日本動脈硬化学会は、2012年6月に「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」を刊行後、第一線の医師への認知を高めるため、同年末までに全都道府県で50回を超えるセミナーを開催してきた。本連載のまとめとして、ガイドライン策定を主導し、こうしたセミナーの多くで参加者と接してきた帝京大学医学部長の寺本民生氏に、新版ガイドラインへの反響と、次期ガイドラインへの展望を聞いた。(聞き手:中沢 真也=日経メディカル別冊)

 2012年版の動脈硬化性疾患予防ガイドラインが完成した時点から、できるだけ多くの医師に知っていただくため、各地でセミナーを実施してきました。すべての都道府県で少なくとも1回、大都市では3回程度を目標としたので、50回以上、開催したと思います。地域によって参加者数はさまざまでしたが、熱心な先生方が自発的に参加されていたようです。

 当初、参加者からは、今回のガイドラインが少し複雑すぎるのではないかという意見が多くありました。しかし、(刊行後)時間が経つにつれ、記述の詳細さや論点が整理されている点を評価する声が増えています。

 実臨床では「こんな患者をどう扱ったらよいか」と悩む場面があります。例えば、糖尿病は動脈硬化の高リスク群とされますが、どの医師も、患者によってリスクは異なるという印象を持っています。新版ガイドラインでは、そのような点を整理して、どのような疾患が合併していると危険かということまで提示しました。こうした点が高く評価されたのだと思います。

 さらに新版ガイドラインでは、包括的な管理が重要であることを前面に掲げています。それにより、高血圧や糖尿病などの疾患と動脈硬化の関係がより明確になったと思います。

 患者さんに治療方針を説明する場合にも、単に「コレステロールが高いから下げましょう」ではなく、「コレステロールを下げることで動脈硬化を予防できます」と、より説得力のある説明ができるようになりました。