絶対リスクは迷った時に使う
 一方、普及活動中には、新版ガイドラインに対する疑問点も寄せられました。なかでも多かったのは絶対リスクの必要性についてです。臨床の場でチャートを使ってリスクを算出するのはかなり大変だということでした。

 しかし、絶対リスクは診断に迷った時に使うもので、現実の診療では迷わないケースが多いと思います。例えば2次予防の場合や、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)などがある場合、絶対リスクを検討するまでもなく、高リスクに分類されます。絶対リスクによる評価は、治療が必要かどうか迷う時に用いればよいでしょう。

 もう1つ、戸惑いの声が上がっていたのは50歳代女性の扱いです。これまでスタチンを処方するケースがあったと思いますが、今回のガイドラインでは低リスク群に分類されるため、ほとんどのケースで薬物治療は不要となるためでしょう。

 ただし、既にスタチンで治療を開始している場合、あえてやめる必要はないと思います。新たに治療を開始する場合、スタチン投与から始めなくてよいだろうということです。

アドヒアランスと包括診療が次期ガイドラインの課題
 ガイドラインはおおむね5年周期で改訂されており、その間に登場した新たなエビデンスを収容してきました。しかし、これからの動脈硬化症診療で最も重要な課題の1つは、アドヒアランスをいかに上げるかです。

 LDLコレステロール低減にはスタチンが有効ということは繰り返し示されてきましたが、一方で、スタチン服用者のほぼ半数は十分なアドヒアランスを持っていないことも分かってきました。そうなると、いかに継続してもらうかを考える必要があります。

 しかし臨床現場での実現は難しく、個々の患者さんに電話で呼びかけるといった、なんらかの仕組みが欠かせません。さまざまな手法の有効性を検証して次期ガイドラインに加えるかどうかを決めることになります。