2つ目は、動脈硬化予防を目指した包括的なガイドラインの策定です。動脈硬化学会のガイドラインの一部に包括的な内容を入れるのではなく、高血圧、脳卒中、糖尿病などの関連学会と共同で動脈硬化性疾患予防ガイドラインを作り、高血圧や糖尿病など、個別の分野の内容は個々の学会が策定するという方式です。

 今回のガイドラインでは、こうした方式の先駆けとして、他学会との密接な連携を実現しました。次期ガイドライン策定に当たっては、連携をさらにブラッシュアップしたいと思っています。

 ガイドラインのあり方として、もう1つ検討しているのは、「動脈硬化予防のため、第1選択として何を行うか」というアプローチです。

 欧州のガイドラインはこの考え方を取り入れていて、冒頭には、動脈硬化の可能性が高い場合、脂質を測ってLDLが高ければLDLを70未満にしましょうとあります。その上で、血圧が高い人、糖尿病がある人という形で分けていきます。一般臨床医がまず行うべき診療は何かを示してくれるガイドラインですね。

政策提言など社会的な仕組み作りについても検討すべき
 アプローチ自体を検討すべき課題もあります。新ガイドラインでは生活習慣改善の重要性を指摘していますが、現場の医師はこの領域にあまり興味を持っていません。

 こうした問題に対処するには、タバコの価格を上げる、肥満度が高い人には何らかの負のインセンティブを課するといった、社会的なシステムを作る必要があります。欧州心臓病学会(ESC)の下部組織である欧州心臓病予防リハビリテーション協会(EACPR)は昨年、食習慣や喫煙、飲酒などの生活習慣によるリスク増加に対して課税や販売制限などの政策的な介入をすることによって、心血管疾患の死亡率を半減することが可能とする提言を発表しています。

 私たちも実際に診療していると、減量を勧めた患者さんが2年も3年も同じ体重のままというケースを見かけます。そうなると、体重を減らせば病気が良くなるとわかっていても、薬物治療を始めることになります。

 そこで、健康をきちんと守った人にある程度の報酬を与えるといった仕組み作りを検討すべきではないかと考えています。

 日本高血圧学会が減塩を打ち出したように、動脈硬化性疾患予防についても、国民的な目標としてアピールしていくことも重要かもしれません。今回のガイドラインでも生活習慣の7つの法則を示しました。次期ガイドラインでは、各学会と共同で統一メッセージを出したいと思います。

(日経メディカル別冊)