唯一、EVT前の足の血流状態を示すABPI(足関節と上腕の収縮期血圧比)に有意差が認められたが、ほかの患者背景には有意差はなかった。これについて横井氏は、「シロスタゾール群のABPI値が0.72、非シロスタゾール群が0.66と、カットオフ値0.9よりも低値で、機能的な差にはつながらない」と説明する。

 この試験の最大の特徴は、主要評価項目であるEVT12カ月後の再狭窄率を、血管造影法で算出した点だ。従来、下肢の血管の狭窄を評価する臨床試験ではエコー法を用いるのが一般的だが、術者によるバイアスが生じやすいことが課題だった。これに対し、血管造影法では、造影剤動注後に血管像を撮影し、正常血管径と狭窄血管径の比を自動的に算出するソフトを用いて解析する。さらに評価は、独立した第三者機関が行っている。

 その結果、血管造影法を用いたEVT12カ月後の再狭窄率(正常血管径に対する狭窄血管径の比が50%未満)は、intention to treat(ITT)解析で非シロスタゾール群が48%だったのに対し、シロスタゾール群は21%と有意に抑制されていた(図2)。

図2●12カ月後の再狭窄率(ITT解析による)
(出典:TCT2012での横井宏佳氏の発表より)

 さらに、エコー法でもEVT12カ月後の再狭窄率を確認したところ、両群間に有意差が見られ、非シロスタゾール群が41%に対し、シロスタゾール群が19%だった。これについて横井氏は、「通常、冠動脈疾患において薬剤やステント治療の有効性をエコー法で検討する場合、治療6カ月時点で評価するのが一般的。しかし、今回の結果では、治療6カ月までは再狭窄率に有意差が見られず、12カ月時点で有意差が確認された。FP領域に病変を持つステント留置例では少なくとも治療12カ月後まで追跡する必要があることが分かった」と指摘する。また、EVT12カ月後の血行再建術再実施率は、シロスタゾール群で有意に低下した(37% 対 17%)。一方、12カ月の追跡期間中のバイパス術実施率、ステント破裂率、足切断率、死亡率においては両群間に差はなかった。

追跡期間を3年に延長
 今回の試験結果を受け、2年間だった追跡期間を3年まで延長することが決定した。ただし、今後の課題として横井氏は、シロスタゾール群の10%が動悸により試験脱落になったことを挙げる。動悸症状が出た場合は、100mgに減量もしくはβ遮断薬追加で対処した。今後、シロスタゾールを減量しても十分な再狭窄抑制効果があるかを確認する方針だ。

 横井氏は、「今年から薬剤溶出ステント(DES)がFP領域でも使用できるようになり、FP領域の治療が変わることが予想される。今回の試験で、BMSでもシロスタゾールを投与すれば、再狭窄率を有意に抑制できることを示した意義は非常に大きい」と語る。今後は、日本人を対象に、「DES」対「BMS+シロスタゾール」を比較するほか、DES留置後にシロスタゾール投与で再狭窄率をどの程度抑制できるかについても検討する考えだ。最後に横井氏は、「84%と高い追跡血管造影施行率は日本の冠動脈疾患の臨床試験のノウハウが活かされたと感じる」と話す。