害対応にも言及。平常時から対策することや、口すぼめ呼吸などの呼吸トレーニングが不安や低酸素血症を緩和するために有効であることを明記したほか、災害時アクションプランを明確にしておくことを推奨している。

 用語の統一に関しては、例えば「気流閉塞」と「気流制限」は、前者が比較的広義に使用されているのに対し、後者は呼吸生理学的観点から狭義であるため、ガイドライン中では原則として「気流閉塞」という表現にそろえた。