石見 陽(いわみ よう)氏。1999年信州大医学部卒。2005年3月東京女子医科大の循環器内科大学院を卒業し、医学博士を取得。05年4月にメディカル・オブリージュの代表取締役に就任。

 さて今回は、そもそも医師人材バンクとは何なのか、そして効率的な医師人材バンクへの登録方法を解説します。

 私が入局した8年前くらいまでは、医局を経由しての人事異動が普通でした。もちろん、現在でも多くの医局では、それが普通だと思いますが、最近は医局を経由しない転職が増えてきている印象があります。その理由は以下の通りだと考えます。

・卒後臨床研修の義務化により、入局者数が減少している

・医局自体も、関連病院での人員維持に対する意識が低くなってきている

・医局員の意識に、教授を絶対視する階級意識が薄れてきており、その結果として医局経由の人事にこだわらない傾向がある

・病院側も、医局経由の医師派遣では必要人員の確保が困難であり、医師人材バンクへ積極的に求人を出すようになった

・インターネットが一般的になり、医師が個人で求人情報を検索したり、医師人材バンクを検索できるようになった

 これらの理由により、いわば公的な医師人材バンクであった医局制度が、民間の医師人材バンクにその役割を譲ってきていると考えられます。最近では、各自治体が人材バンクを組織する流れもあり、今後も人材バンクを通じた、医局「外」の転職は減ることはないでしょう。

 こうしたトレンドがある中で、われわれによく寄せられる質問に、「医師人材バンクを利用すると、年俸から多額の仲介手数料を引かれるのでは?」というのがあります。

 医師人材バンクというのは、医師の登録や利用に関してはすべて無料であり、病院から仲介手数料をもらうことで成り立っています。複数の病院の事務長から確認を取りましたが、病院側として、医師人材バンク経由の医師だからといって、仲介手数料分を年俸から引くことはないそうです。考えてみれば当たり前で、実際働き始めた後に、人材バンク経由の医師だけ年俸が安ければ不満が起きますよね。

 また、医師人材バンクにとっても、仲介手数料は「医師の年俸の何%」と割合が決まっていますので、条件交渉は必死です。つまり、転職活動において、医師と代理人とは利害関係が一致しているわけです。

 独力で雇用者側の病院と率直な条件交渉をできる医師には、こうした代理人は必要ないのかもしれません。ですが、「そのような交渉ごとの時間がない」「思うとおりの条件をなかなか言いにくい」などの方は、医師人材バンクを上手に利用されると良いかもしれません。一般企業でも、幹部候補クラスの人たちは代理人を立てて交渉するのが普通であり、個人で会社と交渉するのは、新入社員くらいのようです。

 ただし、注意しなくてはならないことがあります。一見して人材バンクのように見えるけれども、病院からの求人情報を掲示板のようにサイト上に掲載するだけで、「あとは直接病院に電話してください」という人材バンクが見受けられます。これは、広告掲載料をもらって運営しているのであって、人材紹介ではありません。