RE−LY試験は、直接トロンビン阻害薬ダビガトランの脳卒中・全身性塞栓症予防における有効性をワルファリンと比較した非劣性試験である。対象は脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者。1万8113人を無作為に割り付けた後、非盲検下で行われたが、ダビガトランの用量(110mg1日2回と150mg1日2回)については盲検化された。

 結果は2009年の欧州心臓学会(ESC2009)で発表され、主要評価項目である脳卒中または全身性塞栓症の発症率について、ダビガトラン110mg1日2回群と150mg1日2回群の両用量群でワルファリンに対する非劣性が示された。さらに150mg1日2回群では優越性も証明された(いずれもP<0.001)。また出血性脳卒中のリスクも、両用量群ともにワルファリン群に比べて低かった。

2800人ものアジア人データ
 そして今回、9月に東京で開催された第2回アジア太平洋脳卒中会議(APSC2012)において、日本人を含むアジア人集団と非アジア人集団に分けて比較した、サブグループ解析の結果が明らかになった。

 RE−LY試験運営委員会メンバーで日本でのコーディネーターを務める大阪府立成人病センター総長の堀正二氏は、「アジア人では、ダビガトランの脳卒中予防効果はワルファリンより高い一方、出血リスクは非アジア人より少ない傾向が見られた。ダビガトランはアジア人に対するベネフィットが大きい薬であることが明らかになった」と話す。

 今回の解析では、RE−LYの全データをアジア人2782人と非アジア人1万5331人に分け、ダビガトランの有効性および安全性をワルファリンと比較した。アジア人の内訳はインド578人、中国541人、台湾355人、韓国336人、日本326人など。「国際共同試験で2800人ものアジア人データを解析したのは初めて。アジア人の出血リスクを検証するには絶好のデータだった」と堀氏は話す。

 患者背景を見ると、アジア人の方が若い(アジア人68.0歳 対 非アジア人72.1歳)、脳卒中既往の割合が高い(同24.2% 対 10.4%)、クレアチニンクリアランスが低い(同65.3mL/分 対 74.2mL/分)、体重が軽い(同66.3kg 対 85.6kg)などの違いが認められた。ワルファリンのプロトロンビン時間国際標準比(PT−INR)はアジア人の方が低く調節されていたので、平均PT−INRが2〜3だった割合はアジア人の方が少なかった(同54.5% 対 66. 2%)。

 主要評価項目(脳卒中、全身性塞栓症)の年間発症率は、アジア人ではワルファリン群が3.06%、ダビガトラン110mg1日2回群が2.50%、同150mg1日2回群で1.39%、非アジア人では順に1.48%、1.37%、1.06%だった(図1)。「主要評価項目の発症率はアジア人で高めだったが、ワルファリン群と比較したダビガトラン群の発症予防効果はアジア人で同等か高かった」と堀氏は説明する。

図1●主要評価項目(脳卒中、全身性塞栓症)の発症率(RE−LY 試験のサブ解析結果)
(出典:APSC2012での堀 正二氏の発表より)